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盃つまんで Vol.20

コロナ禍で演劇やコンサートの公演中止が続いた。熱心に稽古を続けてきた関係者の無念は如何ばかりか。私も家飲みばかりの毎日で、こんなに刺激や感動のない一年はなく、老残の貴重な日々が少なくなってゆく。さあ、再開だ。
 九月九日、横浜「KATT神奈川芸術劇場」の「湊横濱荒狗挽歌(みなとよこはまあらぶるいぬのさけび)」へ。ちらしの惹句は〈作・野木萌葱×演出・シライケイタによる、歌舞伎の人気演目「三人吉三」をモチーフにしたハードボイルド現代劇〉。
 劇団「阿佐ケ谷スパイダース」を立ち上げて公演を続け、文化庁派遣イギリス留学ののち「KATT」の芸術監督に就任した長塚圭史が、年間テーマに「冒」と名づけた第一弾だ。出演の一人・山本享とは古い仲で一緒に飲んだこともあり、〈この面子です!〉とメモされた案内をもらい、これは行かねばと。

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