"今この時"を味わうための余裕を取り戻す
※注:例によって今回も辛気臭いことしか書いてません。苦手な方はお帰りいただきますようお願いします。
肉体という器の脆さ
毎日を何気なく過ごしていると、今、この日常が永遠に続いていく…
そう錯覚してしまいやすいものです。
幸運にも、これまで病気と縁なく生きてきた人は特にそう思いやすいかもしれません。
ただ、それは思い込みに過ぎないと思います。
よくよく世間を見渡してみると、体のどこかに不調を抱えながら生きている人はたくさんいます。
また人間の身体は歳をとるごとに、いろんなところに問題が起こりやすくなっていくものでもあります。
暴飲暴食のような明らかな原因がないにも関わらず、突然襲ってくる避けようのない病気も数多くあります。それでいて、そのような病気ほど簡単には治らないものです。
人間の身体というのは何とも脆いものだな……とふと思うことがあります。
たとえば、その辺で足を滑らせて転んだ時に、打ち所が悪く頚髄を損傷してしまうと、二度と自分の足で立ち上がれなくなってしまったりするのです。
私はスピリチュアルな世界を信じてはいませんが、生きるとは、脆弱な肉体という容れ物に魂が閉じ込められるようなものかもしれないな……と、そんなことを思ったりもします。
健康とはある意味、幸運という砂上の楼閣の上に成り立っているものだと思います。
ただ、私たちにとって自身の病気というのは一大事ですが、そもそも『利己的な遺伝子』のリチャード・ドーキンスの仮説に基づけば、私たち一人一人は単なる遺伝子の複製のための乗り物に過ぎません。
つまり遺伝子にしてみれば(?)、個体は乗り捨てるための器に過ぎず、そこに個人(個体)の幸福などという概念を挟み込む余地はありません。
しかしそんな考え方は受け入れがたいものですし、何よりそんなことばかり考えていると鬱になってしまいます。
今この瞬間、目の前のことに集中する
では仮に、私たちがこの世界の主人公ではなく、遺伝子に乗り捨てられる器でしかなかったとして、どんな不運に見舞われようとも生まれてきて良かったと感じられる、などということはあるのでしょうか。
それを考える上でのヒントが、未開の部族の暮らしにあるのではないかと私は思っています。
以前書いた記事(※1)の中で、うつと無縁な人々としてアフリカに現存する部族であるハッザ族のことに触れました。
彼らは私たちがイメージするような原始時代の生活を、今なお続けています。
ある意味、文明とは無縁の生活を送る彼らの日常は、まさに生きるための営みそのものだと言えます。
彼らの暮らしぶりを見ていると、その時々を生きることに必死で、先のことなど何も考えていない能天気な連中だと思えてくるかもしれません。
しかし彼らは特段自分たちの暮らしを不満に思う様子はなく、どこか充足感に満ちているようにも映ります。
仏教の世界には、マインドフルネスという概念があります。
マインドフルネスとは簡単に言うと、あれこれと余計な考えを捨てて、今この瞬間を感じることに意識を集中させることです。
マインドフルネス瞑想という瞑想の型がありますが、それはまさにその瞬間瞬間に集中するための訓練なのです。
そしてその、今ここに集中するということこそが幸福感につながることが研究でもわかってきています(※2)。
その時々で目の前のことに集中するハッザの人々は、誰かに教えられなくとも常にマインドフルネスな状態にあり、それが彼らの幸福感につながっているのかもしれません。
セミリタイアすることで、今を味わうための余裕を取り戻す
今ここに集中して、目の前の日常を味わい尽くすこと。それが幸福感につながるのではないかということを書きました。
しかし何かと時間に追われやすい現代社会には、いろんな意味で余裕が失われているように思います。
いつも何かに追われていれば、目の前のものをじっくりと味わう余裕など生まれようもありません。
では何が多くの現代人の余裕を奪っているかと言えば、それはやはり忙しすぎる仕事であることが多いのではないでしょうか。
あたかも仕事が人生の目的であるかのように刷り込まれ、大半の人は仕事を中心とした日々を送ることを余儀なくされています。
一方でハッザの人々にとって、仕事(=彼らの狩り)とはあくまで生きるための手段であり、仕事(狩り)をするために生きている人など一人もいません。
そもそも生きるための営みである仕事に、やりがいだの自己実現だの余計なものを付け加えて、生きるのに必要な分以上に働こうとする動物など人間のほかに存在しません。
動物たちはみな、純粋に今を必死に生きることに集中しているのです。
私にとってのセミリタイアとは、常に何かに追われる毎日から解放され、目の前の日常を味わうための感性、動物としての本来の生き方を取り戻すための過程なのです。
※1:
※2:
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