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あたらしい住まいを探す--2

修繕必須な物件だから、物件内見の申込みと並行してリノベーションをお願いする工務店もネットで探した。
京町家の修繕に特化していることや、自然素材を使い、費用も抑えられるような工夫も謳っている工務店のサイトを見つけた。とても美しくこだわったリノベーションをしている施工事例をいくつか見る。ここなら信頼できそうな気がする。

問い合わせフォームのページから是非お願いをしたいと送った。送信後、自動返信メールが何時間経っても届かない。アドレスを打ち間違えたかと半日経って再度その旨を付け加え、もう一度問い合わせフォームから送信する。やっぱり自動返信メールが届かない。どうしたものか。

翌日午前中に見知らぬ携帯番号から着信があった。出てみると、昨日問い合わせフォームから送信した工務店の所長さんからだった。自動返信が機能していないことには全く触れていなかった。
決まった内見の日時を伝えると、翌日の午前中なら時間が作れるとのこと。打合せをしてもらえることになった。

内見当日はホテルに泊まって、翌朝指定された場所に伺うことに。車で迎えにきていただき、辿り着いた事務所はきれいにリノベーションされていた。

前日に内見をした際に翌日工務店さんと話をすることになった旨を伝えると、「こういう箇所を撮っておくと良いですよ」と不動産屋さんが親切にいろいろ教えてくださった。
見やすいように撮った画像をiPadに移したり、自分の希望も伝えようとメモしたりと準備しておいた。

所長さんにご挨拶して早々にiPadに入れた物件の気になる箇所の画像を見てもらった。所長さんはサクサクと流し見をしただけで、何も反応がない。そんなに酷くはないのかな。聞けない雰囲気。

手元にある印刷された物件の間取り図をじっと見て、不動産屋さんのサイトにある物件の画像をモニターに映し出し照らし合わせている。

しばらくすると間取り図を無言で考え込みながら修正ペンとペンで消したり書き足したりしはじめた。
「ここは残しましょう。お客さんから見えるように」
「階段は無垢材だから残しましょう」
「お風呂と洗面所はシステムバスにしましょう」
わたしの希望を全く聞かないままどんどん間取り図を決めている。

所長「台所はシステムキッチンにしましょう。安いですから」
さすがに台所まで勝手に決められてはと思い
「台所にガスオーブンを入れたいんです。システムキッチンではなくて業務用のステンレスのにしたいんです」
と希望を伝えると
「高いですよ」と却下しそうな雰囲気。
私「中古だったら安いのもあるかと思って」
所長「それなら探してください」
え、わたしが探すの。探してください、で終わり?

「この箇所はとても貴重だからこのままの造りにしましょう。
お客さんが来た時に待ってもらう部屋にして。襖には唐紙を使ってアクセントにして。唐紙も色んな柄がありますから」
などなど。
だから客なんて来ないのに。心の中で突っ込む。
所長さんが間取り図と画像から湧き出る案を話している。
でもそれに対してわたしに何かを言わせないような。聞いてる時間ないみたいな、空気を醸し出していた。

所長「この物件は他に問い合わせは来てるんですか?」
私「週明けの6日に一件内見があるそうです」
所長「その前に決めておきたいな。29日朝9時なら時間作れるかな…
時間変更できるか聞いてもらえる?」横にいるアシスタントさんに指示している。
「不動産屋さんに今聞いてもらえますか?」
メールを打ち始めると
「電話してください」と有無を言わさぬ雰囲気。
あわてて不動産屋さんの携帯に電話すると、会議中なので用件はショートメールで送って欲しいと言われてしまった。ですよね…。
そんなやり取りしてるのに構わず目の前で所長さんは「25日は可能か聞いてもらえます?」という。
渋々聞くとその日は終日無理とのお返事。
お詫びしながら慌てて電話をきった。
所長「やっぱり今週中に見ておきたいな…
26日の13時からか14時からはどうか聞いてもらえますか?」
目の前の圧を感じながら焦ってショートメールを送る。その日は難しいとお返事が届いたことを伝えると苛立ちを隠しきれない様子で
「融通が効かへんなあ…別の人でもあかんのか」
「こういう物件は時間との勝負なんですよ。京町屋の物件は全世界が注目してるんですから」
「不動産屋さんに29日は9時から内見を開始したいと伝えといて貰えますか?」
アシスタントに
「もう行かんとあかんわ。駅まで送ってってあげて」
セカセカと打合せの時間が終了した。

所長さんが修正した間取り図のコピーと何故か有名な和菓子の手土産までいただいてしまった。帰りも駅まで車で送っていただいた。

家に帰ってきて、書き込まれた間取り図のコピーを見返す。
そういえば、わたしのこと全く聞いてなかったなあ。
とりあえず内見同行してもらって、修繕可能なのかどうかと、見積もりを出してもらってから考えよう。

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