落ちたことにすら気づかない、虫除けスプレーの意外な落とし穴

9月である。実家から届いた巨峰の皮をチマチマと剥き、ブドウヨーグルトを作りながら、今更、虫除けスプレーについて再び書くのはどうかと思っていたところ、

<猛暑に弱い蚊は、35度を下回ると動き出す>

という説を思い出した。ということは、むしろこれからが蚊との戦いの季節かもしれない。気を取り直して、虫除けスプレーの使い方について書くことにする。

約200名の旅行者を対象にした2019年の海外の研究によると、男性は女性よりも虫除け剤を使う人が少なく、しかも塗り直すまでの時間も長かったと報告されている。男性の虫除けの使い方は、女性よりも大雑把かもしれない。虫にとっては格好の餌食だ。たとえば、

<肌にむらなく塗ると虫除け効果が上がる>

と8月のnoteに書いたが、実際にドラッグストアに並んでいるスプレータイプの虫除けが、どれほどムラなく吹きかけるかについては、ほとんど知られていない

そこで、4つの製品を使ってA4用紙に吹きかけ、薬液の付着する範囲を確かめてみた。こちらがその動画である(使用したのは「サラテクト」と「天使のスキンベープ」のミストスプレー)。

大サイズの虫除けは一吹きでその商品の長さの2分の1程度の広さに吹きかけることができた。一方、小サイズの場合では、製品の長さの3分の1ほどしか薬液は届かなかった。つまり、ワンプッシュで届く範囲は、わずか4〜5センチ程度だった。

スプレーの噴霧で行き渡る範囲は、製品のサイズによって想像以上に差があることをこの動画は示している。何度もプッシュして塗った気分になっても、実際に薬液が肌に塗られる量は想像以上に少ない。小サイズの虫除けスプレーを使う場合は、前回の記事で紹介した通り、薬液を手のひらにかけて肌に伸ばす方法が良いだろう。

虫除け剤は色々な種類があり、使い方によって適した商品が違う。ところが、製品ごとの細かな特徴や、誤った使い方に気づかずに、虫除け効果を十分発揮できていないケースは少なくないと思われる。

虫除けスプレーの効果を邪魔する落とし穴は、少なくとも4つある

落とし穴その1、塗り直し。虫除け薬は一度塗っても、汗や水で流れたら塗り直さなくてはいけない。商品によっては、制汗パウダーを配合して汗で成分が流れにくくする工夫をした虫除けもある。虫除けの持続時間も成分によって違う。

落とし穴その2、塗る順番。夏であれば日焼けどめも一緒に塗ることが多いが、国立感染症研究所の資料によれば、同時に使う場合は日焼け止め→虫除けの順番が良い。虫除けを始めに塗ってしまうと、虫除け効果が下がってしまうのだ。

落とし穴その3、塗る場所。虫除け薬は肌だけに塗ればよいというのは誤解だ。虫除け薬の一つに、ディートという成分の商品がある。ディートはツツガムシというダニの一種から体を守ることができるが、服に着く性質をもつツツガムシを弾くには、靴やズボンの裾にも吹きかけなくてはいけない(ただしディートは繊維素材を傷ませることがあるので要注意)。ツツガムシは秋に多いので夏を過ぎるこれからの季節も油断大敵だ。

そして最後の落とし穴4、塗りもれ。これはすでに述べた通りだが、スプレー類の補足をしておきたい。スプレーは手で塗り伸ばすのが良いとはいえ、手を汚したくない人もいるだろう。そういう場合はエアゾールと呼ばれる缶タイプのスプレーを使うと良い。動画で紹介した虫除け商品はスプレー式の中でも噴射力の弱いミストタイプと呼ばれる商品だが、エアゾールであればガス式なので噴射力が強く、塗りむらは減る

というわけで、やや長くなってしまったが、虫除けの落とし穴を挙げてみた。絵にするとこうだ。

虫除けチェックポイント (1)

製品の説明書をよく読めばわかることもある。しかし、読んでもわからないこともある。落とし穴の怖いところは、本人が穴に落ちていることに気づかない可能性があることだ。そこで専門家の出番である。

ドラッグストアや薬局で購入するときに、

「虫除け薬をうまく使うポイントはありますか?」

と専門家に尋ねれば、きっと役立つ答えが返ってくる。試みてほしい。

冒頭の巨峰はヨーグルトに混ぜてからミキサーで撹拌。透明な器に乗せると、涼やかな巨峰ヨーグルトの出来上がり。夏とも秋とも言える不思議なデザートだ。これは大変美味・・・・ではなかった。クックパッドのレシピを見ると、加糖を忘れていたことに気がついた。


文章の出典や書ききれなかった情報は資格者向けにブログ「ドラッグストアとジャーナリズム」に書きましたので、よろしければそちらもご覧ください。


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