映画感想『スパイダーマン: スパイダーバース』は120%楽しめる次世代エンタメだ!

 スパイダーマンの新作3DCG映画『スパイダーバース』をまだ見ていないような人がふらっとここに迷い込んで、僕の書いたものを読んで気がつくと映画館にいる。そんなことは多分起こらないだろうと思うけれど、とりあえずわかりやすくプレゼンする文章を練習しなくちゃってことなんだわさ。感想書いてみるからよろしくね。

 『スパイダーバース』がアタリかハズレかでいうとアタリで、アタリもアタリで大当たり。じゃあ面白いは面白いとして、劇場に見に行くべきか動画配信まで待つか。見に行くほうが断然いいと言い切れる。それほど面白かった。今、映画館には次世代の興奮がある。新時代のエンターテイメントが封を切られたと言っても過言ではない!
 アメコミ系に詳しくないので不安という人もいるだろうけれど、そういうレベルではなく純粋に面白いので十中八九杞憂になる。僕も正直な話、訃報を耳にするまでスタン・リーの名前すらちゃんと記憶していなかったくらいのニワカだった。だけれどスパイダーバースについては120%を楽しめた自信がある。あれこそエンターテイメントだ。真のエンターテイメントの前で知識リソースの格差なんて意味をなさない。圧倒的面白は全てを巻き込む。

 特筆すべきは視聴者を引き込む洗練された構成だ。最初の10分ですっかりストーリーにのめり込ませる魔法のような脚本によって、実に見事に、驚くほど鮮やかな手法で、画面に釘付けにされる。
 世界設定の提示から主人公の境遇の紹介と、クモに噛まれて力を得るくだり。ここまでが実にスピーディーで、ストーリーは重厚な密度にまで強烈に圧縮されている。主人公がまだスパイダーマンになってもいない序盤の序盤なのに妙に面白く感じてワクワクしてストーリーを追えるのはおそらくこの圧縮効果によるものだ。単調になりがちな助走がギュッと縮めて痛快なスタートダッシュになっている。
 圧縮ストーリーの中で疑問と解決がポンポンポンポン次から次へとテンポよく供給される。観客に疑問を湧かせて作品世界に引きつけ、それに答えを与えると間髪入れずにまた次の疑問を出すわけだ。この流れで観客はすっかりスパイダーバースからの情報の中毒者になってしまう。やめられなくなる。次々欲しくなる。ストーリーが盛り上がり始めた頃には、作中世界にドップリとハマっていて、最高潮を楽しむ準備はとうに万端になっている。

 あの劇場にいた皆はほとんどが3DCGの映像が凄いんだろうと期待していたんだろうし、実際にそれが最大のウリなんだろうけれども、スパイダーバースはその本領をまるっきり隠した状態でもすっかり観客を魅了していたように思う。
 シナリオ自体はわかりやすく特別ひねったところはないけれど、適切な刺激を徹底した密度の感覚で与え続けるとこんなにも面白くなるんだという発見があった。ミニ四駆の中抜きは実際のところ速度に影響しないと聞くけれど、ストーリーの削ぎ落としと軽量化にはかなりのエナジーと速度を生み出す効果がある。スパイダーバースでは皆もきっとそれを発見するはずだ。

 ストーリーのテンポがやたらと良いだけなら配信サービスでいいだろうという意見があるはずだ。まあそれはそうなんだけれど、終盤のバトルシーンの映像はやっぱりすごいんだよね。むしろあの異様に引力のあったシナリオも、結局はこのクライマックスまで観客を最高の状態で連れてくるためのレールだったんだっていうことを痛感するだろう。
 少年とオッサン、男と女、未来と過去、モノクロとカラー、動物とロボット、黒と白。バリエーションに富むスパイダーマンたちがCG世界をビュンビュン飛び回って悪のキングピン一味をボカスカ成敗していくアクションはまさに爽快で、これぞ世界のエンターテイメントの王様だという面白さを存分に発揮していた。
 特に最後の決戦のシーンでは、抽象的な並行宇宙の観念を鮮やかなCGオブジェクトの奔流で表現していてその映像技術には圧巻の一言。僕はすっかり圧倒されてしまって、決着まで開いた口が塞がらなかった。

 例えば、そう、キラキラ光るカラフルな物体が動いていると人間がエモーショナルでエキサイティングになる。千葉にあるアメリカの夢の国に行った経験のある人ならばこの感覚がわかると思う。あれをCGでやっているのだ。それもめまぐるしいスピードで。そしてその興奮はヒーローのアクションに流れ込んでいく。新しいスパイダーマン一挙手一投足が、エレクトリカルパレードをエンチャントした魔法格闘だと思ってほしい。
 ここで思い出してほしいのだが、エレクトリカルパレードのキラキラは巨大で何やら気分を盛り上げる音楽も観客のざわめきにも負けない音量でながれていたはずだ。ではスパイダーバースのクライマックスアクションを120%楽しむとしたらどうだろう。
 そう、劇場に行くのである。大きなスクリーンと迫力の大音量が、圧巻の新世代映像を最大限に引き出しているぞ。劇場を出た時あなたは叫ぶだろう。MAGA! スパイダーマンのエンタメ力がアメリカを再び偉大にしたと。
 僕は最前の席だったけれど、一時も目を離せず時間内ずーっと画面を見上げていた。劇場には疲れを知らぬ、未来の興奮が渦巻いていた。まだやっているから、是非皆さんも劇場で。

コミュニケーションと普通の人間について知りたい。それはそうと温帯低気圧は海上に逸れました。よかったですね。