ファイトクラブにみるセミリタイア戦士の精神性
ファイトクラブの精神とは
先日尊師がファイトクラブについて書いていました(※1)。
『ファイト・クラブ』は今から20年以上前、1999年に公開されたブラッド・ピット主演のアクションドラマで、10代~20代の若い世代には知らない人も多いかもしれません。
大まかなストーリーとしては、高級家具のコレクションを生きがいとしているが慢性的な不眠症に悩まされるサラリーマンの主人公(僕)が、タイラー・ダーデンという謎の男との出会いをきっかけに人生を大きく変えていく……というものです。
この映画のテーマは反物質主義(ミニマリズム)にあるとよく解説されていますが、おそらくその主眼は物を減らすということ自体にあるのではなく、余計なものを取り除き、目の前の生を実感するというところにあります。
映画の序盤に、酒場の前で主人公がタイラーと初めて殴り合う印象的なシーンがあります。
タイラーに殴り返された「僕」はあまりの痛さにしゃがみ込んでしまいますが、しばらくして「Hit me again.」と、もう一回自分を殴るように言います。
そして殴り合いが終わった後には、「またやろうぜ」と今度は「僕」の方からタイラーに持ち掛けます。
最初は全く乗り気ではなかった主人公ですが、彼の態度はなぜここまで変わったのでしょうか。
ここで描かれているのは、痛みそのものの気持ち良さ(マゾヒズム)への目覚めではなく、日々生きているか死んでいるかわからないような充実感のない生活を送っていた主人公が、肉体的な痛みというリアルな感覚を通して自分の生を実感した、というエピソードです。
つまり「とんでもなく痛ぇ…(しかしそれでもオレは生きている)」という生の喜びとも言える感覚が呼び起こされたシーンなのです。
ストーリーの後半以降は物質(資本)主義の象徴である金融街の爆破などテロリズムの使嗾に繋がっていきますが、ファイトクラブの精神性の原点はここにあるのではないかと思います。
セミリタイア戦士の精神性
このファイトクラブの精神性は、実はセミリタイアという生き方との親和性が非常に高いのではないかと思っています。
セミリタイアと言えば、一般的にはフルタイムの仕事を早期退職し、足りない分の糧をアルバイトなどで補いつつ食い繋いでいくようなライフスタイルのことを指します。
しかしこれは表面的な解釈に過ぎません。
先の『ファイト・クラブ』で、「僕」がこうありたいと潜在的に願っていた人格であるタイラーは、自分で作った石鹸を売ったり、レストランのウェイターや映画館のパートタイムの仕事を掛け持ちするなど、定職に就かず、ある意味セミリタイアのような生き方をしています。
つまり何が言いたいかと言うと、本質的なセミリタイアの精神とは、生の主体性を取り戻す、己の知恵を駆使して現実の環境の中をもがきながらサバイブする、というところにあるのではないかということです。
リタイアと言うと怠惰なイメージがありますが、セミリタイアの精神性はむしろファイター、戦士のそれに近いと言えるでしょう。
ちなみにセミリタイアとよく混同される概念にFIRE(Financial Independence, Retire Early)というのがありますが、FIREは一般的には完全リタイアのことであり、その精神には実はかなりの違いがあると思います。
ところで先日書いた記事の中で、創造の楽しさということについて触れましたが、この創る楽しさというのもおそらく、根源的には現実をサバイブする喜びというところから来るものではないかと思います。
そもそも創造性とは「いかにより多くの資源を獲得するか」という獲得資源の最大化を実現するために備わった性質であり、これは主に脳内神経伝達物質ドーパミンの働きによると言われています。
ドーパミン神経系は、中脳辺縁系(子)で生じる欲求を中脳皮質系(親)の分析・戦略で実現するというメカニズムを備えており、もともと創造性とは生存戦略の一環であったと言うことができるかもしれません。
現代社会を生きる私たちにとっては想像しにくいことですが、人類の大半が月日を過ごした原始時代には、飢餓や捕食、殺人などさまざまな命の危険に日々晒されており、いつしかそれを克服(解決)するための手段を考える(試行錯誤する)こと自体が報酬になったとしても不思議ではありません。
セミリタイアという生き方は、自らの人生を切り拓く創造性が必要とされるライフスタイルであり、安定を捨て、野生に生きることで生の喜びを追求する生き方とも言えます。
その意味では、まさしくストリートスマート(※2)の体現者とも言えるでしょう。
この記事を読んだそこのあなたに、セミリタイア戦士たちの精神性を少しでも知っていただけたら幸いです。
※1:
※2:
5月病なのか、わけのわからないことを書いてしまいました。
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