映画「陪審2番」自分が裁く事件の真犯人が自分と気づいてしまったら・・・
イーストウッドの最新作が日本では劇場公開されないなんて!と話題になった映画がU-NEXTで配信開始。クリント翁も94才なのだからこれが遺作かもしれないのに劇場公開なしってどういうことよ!と思いつつ見たがなかなか面白い!
ニコラス・ホルト演じるジャスティンは身重の妻と、赤ん坊を心待ちに地道に生きる青年。ある裁判の陪審員に選ばれ事件を知るうち、現場となった酒場は当日自分も行った店だと思い出す。被害者は橋の下で死んだのだが、この夜自分は車が何かとぶつかっていた。鹿が多い道だったのでてっきりそうだと思い込んでいたが、裁判が進むうち鹿ではなかったかもしれないと思うようになる。ほっておくと被害者の恋人の男が有罪になる。だがジャスティンにはアルコール中毒の過去と酒酔い運転による事故歴があり、申し出ると終身刑が確実。
良心の呵責に悩む葛藤と、自分の関与がバレるサスペンスが混じる、最後まで目が離せない映画だ。前作「クライマッチョ」が今ひとつ、いや今三つくらいだったので、今作こそ映画館で見たかったなあ。
この後ネタバレ。
裁判の検事は次期検事長を狙う野心家で、いつも強気なトニ・コレットが演じる。検事はとにかく被告を有罪にし、検事長選挙を有利にしたい。状況証拠だらけだが決定的なのは事件の夜に車を見かけた爺さんがいたこと。雨の中、現場となった道に車が停まっていて、運転手が橋の下を覗いていたと証言。その男はこの法廷にいるかと聞かれると、爺さんは指差す。主人公ジャスティンは自分が指されるかドキドキするが、指さしたのは被告だった。ここは観客も一緒になってハラハラする。
さらにハラハラするのが、評決を決めるために陪審員で議論するところ。みんな爺さんの証言をもとに有罪を主張。とっとと評決を出して早く帰りたいと言う人も。ところがジャスティンはよせばいいのに無罪の可能性を言い出す。さっきは自分が指さされるかとハラハラしたくせに、自分だけは被告が無罪と知っているので、なんとか助けたいと思ってしまうわけだ。
ところが陪審員の中に元刑事がいて、「自分の勘ではひき逃げだ」と言い出すとまたハラハラすることになる。観客も主人公と一緒にハラハラする。こうした主人公の心の揺れを描き、それに観客も共感させるのは、さすが巨匠といったところ。
元刑事が事件の後に車を修理した人物を割り出しリストを作る。一緒に被告の無実を晴らそうとしたはずのジャスティンが、このリストをわざと落として元刑事のもくろみが発覚。陪審員から外されてしまう。この元刑事を演じたのはJKシモンズ。元刑事はここで退場するので大きな役じゃないけど、巨匠の最新作に出たかったんだろうね。
もっと小さな役、ジャスティンに助言する弁護士をキーファー・サザーランドが演じている。3回くらいしか出てこないのでよく見ておこう。
それと被告の男を演じるのはガブリエル・バッソ。「ヒルビリーエレジー」で主人公JDヴァンスを演じている。Netflixドラマ「ナイトエージェント」にも主演した。被告役でいいの?と思うが出たかったのだろう。
そして結局は、被告を有罪にしておしまいのはずの検事が元刑事の修理車リストを追ってジャスティンにたどり着く。そこで映画が終わるのがまたいい。ジャスティンは観念するのか。検事は自分の手柄を放棄し検事長も諦めてジャスティンを逮捕するのか。あなたはどう思う?私はねえ・・・
ニコラス・ホルトはご存知の通り「マッドマックス怒りのサンダーロード」で白塗りのイカレ野郎を演じていたが、その後サリンジャーやトルーキンの伝記映画に主役で出たり、「ザ・メニュー」でアニャ・テイラー=ジョイのニセ恋人役を演じるなど地味に活躍していた。
実は子役時代にニコラスはトニ・コレットと親子役で共演していたそうだ。その「アバウト・ア・ボーイ」を見たくなった。
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