個別株CFDはアリかナシか
ピッグの生み出したデリバティブ
アメリカに古くからある有名な相場の格言に
Bulls make money, bears make money, pigs get slaughtered.
というものがあります。
『強気相場でも、弱気相場でも儲けることができるが、強欲な豚だけは焼かれる』ということを指摘しています。
しかし市場にうごめく豚達は、幾度となく業火に焼かれながらも、もっと効率よく儲けたいという強い信念を持ち続け、先物・オプションなどのデリバティブと呼ばれる金融派生商品を生み出しました。
現代には様々な金融商品が存在しますが、今日ではこれらのデリバティブ取引は非常にメジャーなものとなっています。
私は基本的に株の現物のみの取引ですが、そもそもなぜ株をやっているかと言えば、セミリタイアするために必要な資産を作るためであり、はっきり言って効率良く儲かるならどんな方法でも良いのです。
つまり私もまた一匹のピッグ(しかも無知な)なのです。
しかしハイリスク・ハイリターンの原則に照らせば、レバレッジのかけられるデリバティブ取引では、大勝ちの可能性がある一方で大負けの可能性も出てきます。
アップサイドを何倍にもできる一方で、ダウンサイドも同じように何倍も大きくなり、最悪の場合は借金を背負うことになってしまいます。
手を出すならば、現物以上に慎重なリスク管理が必要とされます。
そこで今回は比較的手軽と思われる個別株CFDで、レバレッジをかけて安全に(?)期待リターンを高めることができるのか?ということについて少し考えてみたいと思います。
個別株CFDでどこまでレバレッジをかけられるのか
CFDは差金決済取引です。
現物とは違い、為替取引のように実際にやり取りをするのは決済の差額分になります。
FXと同じようにレバレッジをかけられるというメリットがありますが、前述のとおりその分だけリスクも大きくなります。
しかし何の制限もなく取引できてしまうと、結果的に借金を背負うピッグが続出してしまうため、損失を限定する目的で強制ロスカットという仕組みがあります。
証券口座に入金した証拠金が一定の割合を下回ると(証券会社が定めた必要証拠金率を割ると)、ポジションが自動的に決済されるというものです。
この強制ロスカットにあうとポジションが一旦清算され、資産がマイナスになることは無いものの(※1)、大きく資金が減り、後には何も残らないということになります。
さて株式に関して言えば、銘柄選択さえ間違えなければ、株価はいずれ上がります。
株式投資の期待リターンはプラスであり、理論上はレバレッジをかけられるだけかけた方が良いことになります。
しかし株価、特に個別株の値動きは激しく、その過程で暴落する可能性を常に抱えており、株価が急落した際に証拠金率を下回るとロスカットを食らって強制決済されてしまいます。
その後に急騰するかもしれないポジションが強制決済されてしまうのは非常に大きな損失です。
ではロスカットを食らわない程度にレバレッジをかけることはできるのでしょうか?
ここで入金額 Y(円)、必要証拠金率 m、レバレッジ n(倍)、下落率 d として考えてみます。
そうすると、
・純資産額:(1-nd)Y
・ポジション評価額:n(1-d)Y
・必要証拠金額:nm(1-d)Y
と表すことができます。
自動ロスカット証拠金率100%とした場合、強制ロスカットされるのは、純資産額≦必要証拠金額 となった場合であり
(1-nd)Y ≦ nm(1-d)Y
⇔ d ≧ (1-nm) / n(1-m)
となります。
たとえば証拠金率0.2(20%)の金融商品を2倍のレバレッジをかけて取引する場合
d ≧ (1-0.2×2) / 2×(1-0.2)=0.375
つまり37.5%下落した時点でポジションが強制ロスカットされることになります。
37.5%……
個別株であれば暴落が来た場合、このくらい下げてもおかしくはありません。
ではレバレッジを1.5倍にしたらどうか?
d ≧ (1-0.2×1.5) / 1.5×(1-0.2)=0.583
これなら半値まで下げてもまだポジションをキープできることになります。この程度なら大丈夫でしょうか?
しかしこのように相場が暴落した時にも自動ロスカットされないようにと考えると、大してレバレッジがかけられないことがわかります。
さらにCFDの買いポジションにはオーバーナイト金利(FXのスワップ金利のようなもの)もかかってきます。
CFDでレバレッジをかけるならば、個別株よりボラティリティの小さい指数の方が向いているのかもしれません。
ただ値動きがマイルドな分、アップサイドも個別株よりは限定されてきます。
結論としては、個別株CFDをやるなら自信のある銘柄で、せいぜいレバレッジは2倍未満でということになるでしょうか(上記の条件の場合)。
ただそれほど自信があるのなら、よりアップサイドの大きいオプション取引の方が良いのでは?と思ったりもします。
欲深い豚の悩める日々は続きます…
※1:ロスカットのルールによってはその限りではありません。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?