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枯れ葉

昨年10月に北ぶらくり丁に開館したシネマ203というちいさな映画館でアキ・カウリスマキ監督の最新作「枯れ葉」が元日から公開されると知り、公開初日の初回上映を予約した。

シネマ203はビルのなかの1室

座席数は18席ほどのちいさな空間。でも不思議と圧迫感はなく、長時間座っていられるような椅子が並べられている。椅子の上にはクッションが置かれてる。スクリーンの大きさも空間にぴったり。両脇に配置された細長いスピーカーの音もとてもよかった。エンドロールまで快適に鑑賞することができた。

数日前に観た「PERFECT DAYS」ではヴェンダース監督は公共トイレ清掃員に対する敬意が伝わってきた。カウリスマキ監督は過去の作品を「労働者3部作」と言われてるけど、「枯れ葉」もまた環境も待遇も過酷ななかで働いている労働者たちに対しての深い愛と敬意が作品全体から伝わってくる。 

天涯孤独でも理不尽な解雇をされても、誇り高く自分を見失わず、好意を抱く男性に対しても、真っ直ぐに意見をする姿は本当に美しい。
自分は好きな相手なら嫌われたくない一心で思っていても心に収めて見て見ぬふりをしてしまう。わたしもそんな風に生きていけたら人生もう少し変わっていたのに。

セリフも仕草も表情も最低限で、ものすごく淡々と進んでいくのに、どんどん引き込まれていく。その淡々さがリアリティあふれているからだと思う。いつのまにか、すっと感情移入している。

そして観ているうちに、ふと見せる表情の瞬間に敏感になる。カラオケパブや部屋のラジオから流れる歌の歌詞もじわじわ沁みる。

カウリスマキ監督作品じゃないと味わえないじんわりと心温まるハッピーエンド。また新作が観れたというしあわせな気持ちも相まって、余韻にひたりつつ、心をほくほくさせながら歩いて帰った。


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