見出し画像

片田舎のおっさん環境入りを目指す〜MH3後アルーレン最前線〜

今からおよそ27年前、ウェザーライトというエキスパンションに、一人のおっさんがいました。
そのおっさんはこう言いました。

「全てのプレイヤーが平等にマナ加速できるパラダイスみてぇなデッキを作りてぇ」

「溢れ出るマナで環境デッキボコしてぇ」

こうしてできたデッキが……



ご無沙汰しております、otabaです。
今年度から私を取り巻く環境がさらに多忙となりmtgに触れる機会が減っていたのですが、モダンホライゾン3の実装に合わせて帰ってまいりました。
個人的に非常に楽しみにしていたカードが多くあり、いくつかの形を試しました。
全国のアルーレン愛好家はみんな現環境で苦しんでいると思われるので、情報共有も兼ねて現状をお伝えできればと思います。


1、待望のマナ加速、耕作の閃光

「耕作の閃光」
2月に公開されてすぐ、「老練の探険者」との相性の良さを見出され、話題となっていたカードである。この2枚のシナジーは凄まじく、以下の動画のような動きが可能だ。

1ターン目に土地が4枚戦場に並び、手札には後続の土地が入る。これにより、2ターン目にして5マナのアクションである「ロリアンの発見」をプレイすることができるのだ。

この驚異的な加速力は以下の2つの点から、アルーレンと相性が良い。

①必要マナが一気に揃う
 アルーレンはミッドレンジで戦うコンボデッキなので、1ターンに1枚ずつぺたぺたと土地を並べてマナを伸ばすのが基本である。4〜5枚土地が並んでからがアルーレンの時間であり、そこまでどうにか盤面に並べたクリーチャーと手札からのカウンターで生き残るというのがこれまでの戦術であった。
 老練の探険者と耕作の閃光のシナジーはそれを1ターン目にして実現する。極端な話、初手で老練の探険者を爆発させれば、最低限必要なマナは確保されるので、以降一切土地を引かなくてもゲームを進めることができる。
 ちまちまとドロースペルを撃って土地をかき集めていたあの時のアルーレンはもう存在しないのだ。

②最速2ターンキルが可能
 2ターン目には5マナ出すことが出来るので、アルーレンでは最速で2ターンキルが可能である。

もちろん、相手の妨害などもあるので2ターンキルなどそうそう起こり得るものではないが、アルーレンで現実的に2キルが可能になったのは大きすぎる恩恵である。

これらの強みを生かして、まずは「耕作の閃光」と「老練の探険者」パッケージによるランプを軸に高速でコンボを決めるアプローチを試すことにした。

2、閃光のアルーレン

「耕作の閃光」の実装が待ちきれず、一人回しだけはしていたのだが、その気持ちよさとは裏腹にいくつかの弱点も浮き彫りになっていった。

まず懸念点となるのはマナフラッドである。2ターン目に5マナが並ぶということは、それ以降に引く土地の価値はかなり低くなるということだ。土地だけ並んでハンドがスカスカという状況は避けたいため、トップから引いて強いカードをたくさん採用するなどマナフラッドを受ける工夫が必要である。
幸いにもこれには以前に組んだアルーレンの知見が役に立った。レガシー環境には、土地を削ってマナフラッドを起こしにくくしながらも、フラッド受けとなるカードが存在している。そう「ロリアンの発見」だ。

このカードは、実質土地の水増しとして機能し序盤の安定性に貢献し、マナが伸びた中盤以降は3ドローで息切れを防いでくれる。とはいえ、流石に土地を16枚まで削るとノーランドマリガンがやや気になったので、土地と「老練の探険者」にアクセスできる「むかしむかし」も採用することとした。これらの存在により、土地を16〜7枚まで削りながら5〜6マナ域で戦うデッキを成立させることができた。

次に問題となるのが基本土地の枚数だ。「老練の探険者」+「耕作の閃光」を一度決めると、ライブラリーから4枚の基本土地が消える。そのためある程度の枚数をライブラリー内に確保したい。しかし、あまりに基本土地を増やしすぎると、色事故が起きやすくなるばかりか、フェッチランドの減少によるシャッフル手段の不足により「渦まく知識」を強く使えなくなってしまった。逆に少なすぎると、2枚目以降の「耕作の閃光」が完全に腐ってしまうこととなる。
様々な枚数を試した結果、安定性等の観点から極端に増やすことはせず、2枚目の「老練の探険者」や「耕作の閃光」が最低限機能する6枚程度が良いと判断した。

3、片田舎の探険者の苦難

そうして組み上げたのが以下のデッキである。一人回しである程度の構築は固まっていたので、実装後すぐにリーグに突撃してみた。その結果は悲惨なものだった。

勝率が安定しない対デルバー

まず真っ先に解決しなければいけなかったのが、対デルバーへの勝率の低さである。強力なマナ加速があるのになぜデルバーへの勝率が下がるのか。その原因は、老練の探険者への依存度の高さにある。
「耕作の閃光」に打ち消しが当てられることは問題ではないのだが、「老練の探険者」が通らないことは大問題である。
ランプ戦略を生かすために全体的に重めの構成にしているため、初動を「force of will」などで弾かれると、立て直しが難しいことがままあった。また、1ターン目にランプに成功したのに、順番にアクションを弾かれるだけで手数が出ずに負けると言うことも多かった。

夢の2ターンキル……

対デルバーへの安定性を犠牲にして得たスピードは実際どれほどのものなのかというと、現実はなかなか厳しいものがあった。
「老練の探険者」+「耕作な閃光」がそもそも2枚コンボなのに、その上で「魔の魅惑」+コンボパーツを揃えなければいけないのだ。それぞれはある程度柔軟に替えられるとはいえ、実質4枚コンボがそうそう決まるわけもない。しかもそれぞれのカードが出来れば重ね引きしたくないカードというのも問題だった。

正直、この構築に今のレガシー環境で生き残れるだけの強さはなかった。
ウェザーライト出身のおっさんが夢見たパラダイスみてぇなデッキは、日の目を見ることなく、夢のまま終わった。

発売前からウキウキでnoteを書いていただけにダメージは大きかったが、閃光のアルーレンはまだ終わりではない。モダンホライゾン3がもたらした閃光は他にもあるのだ。

4、閃光のアルーレン2

モダンホライゾン3はリリース直後なのを加味しても、前評判に比べて環境への影響が大きかった。そのおかげで、アルーレンにとって追い風とも言える変化が起きていた。
そう、「オークの弓使い」の採用率の低下だ。青黒には令和のサイカトグとも言える「超能力蛙」が登場したことで、「有翼の叡智、ナドゥ」などに効果の薄いオークが環境から減ってきていたのだ。
これを逃す手はない。

「アド損無しでピッチを撃てるパラダイスみてぇなデッキを作りてぇ。」

「拒絶の閃光」
このカードは、アルーレンで使えそうだなーと思いつつ、オークがいる間は無理かと思い諦めていた。しかし、思いがけずその時が来てしまった。「オークの弓使い」がいないのならば8梟が肯定される。アルーレンのテンポの悪さを改善しつつ、苦手なコンボへの耐性を上げるこのカードは非常に噛み合っているように見えた。
また「知りたがりの学徒、タミヨウ」も青の1マナクリーチャーとしては破格の性能である。致命的な呪文を弾きながらアドバンテージを稼ぎ、コンボを狙うアルーレンが復権するのではないかとさえ思えた。

しかし、結論から言うとこちらも大成しなかった。このデッキが現環境で勝てない理由は大きく二つある。

①「苛立たしいガラクタ」の存在

モダンホライゾン3がもたらしたアルーレンにとってのガンがこの「苛立たしいガラクタ」だ。

デザイナーの娘がアルーレンを嫌っている?

このカードは今までの対策カードとは一線を画す。これまで、この手のカードは2マナ以上であることがほとんどで、狭い対策効果しか持たなかった。そのため、積む側にもリスクがあったのだが、このカードにそんな弱点はない。
1マナのアーティファクトなのであらゆるデッキに採用の可能性があり「ウルザの物語」からも簡単に出てくる。複数引いた場合はドローに変換できるし、その起動コストも1マナという何から何までおかしいカードである。
このカードは今まで置物対策として一般的だった「活性の力」での対処を許さない。しかし単体除去で破壊を試みた場合、ドローで逃げられてアド損となってしまう。
あまりの便利さに、メインから軽い「防御の光網」感覚で積んでいるデッキまで出てきているのが現状である。
このカードを置かれるだけで機能不全になるBUGアルーレンはとても環境に存在できるデッキではなかった。

②打ち消しを苦にしないデッキの存在

モダンホライゾン3がレガシー環境にもたらした影響は大きく、新たにいくつかのデッキが台頭してきた。その中で特に厳しいと感じるのが「有翼の叡智、ナドゥ」を軸としたコンボデッキと、新たな戦略を加え超強化されたエルドラージである。
ナドゥは「喜ぶハーフリング」や「時を解す者、テフェリー」による高い打ち消しへの耐性を持っている。エルドラージは圧倒的なスピードと盤面が膠着した際の飛び道具に加え「魂の洞窟」の存在によるカウンター不可の展開を備えている。これらのカードを置かれた瞬間、デッキの一部が紙と化すのはあまりにも向かい風であった。

かなりのチケを使ってこねくり回したのだが、こちらもパラダイスみてぇなデッキが出来ることはなく夢となって消えた。

5、アルーレン界の希望

ではアルーレンは全く勝てないのかというと決してそんなことはない。現在ある程度安定した戦績を残せているのがこの4cアルーレンである。

前述した通り、現環境では少数の打ち消しと除去で脅威に対処しつつ、盤面を固めてコンボを狙うという戦略は有効ではない。ならば除去をしっかりと採用すれば良いのである。
数あるアルーレンの中で最もその戦略に適しているのは白を含めた型だ。「剣を鍬に」はもちろん、「虹色の終焉」という万能除去の存在により盤面処理能力が非常に高い。豆の木コントロール全盛期は、アドバンテージ勝負で押し負けてしまうこのデッキは若干苦しい立ち位置となっていたのだが、現環境に豆の木コントロールなど存在しないのでその心配もない。多くのデッキと五分の勝負ができるのが4cアルーレンの魅力だろう。
このデッキに関しては以前のnoteでほぼ解説を終えているので詳しくはそちらを読んでいただきたい。

6、アルーレンが得たもの

モダンホライゾン3はアルーレンをさらに苦しい立場に追いやったのは間違いないものの、全く得たものがなかったわけではない。まだ発売後一週間程度であるが試して可能性を感じたカードをピックアップしておく。即戦力になりそうなもののみ試しているので、エネルギー関連カードなどは未知数である。今後試すことがあれば追記していく。

土地

「変容する森林」
このカードは、1枚程度なら無条件で採用してよいと思われる。昂揚さえ達成していれば、「魔の魅惑」にも「自然の怒りのタイタン、ウーロ」にもなれる。大抵はウーロになって墓地に落とした瞬間殴りかかっている。

「マダラの鉤爪門」
こちらも「自然の怒りのタイタン、ウーロ」と合わせて使うカード。ウーロを墓地を経由せずに着地させるのはなかなか強力。地味に4マナ払ってインスタントタイミングで置くことで、相手のクリーチャーをフェイズアウトさせて1ターン作ったり、システムクリーチャーを一時的に飛ばしたりなど面白い使い方もできる。「生ける願い」でウーロと鉤爪門どちらも引っ張れるので、その方向で可能性があるかもしれない。

クリーチャー

「知りたがりの学徒、タミヨウ」
1マナとしては破格の性能。奥義までも早く、救世主たりえる可能性を感じる1枚。レガシーだと「karakas」で簡単に無力化されてしまうのがネック。コンボには全く絡まないので枚数は要検討。

インスタント、ソーサリー

「記憶への放逐」
憎きdoomsdayへの対策をしながら、無色系デッキも見ることができるナイスカード。「もみ消し」の場合わざわざサイドに積む気はしないが、このカードは積む価値がある。カウンターを許さずに「タッサの信託者」の誘発を消せる凄いカード。

「悪意の閃光」
可能性は感じるものの、黒いクリーチャーはそれほど多くないので素撃ちも多い。他の閃光サイクルと違って、相手の除去に合わせて撃つことでアドバンテージを取れるのが魅力。

7、最後に

今回はアルーレンの最前線を思いつくままに書き残しました。新カードをかなり楽しみにしていたので、結局形に出来なかったのが悔やまれるところです。現状は、打ち消しに頼るより、アーティファクトも割れる除去をしっかりと積んで盤面を取りつつ戦っていくのがよいと感じています。
これを書いている最中も、あれなら行けるんじゃないかと感じるものは多く、試す時間が足りていない状態です。閃光のアルーレンもまだまだ諦めていませんので、形になったらまた報告できればと思います。定期的に「アルーレン」で検索をかけていますので、是非有用な情報があればX(Twitter)などで共有いただければありがたいです。

ここまでお読みいただきありがとうございます。
それでは皆様、よいアルーレンライフを!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?