ロキソニンテープ、第一類医薬品やめるってよ。薬剤師不在でも買えるってよ。

「おれは第一類医薬品をやめるぞ! ジョジョ──ッ!!」とロキソニンテープが叫んだ。目は血走り不敵な笑みを浮かべている。そんな気がした。もちろんわたしの妄想。しかし、ロキソニンテープが過去のロキソニンテープと決別したことは間違いない。ロキソニンテープ、第一類医薬品やめるってよ。

2020年8月25日からだ。ロキソニンテープは今の第一類医薬品から第二類医薬品というものに変わる。するとドラッグストアでの購入方法が変わる。薬剤師がいなくても、何時でも買えるようになるのだ。湿布タイプもジェルタイプも同じだ。一言で言えば、ものすごく買いやすくなる。消費量は爆上げしそうだ。

「ロキソニン最強説」は根強い。だが、今回の貼り薬はどうだろう。ロキソニンは貼り薬でも最強なのか。「やっぱりロキソニン(テープ)が一番効くの?」と店頭で聞かれることがある。ロキソニンテープの消費量が爆上げする前に、断っておくと、答えは多分、ノー。

店に来た女性客が腕が痛いというので、ロキソニンテープを販売したことがある。数日後、再び店に来てわたしの姿を見つけた女性は、苦笑しながらこういった。

「ねえ、この前の薬ぜんぜん効かなかったわ」

ロキソニンテープの効果に満足できなかったらしい。それはすいませんでした・・・と一言詫びるわたしに、女性は「こっちの方が効くわね」と棚にある薬を指差した。それはサロンパスだった。今度はわたしが苦笑した。

サロンパスとロキソニンテープのどちらが鎮痛効果が高いかと薬剤師に尋ねれば、100人中100人がロキソニンテープと答えるだろう。少なくとも教科書的には。

しかし、現実はそうではない。プラセボ効果や、症状のタイミングによっては、「サロンパスのほうが効いた」と感じることも、ない話ではない。それほど痛み止めの評価は、様々な要因に左右され、あいまいだ。

とはいえ、これはやや極端な例かもしれない。しかし、ロキソニンテープが市販薬の中で最も効き目が強いという科学的根拠も、実はない

痛み止め効果の高い貼り薬ブランドは3つある。「ロキソニン」「ボルタレン」「フェイタス ジクサス」だ。どれが一番強いという決定的な研究報告は、今のところないようだ。しいていえば、ボルタレンとフェイタスジクサス」の方が高いか、どれも似たようなもの、という考えが薬剤師の間では優勢だろうロキソニンテープが一番とは、やや考えにくい。

この3つはどれもメントールが入っているのだが、その量はフェイタスジクサスが一番多い。メントールには痛みを和らげる効果があることが経験的にわかっている。ということは、メントール多めのフェイタスジクサスこそ、一番痛みを紛らわしてくれるのではないかと思わないわけでもない

だから、ロキソニンテープは際立っているわけではない。むしろ、「ボルタレン」と「フェイタスジクサス」のほうが特徴がある。説明書に書かれた使用ルールによれば、ボルタレンとフェイタスジクサスの一日に貼れる枚数は少ないし、”使ってはいけない人”の条件も厳しい。説明書には書かれていない注意すべき副作用もある。ロキソニンの使用ルールといえば、ボルタレンとフェイタスジクサスと比べると実は緩かったりする。ただ、冒頭で挙げたサロンパスよりは使用条件が厳しい。

おそらく、ロキソニンテープの効果は一番ではないだろう。効果ぼちぼち、メントール多すぎない、使用ルール厳しすぎない。すなわち、無難度ナンバーワンである。

これはこれで、すばらしい。症状、生活スタイルによって、ベストな薬は変わる。効果が一番強いと思い込んでロキソニンテープを買うのも、使用ルールが緩いロキソニンテープは安全安心な薬なんだろうと思って選ぶのも、どちらも誤解だ。

絵にするとこうだ。

ロキソニン外用薬比較 (1)

詳しくは店頭の資格者に聞いてほしい。「痛み止め買おうと思うんですけど、何か注意したほうがいいことってありますか?」と聞いてほしい。ここにはあえて書かなかった大事な情報もある。ネットの医療健康情報だけで納得してしまうなんて、もう時代遅れなんじゃないかな。


文章の出典や書ききれなかった情報は資格者向けにブログ「ドラッグストアとジャーナリズム」に書きましたので、よろしければそちらもご覧ください。

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