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密かな楽しみ

愛犬の散歩仲間にボストンテリアの子犬がいます。
いつもより遅い時間の散歩だと会えるのですが、何度か会うなかで、普段連れている女性と娘さんが一緒に散歩している時がありました。

犬同士とても気が合うので、お互いに見つけた途端引き寄せられます。ボストンテリア君は伏せの体制で待っていて、そこに うちの愛犬が駆け寄る感じです。目の前に来たら、かたやピョンピョン跳ねて、もう一方の愛犬は尻尾をブンブン振って喜びを表現しています。

犬同士がじゃれあっている間、飼い主の私たちは他愛もない話をします。
一緒にいた娘さんは、表情を変えずに直立で、静かに聞いている感じです。

私は、何歳なのかな?恥ずかしがり屋さんかな? 
真面目な印象に、そんなことを思っていました。

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3月のとある朝、向こうからボストンテリア君が来ました。
飼い主の女性から、娘さんの高校受験で学校に向かうところだと聞き、「中学生だったんだ」と年齢を知ることになりました。

この散歩道を歩いて通学できる高校は、市内で一番の進学校です。
それからは、「合格するといいなぁ」と誠に勝手ながら、応援させてもらうことにしました。

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4月のとある朝、遅い時間の散歩になりました。向こうからボストンテリア君がやってきました。
制服を着た女の子も一緒です。見事合格したようです。市内で一番の進学高の制服です。
「よかった。合格したんだね」

他人事ながら、難しい高校受験を乗り越えたのだと思うと嬉しいものです。

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5月も何度か登校時間にボストンテリア君と飼い主の女性と一緒に歩く高校生の娘さんに会いました。
相変わらず、犬同士はピョンピョン、ブンブンじゃれあいます。
娘さんは、母親に「行ってていいよ」と促されて、先に学校に向かいます。私たち飼い主同士は近況を話し始めます。

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今度は愛犬の散歩中に、一人で登下校する娘さんと会うことが2~3度ありました。こちらから挨拶すると会釈してくれます。

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つい先日夕方の散歩で、一人で歩く娘さんに会いました。
いつもの会釈ではなく、少し照れながら「こんばんは」と挨拶してくれました。
初めて見た可愛い笑顔です。

「仲良しの犬だって覚えてくれたのかな。ちょっと慣れてくれたのかな」
よその子の成長を密かな楽しみにしています。

愛犬の散歩は、出逢いをくれます。

人生の先輩から生き物の付き合い方の知恵や、老いを教えてもらいます。

若い人と出逢うと育つ姿を見守る楽しみがあります。


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