人生相談で「絶対にやってはいけない」こととは?
岡田斗司夫です。
今日は、2019/10/20配信のニコ生・岡田斗司夫ゼミ「驚異の2時間トーク!朝日新聞「悩みのるつぼ」卒業記念講演」からハイライトをお届けします。
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(本編開始)
はじめまして岡田斗司夫です。
(会場、拍手)
どうもありがとうございます。ありがとうございます。
あの、普通、こうやって拍手とかをしてもらうと、ものすごく頭を下げるんですけど、今日はあまり頭を下げません。
その理由は、もう、たった1つでありまして。
実は、この卒業記念講演、こういう講演って、だいたい新聞社主催とか、どこかに協賛企業があったり、または皆さんが参加費を払ったりするのが当たり前なんですけど。今日のこれは、実は僕の趣味で開いてまして。「新聞連載が終わったから講演をやりたい」と自分で言って勝手にやっているんです。
この会場代から何からで、嫌な話、20万円くらい掛かってるんですけど、これ、全部、僕の自腹なんですね。
なので、今日、僕は全然ここにプレッシャーを感じてないんです。たとえ、講演が面白くなくても、「皆さんは交通費しか負担してないのに、俺は20万以上も払っている」という気楽なポジションで話してますので(笑)。
今日の講演は、だいたい2時間くらいあるんですけど、途中で1時間目くらいになったら、10分か15分くらいトイレ休憩を入れます。
その後、まだ話す時間が残っていたら、さっき皆さんが書いてくれた相談について話しますけども……今、見たら、わりとあるんですよね。
(会場から集めた相談用紙の入った箱を見ながら)
あるんですよ。結構、びっしり書いている人もいるので、これを出来るだけ消化したいと思います。
今日、皆さんには、実は「申し込みフォーム」というのを書いてもらいました。
だいたい、新聞社のこういう講演会って、往復はがきでやるんですけど、往復はがきだと、やりとりが遅くなるというのと、あとは「新聞に載っているQRコードもしくはURLというやつを見て、自分でフォームに辿り着けるような人しか来なかったら、便利だ」と思ったので、勝手にそういう枠を作らせてもらったわけですね。
なので、皆さんは、あそこに色々と書かなきゃいけなかったと思うんですけど。それを書いてもらったおかげで、ここにいる皆さんは、だいたい10代から70代くらいまでの年齢層で、ほぼ均等に分かれています。男女比もほぼ1対1になるように配してます。
僕にとって、こういった理想的な講演環境は初めてなんですね。だって、そんな年齢層の偏りも性別の偏りもない講演なんて、普通、出来ないんですよ。
皆さんは、約8倍の競争率を抜けてここに来られました。
という、講演会であります。
なにか質問や相談がある方は、カードが配られていると思うので、それに書いて適当に、その箱に入れていただければ結構です。
よくある手を挙げて質問というのはやりませんので、何か聞きたいことがあったら、そこに放り込んでおいてください。よろしくお願いします。
・・・
朝日新聞土曜版の人生相談コーナー「悩みのるつぼ」というのを、僕、コーナーの誕生の第1回から担当していて、10年以上やってたんですね。
それを、この間、卒業しました。今日はその卒業記念講演というやつなんですけど。
講演の申し込みフォームの中に「岡田斗司夫に一言」という記入欄があったんですけど、そこでわりと多かったのが「なんでやめるんですか?」という質問だったんですね。
もう、それは、本当に去年の今頃「シンドいな」と思ったからなんですよ。
「シンドい」というのは何かというと「やり遂げる楽しさよりも疲労感の方が上回ってしまった」と。
10年間、1回もそれがなかったんですよ。とにかく面白くて、面白くて、どんどんやってたんですけど。去年の秋くらいに、面白いよりシンドいがちょっと上回って「これは辞めるサインだな」と思ったんですね。
まあ、それで辞めようと思ったんです。それでも、決心するまでにはちょっとかかって、今年の3月くらいに編集部にお願いしたら、「後任者を見つけるのに時間がかかるから、もう半年くらい担当してくれ」と言われたので、その半年後の9月にめでたく辞めることが出来たんですけども。
だから、この3月から今までの6ヶ月間、続けて来たのは「辞めたい」と急に言って辞める自分の我儘に対する支払いみたいなもんですね。そんなことって、普通、あんまりないですから。
普通なら、編集部から「先生、そろそろご引退を……」みたいなことを言われて辞める場合が多いので、自分から辞めると言い出すということには、向こうもかなりビックリしてまして。なので、ちょっと支払いをしてました。
なんで疲労感の方が楽しさを上回ったのかと言うと、別に、疲れる相談が増えたわけではないんですよ。
そうじゃなくて、純粋に、書いてて楽しい気持ちがちょっと減って来ちゃったんですよね。
あのね、やっぱりパターン化してるんですよ。自分でもわかる。初期の4年くらいは、自分で言うのはナンですけど、「上手い!」って思う答えが3ヶ月に1回くらいはあったわけですよ。
ところが、まあ最近はですね、その「上手い!」って思うのが、半年に1回くらいになってしまった。これはたぶん、あんまり傍から見てもバレない程度だと思うんですけど。
だけど「まあ、仕方ないからやろうか。だって、朝日新聞だしね。キャリアにもなるし」なんて思い始めたら、たぶん、もうそこで最後なんですよね。
こういう仕事って、本当に「やり甲斐が100」なんですよ。「やり甲斐100で、それ以外は0」でやるべきという、わりと特殊な仕事なので、そう思ってしまったら、そこで辞めるべきなんです。
多くの人に、今回のアンケートも含めて「残念です」とか「続けてください」と言われたので、メチャクチャあの盛り上がったんですけど。
でも、盛り上がったからといって、やり甲斐は増えないので(笑)。
すみません、なんでこんなことを笑いながら話しているかというのは、後で話します。ちょっと、自分自身、変わったところがあるので、変なタイミングで笑うと思いますけど。
最後の2回くらいは「はい、これで終わり!」と気持ちよく駆け抜けることが出来たので、自分では、なかなか良い感じの終わり方だと思っています。
・・・
ここからが本題です。
そもそも、僕はこういった新聞の人生相談というのを、あんまり読むタイプじゃなかったんですよ。
だから、かれこれ10年間も続けてきたんですけど、最初に依頼を受けた時にはすごくビックリしたんですね。「とりあえず、やったこともないけど、面白そうだな」と思って引き受けたんですけど。
この悩みのるつぼというコーナーには、4人の回答者がいて、毎週、週替わりで悩みに答えるわけですね。だから、月に1回くらいの間隔で自分に担当が回ってくるんです。
「僕は人生相談をあんまり読まない」って言ったんですけど、なんで読まないのかと言うと、僕にとってあんまり面白くないものが多かったからなんです。
それは、普通の人が他人から受けた相談に答える時のパターンと似ているんですけど。
(ホワイトボードを指差して)
【画像】相談に答える悪手
ここに「悪手」と書いてあります。
悪手というのは、まあ、たぶん、将棋とか囲碁の用語だと思うんですけど。悪い手のことですね。「これはやっちゃいけないよ」というパターンなんですけど。
だいたい、人生相談に答えるのが下手な人というのは、聞いている途中で「そこ、間違ってる!」って、指摘しちゃうんですね。
おまけに、聞いている最中に「こうすればいいに決まっている!」っていう、自分の中の結論を見つけちゃう。
そして、途中からは、相手の話が終わるまで「さあ、どういうふうにこれを言ってやろうか?」と、言い回しとかを考えるようになっちゃうんですね。
こういう特徴は、だいたい頭が良い人に多いです。なので、頭の回転が速い人は、あまり人生相談に向いていないと思っています。なぜかと言うと「相手の話す速度を飛び越えて、自分の頭が回転しちゃうから」ですね。
そうじゃなくて、ゆっくり考えなきゃいけないんですよ。ゆっくり考えるためには、どうすればいいのかと言うと、相手が何か一言口にする度に、その一言を言い返してどんどん言葉を引き出すくらいのやり取りに持っていかないと、なかなか人生相談というのは上手くいかないんです。
でも、新聞とかの人生相談を見ると、なんか、相手が言っていること、読者の相談に対して、すぐに答えを思いついて「こうすればいい」と考えて、「じゃあ、どのように新聞の紙面で文章に書いてやろうか?」と思っているような、なんか薄いのが見えてたような気がしてたんですね、10年くらい前までは。
「そういう人生相談が多いんだったら、自分自身が入って行って、色々とやり変えるチャンスあるかな?」と思って引き受けたんですけど。
なので、相談に答える時には「そういう悪いパターンにならないために」ということを考えていました。
これも「今後、皆さんが人生相談を受ける時に、これを覚えておいてくれれば、あまり変なことをしなくて済むよ?」ということなんですよ。
(ホワイトボードを指差して)
【画像】人生相談でやったほうがいいこと
これをやった方がいいよの1つ目は「自分が思いつく答えは、相手もすでに検討済みである」ということですね。
悩みを持っている人というのは、ものすごくリアルに考えているわけですよ。なので、自分がすぐに思いつきそうな答えというのは、だいたい相手は想定済みで、それを何度も却下して考え直すということを繰り返しているわけですね。考えた上で落としているわけ。だから、あんまりそれをアテにしない。
相手はすでに、そんな答えには気付いているわけですよ。その相談を聞いた時「そりゃ、これしかないだろう」という答えは、だいたい、相手も引き当てているわけです。「じゃあ、なんで、相手はそれを聞いてくるんだろうか?」と、そこを考えないと、全てが崩れちゃうんですね。
例えば、「子供が勉強しないの」と言われたら「ガミガミ言い過ぎじゃないの?」と答える、「彼氏が浮気するの」と言われたら「そんな彼氏とは別れた方がいいんじゃないの?」と答える。でも、そういう答えは、全て、相手はもう思いついていて、検討済みなんですよね。
なのに、なぜそれを聞いてくるのかというと、「そういう普通の答えでは納得出来ない理由というのが、ハッキリと口に出していない部分にあるから」なんですよ。
で、この「ハッキリ言っていないこと」というのは、僕ら自身が他人に相談する時のことを考えたらわかると思うんですけど、絶対に情報をチョロ出ししてるんですね。
あんまり言いたくないことは最後まで隠しておいて、わりと人聞きが良いような、一見、相談に見えるんだけど、実はどうでもいいことくらいから、チョロチョロと相手に出して、相談を始める。ところが、相手はそれが相談の本質だと思っちゃうから、自分が序盤に出している、「そこは、わりとどうでもいいんだけど」みたいなものに、あっという間に食いついて、結論を出して、答えたつもりになっちゃう。そうすると、自分も相談する意欲を失っちゃう。こういうパターンがあるんです。
なので、「普通の答えでは納得できない理由が、相手には必ずある」と。それを聞き出すなり、まあ、言ってくれないかもわからないので、こちら側で考えない限り、人生相談というのは、上手く行かないんですよ。
というのが、僕が10年間くらいやってきたパターンなんですけど。
こういうことを、しょっちゅう考えているもんですから、僕は「相談している人を疑う」というクセがついてしまいました。
具体的に言うと、新聞社に寄せられる文章を……実際に新聞社に寄せられる文章というのは、新聞に掲載されているものより、もうちょっと長いそうですけど、編集者があそこにまとまるように収めてるんですけどね。
新聞記者というのは面白いもんで、本質をズラさずに文量だけを縮めるというのが、メチャクチャ上手いんですよ。というのも、新聞って紙面が限られていて、「急に何かのニュースが飛び込んできたら、他の記事が5行縮まる」とか「明日の天気が崩れそうだといったら、天気概況が2行伸びる」ということがあるんですね。
すると、自分が苦労して書いた原稿を、その分だけ減らさなきゃいけない。こういうことが年がら年中あるから、とりあえず文章量の調整は、彼らはすごく上手いんですよ。なので、文量は調整しているんだけど、わりと文章の本質は、そのまま残してくれるんですけどね。
で、新聞社に寄せられる相談文というのを、僕はあんまり信じないようになりました。
これは、相談している人の人格を疑っているわけじゃないし、相談文に噓が書いてあると思っているわけでもないんですよ。
でも、相談者本人の中には「言いたくないこと」や、あとは、もうちょっと複雑な「あんまり考えたくないこと」みたいなものが心の中にある。それらは相談文の中に決して書いてないんだけども、どこかに隠れているような気がするんですね。
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