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Inter BEEで浮上した「放送同時配信をやるなら地域制御はいらない」との意見

11月17日(水)から19日(金)まで幕張でリアル展示会として開催されたInter BEEの会期が終了した。ただし、オンラインでは12月17日(金)まで開催が続く。出展者のオンライン展示はまだまだ見られるのと、カンファレンスはほとんどがアーカイブとして残され、オンライン聴講することができる。見逃したセッションはぜひ、17日までに見てもらうといいと思う。

MediaBorderでは、このオンライン聴講を利用して、筆者としてポイントに感じたことを、アーカイブを通じて数回に分けて記事にしておきたい。

まず取り上げたいのが、同時配信だ。昨年からNHKが「NHKプラス」の名称で同時配信サービスをスタートさせ、民放キー局もこの10月から来年1月にかけてTVerでの同時配信が出揃う。

INTER BEE CONNECTEDの基調講演では「放送同時配信はテレビを救うか」と題してNHKプラス、日テレのライブ配信、民放同時配信の受け皿となるTVerからそれぞれ登壇するセッションが行われた。モデレーターはワイズ・メディア塚本幹夫氏だ。ちなみに筆者はこのCONNECTEDのセッションの企画メンバーで塚本氏はそのチームのリーダー役。

まずは上のリンクからこのセッションのアーカイブを見てもらいたい。筆者として感じたことをここでは書き留めておく。

同時配信はテレビのショーケース

日本テレビの佐藤貴博氏によるプレゼンテーションは非常に明快だった。その中で、民放が同時配信を実施する意義を説明した部分は最も重要だと思う。

佐藤氏が言うには、「同時配信はインターネット上に置くテレビのショーケース」。「同時配信自体を楽しんでいただくと言うよりも、見てもらって知ってもらいたい」そのために実施するのだと述べている。なにしろ、若い世代はオールド世代のように日常的にテレビに接していない。むしろスマホを朝から晩までいじり続け、ニュースを見るのもコンテンツを楽しむのも手のひらの中だ。テレビ番組が、そんな若者たちのメディア生活の中に入れてもらうためには、番組を同時配信するべきだ、ということだろう。

だからこそ佐藤氏は、日本テレビだけでなく他の放送局の参加も必要だと主張する。全局が並んでザッピング可能になってこそ、同時配信に接してもらえる。つまり、テレビというプラットフォームをスマホ上で具現化するために同時配信を全局で実施する必要があるということだ。

つまり同時配信はネット上でのテレビの入り口。見逃し配信を見てもらうことにも、またテレビ受像機で放送を視聴してもらうことにも、同時配信を入り口に広がっていく可能性がある。

同時配信そのものをたくさんの時間を費やして利用してもらえるかどうかは問題ではないし、おそらくさほどではない。だが同時配信だからこそ、リーチを広げ、頻繁にアクセスしてもらう可能性がある。そうなるように設計しなければならない。

見逃し配信だけだと、「これを見よう」と明確に見たいコンテンツを見てもらうことにはなるが、なんとなく手持ち無沙汰の時に開くことはあまりない。同時配信があることで、「いまどうなってる?」と暇つぶしに開いてくれる可能性が出てくる。

このあたりは、私が前にMediaBorderに書いたこととシンクロする。

同時配信とは、それ自体を見てもらうことが目的ではなく、テレビ全体に接してもらうきっかけとして重要なのだ。佐藤氏の説明もほぼ同じことを言っていた。

地域制御についてローカル局トップも議論

同時配信の議論でもうひとつ興味深かったのが、地域制御の問題。いずれ同時配信をローカル局でも実施するなら、地域制御が必要だとの議論が前々からあった。例えば福岡県の人が同時配信を視聴する際は、地元の地上波局の番組しか見られないようにすべきだ、との意見が強かったように思う。

だが、先の基調講演全90分の55分くらいのところでこの議論になった際、佐藤氏は明確に「地域制御しない方がいい」と述べている。「エリアを選ぶのはユーザーでありスポンサーであるべき」というのが同氏の見解だ。radikoのように地域の局の放送を無料で聴けて、お金を払えばエリアフリーで聴けるできる形はどうかとの質問には、「テレビの場合は無料を突き詰めるべき」と答えた。無料広告方式にこだわることが、ユーザーにもスポンサーにも有益だとの考え方だろう。

同時配信には地域制御をかけるべきではない。これはキー局の佐藤氏の意見であって、ローカル局はむしろ地域制御が必要と言うのではないか。そう思いがちだが、別のセッションで意外な声が聞けた。

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