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テレビとネットの横断業界誌 MediaBorder

放送と通信の融合をテーマに、取材した記事や論考記事をメディアコンサルタント境治が書いていきます。テレビ局の方を中心に、広告業界、ネットメディア、調査会社など様々な分野の皆さんにご…
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#ローカル局

ローカル局は2度創業できる〜新潟放送はなぜHD体制になったのか〜

昨年ホールディングス体制になったBSN新潟放送 BSN新潟放送は52年にラジオ放送、58年にテレビ放送を開始した新潟民放局の雄だ。今年の1月に友人の紹介で島田好久社長と知り合いお話した際、昨年から持株会社体制に移行したことを知った。キー局は全て、関西と中京地区の準キー局でも一部が、そしてローカル局でも何局かはすでに持株会社体制にある。その多くは株式上場している。新潟放送の持株会社も上場しているが、実は元々新潟放送は上場企業だった。珍しい事例と思ったし、それを島田社長が快活

ローカル局は災害にどう対処するか〜各局の能登半島地震報道まとめ〜

筆者は能登半島地震をテレビ局がどう伝えたか、情報収集してきた。 まずテレビの放送内容をデータ化するエム・データ社に依頼し、関東・関西・中京地区の1月1日の各局の放送データをもらい、その中で地震についてどう報道されたかを東洋経済オンラインで記事にした。 この記事の作成過程で地震の被害に遭った石川県・富山県・新潟県の各局からの情報も求めた。各局のお問合せ窓口から問い合わせ、知ってる方がいる局の情報はメールでもらったりしたがかなり時間がかかった。それをようやくまとめて記事にしたの

能登半島地震、三が日のローカル局は地震報道をどれくらい伝えたか

能登半島地震からもう1ヶ月が過ぎてしまった。いまだに多くの人々が避難生活を続けており、被害の全容はまだまだ明らかとはいえない。 今回の地震ではメディアの役割と貢献について考えさせられた。中継所の電源切れで地上波放送の電波が長らく届かなかった地域もあり、地形によってテレビが影響を大きく受けることもあると思い知らされた。 さて私は、元日を中心にテレビが地震をどう伝えたかを東洋経済オンラインで記事にした。 関東・関西・中京地区の地上波テレビ各局が何時から何時まで地震報道を行ったか

テレビ局ど真ん中の視点で、リアルに語る再編論

内側から書かれた初めての具体的な再編論 2024年は年明けからメディアを揺るがす事件が次々起こった。これは激動の年になるぞ。そう思っていたら、まさにその激動を象徴するような本が出版された。『テレビ局再編』という"どストレート"なタイトルで迫る本の著者は根岸豊明氏。「日本テレビにて編成、報道、メディア戦略に従事。同社取締役執行役員、札幌テレビ社長を歴任。」と著者プロフィールにある。 「ど真ん中の人じゃないか。」それを見て私はつぶやいた。これは珍しいなと興味を持った。 というの

2023年、MediaBorder的10大ニュース(後編)

※トップ画像はAdobe Fireflyで「ローカル局は再編を迫られCTV市場の誕生が待たれる」と入力して出てきた生成Ai画像 昨日の前編に続いて、今年の10大ニュース後編として6〜10をお届けする。 6:ローカル局再編の予兆 すでに総務省の有識者会議では放送業界の縮小を前提にした議論が進んでおり、ローカル局をキー局傘下に入れやすくしたり、数局に分かれていた局が同じ内容を放送するのも選択としてありになっていた。今年度は赤字局がいくつも出るとの噂で、にわかにこうした新制

6月28日(水)ウェビナー「辞めテレ教授が好き勝手にテレビを叱る?!」開催

京都でのテレビ談義をそのままセミナーに 5月のある夜、筆者と4人の大学教授が京都の居酒屋に集まった。教授たちはいずれも元テレビ局社員。筆者は毎年、元読売テレビで京都産業大学の脇浜紀子教授に招いていただき講義をしており、その度に同じく京都で教えている元毎日放送の同志社女子大学・影山貴彦教授と元日本テレビの佛教大学・大場吾郎教授もお呼びして楽しい夜を過ごしてきた。今年はテレビ東京を退職したばかりの山本名美氏が京都先端科学大学に教授として赴任したのでお招きし、例年にも増して大いに

ローカル局が同時配信やってみた!〜ミヤギテレビ、夕方ワイド「311特集」での試み〜

この4月からキー局の同時配信が出揃う。そうなると次に気になるのは、ローカル局がどうするかだ。ほとんどの局が16時前後から「夕方ワイド」と呼ばれる地域の情報番組を放送している。通勤通学の時間帯と重なり、帰宅途中に電車の中などで番組の同時配信を見ることができたら便利だろう。実はプライムタイムより夕方ワイドの方が同時配信のニーズが高いのではと筆者は考えている。だがローカル局のそういう動きは伝わってこない。 と、思っていたら「動き」が出てきた。日本テレビ系列のミヤギテレビがこの3月1

ローカル局の主体性は失われていくだけなのか?

総務省「デジタル時代放送制度検討会」の本気総務省による有識者会議「デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会」が昨年11月にスタートした。MediaBorderでは岩井義和氏による議事録をお伝えしてきた。 NHK放送文化研究所の村上圭子氏が「文研ブログ」にこの3回の論点をわかりやすくまとめているので、こちらも参考になると思う。 前の「放送を巡る諸課題に関する検討会」は事実上NHKの同時配信について議論する場だったが、話が進まず何を議論しているのかわからない印象だっ

2月16日ウェビナー「ローカルANDグローバルの方法論」開催!

今回はウェビナー開催のお知らせ記事だ。2月16日17時からの「ローカルANDグローバルの方法論」と題したZoomによるウェビナー。このテーマにした理由を解説したい。 長谷川朋子氏は、日本コンテンツの海外展開や欧米の放送業界、新進のVODサービスなどに詳しい放送ジャーナリストだ。この手の情報におそらく日本で一番通じていると言っていいと思う。海外の展示会にも頻繁に足を運び、欧米の記事から伝わる最新情報もいち早く入手している。 そんな長谷川氏が昨年10月に出版したのが「NETFL

第3回では踏み込んだ議論に〜総務省「デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会」

Introduction 総務省の有識者会議「デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会」について第1回第2回のレポートを寄稿してくれた岩井義和氏が第3回の議事もまとめてくれた。かなり踏み込んだ議論が行われたことがよくわかり、読んでいて動悸が高まった。悠長だった以前の「諸課題検討会」とはずいぶん違って「議論」になっている。そんな様子がよく伝わる貴重な第一次資料と言えるのでぜひ読んでもらえればと思う。 12月15日、「デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会

2022年、メディアのグランドデザインをつくろう

小さな議論より大きな議論をすべき時例えば、テレビ放送の同時配信。やるべきなのか、どうなのか。NHKの同時配信がすでに始まり、民放でもキー局が春までに出揃うこの段階になってもまだ議論が落ち着いていないのはどういうことでしょう。同時配信を同時配信だけで議論しているからだと思うのです。 同時配信にニーズはあるのか、ビジネスになるのか、ローカル局はいらなくなるのか。それらを同時配信だけで議論していても答えは出てきません。同時配信がある一方で、ネットでテレビ番組をどう視聴してもらい、地

2021年、テレビとネットのBorderで起きた10の出来事(後編)

2021年を、MediaBorder視点で振り返る記事。前回1から5まで書いたが、その後編をお届けしよう。 6:番組評価は世帯視聴率からコア視聴率へこれはすでに2020年に起こり始めたことだが、今年はようやく一般にも知れ渡るようになった。はっきりとしたきっかけがある。

たいして影響がなくてもテレビが同時配信すべき理由

同時配信についての論理のない怯えテレビ局はネットでも同時配信すべきかどうか。この議論はもう十数年語られてきた。表立った場としても総務省による「放送を巡る諸課題に関する検討会」で2015年から取り上げられてきた。というより事実上この会議はNHKによる同時配信を議論するためにはじまったものだ。 だがこの会議、一向に進まず何を議論する場かわからなくなっていた。同時配信を進めたいNHKと、なんとか足止めしたい民放が(いや民放のバックにいる新聞社が「民放が反対している」と報じて)攻防

キー局が同時配信を始めたらローカル局はおしまいなのか?

遅くとも来年1月には全キー局の同時配信が出揃う昨日届いた映像新聞の一面トップでキー局の同時配信開始が報じられていた。昨年、日本テレビが単独で同時配信の実験を行い、今年の秋にはキー局が並んでスタートするのだと囁かれていた。だが映像新聞の見出しには「10月から順次開始」とある。 「10月に一斉に始める」との噂だったのだが、簡単には足並みが揃わなかったようだ。映像新聞によると日本テレビは当初言われていた通り10月に開始するが、他の局は"順次続く"という。さらにこう書かれている。