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うなぎから学ぶ価値と価格

「先週末、7,300円のうなぎを食べた」

と聞いたらやはり高いと思うだろうか?
僕自身もこれだけ聞けば高いと思う。しかし、実際に7,300円のうなぎを食べたのだ。お酒を飲まない食事としては最高額かもしれない。では、なぜ食べられたのか。

この経験が価値と価格について考えるきっかけになったので言語化してみようと思う。

出来事の概要

経緯は忘れたが、友人3人と僕の4人で美味しいうなぎを食べに行こうということになり、友人のうちの1人が以前行っておいしかったというお店を予約してくれた。席を予約しても、うなぎの確保まではしてもらえないため、売り切れることもあるとのこと。なので予約は17時半。早めの夕食だ。

僕は相当楽しみにしていて、最高の状態で食べたかったので、お昼ご飯を抜き、筋トレもしてから家を出た。おかげで17時半にお店に着いたころにはお腹が空きすぎて軽く手が震えていた。低血糖である。狙い通り体は最高の状態に仕上がっている。お店の中に入ると17時半というのにほぼ満席だった。

席につき、メニューを見る。僕の心はもう決まっている。最高の状態で最高のものを食べるのだ。価格が5,000円強の、蒲焼と白焼きが乗っている「金銀鰻重」を頼もうと決めていた。

しかし、ここで店員さんが
「本日は○○で(←低血糖で頭に入ってこない)メニューは金銀、上、天然ウナギの3種類だけになります」
と言った。天然? もう気持ちは金銀鰻重になっている。天然とかどうでもいい。早くうなぎが食べたい。

ところが、冷静な友人の一人が天然うなぎはいくらか訊ねてくれた。
「天然うなぎはいくらですか?」
「6,300円から7,300円です」
「値段の違いは何ですか?」
「大きさの違いになります」
そう言って店員さんは席を離れる。お店は忙しそうだ。

友人は注文に迷っていた。
「天然はなかなか食べられない。天然にしようかどうしようか……」
この友人が作ってくれた時間が僕に冷静さを取り戻してくれた。
「最高の状態のときに最高のものを食べなくてどうする」
僕は7,300円の天然鰻重を注文することに決めた。白焼きは2つ頼んでみんなで分けて食べることになった。

このうなぎは今まで食べた、どのうなぎよりも美味しかった。過去最高のうなぎであった。あのとき、僕の冷静さを取り戻すための時間を作ってくれた友人には感謝しかない。

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遠くのものは相場で判断し、近くのものは自分の価値基準で判断する

僕たちは何かものの価格を見たときに、第一印象として相場との比較をしてしまう。「7,300円のうなぎ」と聞いただけでは相場と比較して、ただ「高い」と思うだけだ。これは具体的に食べているところをイメージできていないからだろう。

しかし、いざ目の前にうなぎがあり、それを食べているところを具体的にイメージしたとき、相場なんて考えなくなった。考えるのは「食べたいかどうか」。自分の価値基準に照らし合わせる。非常にシンプルだ。

人間はその商品を遠くに感じるとき、相場と価格を比較して、高い安いを判断してしまいがちだ。相場よりも安いからという理由で買ったけど、実際は全然使わなかったものなんてたくさんある。それはきっと、そのものを使っているところを具体的にイメージできていなかったのだ。

一方で、その商品を具体的にイメージし、商品と自分の距離感が近い場合は自分の価値基準に照らして判断する。食べ物であれば食べたいかどうか。ものであれば欲しいかどうか。サービスであれば体験したいかどうか。自分に問いかける。そして具体的にイメージして、自分の価値基準に照らして買ったときの方が結局満足度は高い。

自分の価値基準で決める

「迷う理由が値段なら買え、買う理由が値段ならやめとけ」
という言葉がある。
値段というのは他人が決めた価値であり、相場はその平均値だ。他人の価値平均が自分の価値基準にあてはまるとは限らない。重要なのは自分にとっての価値である。この言葉の意味をそう解釈している。

自分がお客さんの立場であれば、自分の価値基準で買うこと。自分が売る立場であれば、お客さんの価値基準で買ってもらう努力をすること。お客さんの価値基準で買ってもらうことが最終的にはお客さんの満足度につながるし、納得してお金を払ってもらえる。だから具体的にイメージしてもらう努力が必要なのだ。

以上がうなぎが教えてくれたことである。美味しく食べた上に学びもあった。十分もとは取れたはずだ。

ちなみに体を最高の状態に仕上げすぎたせいか、お吸い物、漬物、白焼きをつけるための醤油まで最高に美味しかった。要するに「何を食べても美味しい状態」になっていたのだ。そうなると、そのうなぎは本当に最高に美味しいものなのかというツッコミを受けそうだが、それに対する答えは、
「本当に最高に美味しいものか(他人の価値)は重要でない。最高に美味しかったという実体験(自分の価値)が重要なのだ」
として今回は終わりにしようと思う。

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