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盃つまんで Vol.23

さて、京都第二夜、めざすは「祇園河道」。店の向かいにライトアップされた南座は年末の吉例顔見世興行で、役者名札が派手に上がる。
 「こんばんは」「お待ちしてましたぁ」
 昼、鯖寿司でうろうろした帰り、玄関に「今夜来ます」と書いた名刺をはさんできた。開店五分後の小さな店にすでに二組も客がいるのは人気のゆえか。白半袖男支度の女主人は忙しそうで、これはタイミングよく注文しないとな。まずはビール、んぐんぐんぐんぐ、あーうまい。これをしたくて京都に寄ったんだ。夕べは遅い来京でやや焦ったが今日は余裕。手にするのは自分も自宅で愛用の松徳硝子製グラスで「ビールグラスはこれしかないでしょう」と意見一致の決定品。いつもの小盆お通し三点は、添えた椿の小枝に霧を吹く風情のよさ。

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