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おてんばとマーケティングとご縁

マーケティングの基礎を勉強したことがある。「edX」というMOOCを利用して、ブリティッシュコロンビア大学の「Introduction to Marketing」を受講した。もちろん、講義は英語だ。その当時、暇を持て余していて、でも何かやらなきゃと焦っていた。とはいえ、マーケティングにはまったく興味がなかった。なので、修了証をもらわない、受講料フリーのコースを選択。そこで覚えたのは、「ストラテジー」という言葉だけで、やはり結局興味をあまり持てぬままだった。

近頃は何かを始めようと思ったら、SNSを利用するのは当然の流れだ。そして、発信したSNSを多くの人に見てもらうには、ある程度マーケティングも必要になってくる。特に、仕事(いろんな意味の)をするならもはやその知識は必須だ。

しかし、私はSNSとは関わりを持ちたくない。ほんとうのところ。真面目にビラを配ったり、電柱に何か貼ろうかと思っていたほどに、SNSは好きじゃない。

今回、以前から興味のあった「棚主」を始めてみた。初めての試みだ。本を見る人たちは、どんなものに興味があるのか。そのあたりを知りたくて、しばらく展示のみにしようと考えた。そして、併せて本に関するZINEなりペーパーなりを作りたいと思っていた。二、三か月動向を見て、続けていくか、もしも続けるならどういった方向、戦略を取るか考えたかった。なんとなく、雑多な棚を作りたくなかったというのもある。

私は、書き手としてはかなり無名で、その辺りの人にいるフツーの人だ。幸いにと言うべきか、今切羽詰まってお金がほしいという状態ではない。世間に何の影響も持っていない、ある日突然不慮の事故か何かで死んでしまうことがあっても、悲しむような人もいない、そんな感じの人間だ。

SNSを通じて「棚のものは展示のみです」とは伝えていたものの、インフルエンサーではないので、そんなこと誰も知らない。とはいえ、不思議なもので、この棚の一冊にどなたかが興味を持ってくださったそうで、今日お譲りした(お代はその方のお気持ちで、とお願いした。お客さまには迷惑だったかもしれません)。ドストエフスキーの『白夜』だった。棚のテーマである「夏至」の本の中で、私のいちばんお気に入りの一冊だ。選んだ方はとてもお目が高い。素晴らしい審美眼の持ち主とお見受けする。長編とはまた違った、重くないドストエフスキー作品を楽しんでいただけると嬉しい。『白夜』ももちろん、珠玉のような作品だが、私は一緒に収録されている、マレイという百姓が出てくる話が好きだ。タイトルを失念してしまった。私は『白夜』の気の弱い青年と自覚なく彼を翻弄する娘、そして百姓もマレイを求めて、また書店の森を彷徨おう。そこで新たな出会いもあるかもしれない。人と同様、あるいはそれ以上に本との出会いは縁だ。奇蹟に満ち満ちている。

今後の棚つくりの戦略、そして本と人とのご縁について新たに考えていきたい。蛇足ながら、冒頭のマーケティングのコースはまあまあなんとかの成績であった。


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