見出し画像

盃つまんで Vol.25

松本1
毎年十二月に入ると、長野県安曇野山形村の妹の家に漬物の手伝いに行く。漬けるのは「朝鮮漬」。私の両親は戦前、朝鮮に住み、そこで習ったキムチを長野県で自己流にしたもので、わが家ではこの名で呼んでいる。細かく刻んだ大根、人参、ネギ、赤唐辛子、りんご、ニンニク、しょうが、鰹節、昆布、干しエビ、ゴマなどを練りあわせた具を、浅漬けした白菜の葉の間にはさんで漬け直す、とても面倒なものだ。
 本番前夜について、コロナでしばらく会えなかった妹夫婦、毎年手伝いにくる妹の娘一家に再会。私には甥・姪になる幼子三人の元気無茶ぶりが最大の楽しみだ。
 「おじいちゃん、わたし背中で手がにぎれるよ」「おじちゃんと言え」「やだ」。やりとりの楽しきことよ。

ここから先は

1,500字
好評の「コラム」「フォト日記」に「太田図書館」「お便り交歓室」を加えた、太田さんの魅力たっぷりの品揃えです。 お通しの料金で、皆さまのお越しをお待ちしております。

全国の居酒屋をめぐり、数多の著作を世に問うてきた 居酒屋探訪家・太田和彦のオンラインマガジン。 毎月2回更新される「コラム」「フォト日記」…