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ストリートスマートでいこう

ブックスマートとストリートスマート

英語で"smart"と言えば一般的には賢さのことを表しますが、このスマートさを形容する概念としてブック・スマート(Book-smart)とストリート・スマート(Street-smart)(※1)という2種類の口語表現があるようです。

ブックスマートは主に座学で得た知識が豊富な人のことを指す言葉ですが、わざわざブックとつくのは、頭でっかちで実践に欠ける世間知らずというネガティブな意味合いが込められることが多いからのようです。

一方ストリートスマートは、実際の経験を通して学び、より実践的な知恵や知見を身につけた結果を出せる人材のことで、イメージとしては叩き上げの経営者などがそれに近いと思います。

現代の代表的な起業家は例外なくこのストリートスマートだと言われていますが(※2)、この変化の激しい時代には、起業家でなくとも環境の変化に素早く適応して成果をあげられる後者のスマートさがより求められていると言えるでしょう。

ストリートスマートはどうスマートなのか

多くの人が実社会という現場で働いていますが、その中でも抜きん出た成果をあげられる人、ストリートスマートがスマートたる所以はどのあたりにあるのでしょうか。

私が思うに、ストリートスマートのスマートさとは平たく言えば要領のよさのことであり、物事の要所をおさえ効率的に結果を出すことができるということではないかと思います。

ところで成果をあげる、結果を出すというのは問題解決ができるということとほぼイコールだと思います。

「売上や顧客満足度を上げるにはどうすればよいか?」、「どの事業に投資すればよいか?」といった課題を解決することがすなわち成果をあげるということだからです。

ゆえにストリートスマートは独自の攻略法を編み出して目の前の問題を解決する力に優れた人材とも言えますが、その問題解決力の背景にあるのは物事の本質をとらえる(構造化する)思考です。

この理由について簡単な例をあげて考えてみます。

たとえば2,3日前から発熱があり体がだるく、咳が止まらないという人がいたとします。

この場合のよくある対処法は解熱剤や咳止めの薬を使うというものです。

このような(具体→具体レベルでの)解決策では、一時的に症状(問題)は解消できるかもしれませんが、大元の原因(本質)にたどり着けないと真の問題は氷面下でくすぶり続けることになります。

ここで検査を追加して調べてみると、血中の酸素飽和度が低く、血液検査の炎症反応の数値が上がっており、レントゲンでは肺に影が映っているという所見が得られました。

これらの症状や所見を俯瞰して、一連の症状は肺炎によって引き起こされているのではないか、という仮説にまで行きつけると、ならば細菌をやっつける抗生物質を使おうという根本的な解決策を導き出すことができます。

ここから具体的なアクションプランに落とし込む(どの抗生剤をどれくらいの量で何日間 など)には、実務的な知識が必要になってきますが、問題解決力が高い人、ストリートスマートは現実の問題解決にあたり無意識のうちにこのようなプロセスを踏んでいることが多いのではないかと思います。

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出典:『「具体⇄抽象」トレーニング』 / 細谷功 著


つまり実戦的な問題解決力は、現場のリアルな情報を丹念に拾い上げる情報収集能力、それらを構造化することで本質的な問題点を見出す(抽象的)思考力、それを解決する理論(定石やフレームワーク)、その理論を効率的なアクションに落とし込める豊富な実務的知識によって成り立っていると言えます。

簡単に言えば理論と実践を兼ね備えているということですが、これがブックスマートのように経験不足だと、現場(具体)レベルの知識や理解が不十分であるため、そこから組み立てる仮説の精度が低くなり本質を外しやすくなります。

また実務的知識(ノウハウ)の薄さにより戦略(理論)を実行するための戦術(具体的なアクションプラン)も遠回りで非効率なものになってしまったり、そもそも実行不可能なもの(机上の空論)に終始してしまったりします。

現場に近いところで学ぶことで、リアルで正確な情報が集積して仮説(具体→抽象)の精度が向上し、同時に実務的知識が蓄えられることで現実の制約の下での最適なアクション(抽象→具体)を起こしやすくなるのです。

野生に生きるストリートスマートでいこう

「今の仕事を続けるべきか、辞めるべきか」
「どんなスキルを身につけるべきか」

敷かれたレールに乗ってさえいれば良かった時代は終わり、現代は唯一の正解のない問題に主体的に取り組むことが求められている時代だと言えます。

変化の激しい時代には前提条件がめまぐるしく変わるため、前例を踏襲するだけでは容易に解決できない問題が山積します。

こうした不確実性の高い環境の下では現場の状況の変化をいち早く察知し、それに適応する形で行動を変えていける人のアドバンテージがより一層大きなものとなります。

世の中にどのような変化が起きているかというマクロな視点を持ちつつも、目の前で起きていることをよく観察し、実際に打席に立つことでわかる肌感覚も含めた情報から自分なりの仮説を立てて行動し、結果をフィードバックして軌道修正を行い、成果に結びつけられるストリートスマート型の能力が今まさに求められていると言えます。

すでにアップルやグーグルなど大手ハイテク企業は学歴を採用の条件から外しており(※3)、頭でっかちでひとりじゃ小便もできねえ青ビョウタンは一方でますます必要とされなくなってきています。

今、目の前の現実にいかに適応するか。

現代社会という混沌とした荒野をしたたかにサバイブする野生の力を取り戻しましょう。


※1:もともとは危険なストリートを生き抜く賢さを指し、身の程を知り、ヤバいと感じたらすぐ逃げる、好機と見たら一気に攻め込むなどといった狡猾さを意味するようです。

※2:

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