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テレビとネットの横断業界誌 MediaBorder

放送と通信の融合をテーマに、取材した記事や論考記事をメディアコンサルタント境治が書いていきます。テレビ局の方を中心に、広告業界、ネットメディア、調査会社など様々な分野の皆さんにご…
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#netflix

Netflixはなぜ自社作品に製作費をたっぷりかけられるのか、公開データから強引に試算してみる

MediaBorder読者の皆さんならご存知の通り、Netflixが12月に作品個別の視聴時間を公表した。今後、年に2回レポートしていくそうだ。 Netflix「エンゲージメントレポートについて」2023年12月13日 最初の文章が、気が利いている。 「NetflixはYouTubeを除くどの動画配信サービスよりも、人々が視聴している作品に関する情報を提供してきました。 そして今まさに前進する時期を迎えたと考えています。」 もちろん、これは「うまい言い方をしている」だけだ

動画配信サービスは役立たずのレコメンより情報を充実させてくれ(ユーザーの生の感想も)

※TOP画像はAdobeFireflyに「動画配信サービスのおすすめは役立たずで腹が立つ」と入力して生成されたもの パナソニックのテレビがFireTVベースに! 昨日、私のFacebookのタイムラインを一番賑わせたのはこの記事だった。 パナソニックがスマートTVの中身をFireTVベースにするという内容だ。確かにびっくりする。 私は長らくテレビにFireTVを挿して使っていた。正直言ってFireTVのUIは嫌いだった。データをもとにAI任せで作ったようなUIだと感じて

変わったのは、名前だけではない〜dTVからLeminoへのリニューアルを聞く(前編)

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世界も視野に、堅実に、飛躍する。〜U-NEXT堤天心社長インタビュー〜

2015年にNetflixが日本でもサービスを開始して以来、SVOD業界はプレイヤーが次々に増えた。U-NEXTは国内発サービスとしては古参。海外から来たガリバーNetflixや、huluなどのテレビ局系サービスが何かと話題を振りまくのに比べると地味な存在だったかもしれない。だが筆者のようなディープなVODユーザーにとっては最も頼もしいサービスであり続けた。テレビでの視聴を前提にUIがよくできており、価格は2,000円強と他より高いが、1200円分のクーポンで新作を個別課金で

U-NEXTは日本のSVODをすべてまとめるのか?

2月17日、私のタイムラインでは何度もこのニュースが躍った。 2015年にNetflixが上陸して以来、日本には続々SVODプレイヤーが名乗りを挙げた。これについて、2017年には「淘汰が始まった」と気の早いメディアが書いていた。日経もその一つだ。 ゲオが撤退しただけで、ちょっと早計にすぎると筆者は感じたものだ。淘汰を言うなら、2023年の今だ。 12年で一区切りがついた日本のSVODここで日本のVOD業界を振り返ってみよう。 まずSVOD以前、2000年代にTVODと

読者が選ぶ、2022年MediaBorder的10大ニュース

2022年も押し詰まってきた。振り返ると今年は大きなターニングポイントだった気がする。国際社会ではロシアによるウクライナ侵攻が世界を新しい方向に追い立てた。メディアの世界でもこれまでの変化がさらに進むと同時に、これまでとは違う変化も始まったように思う。特に感じたのは、この20年ほど旧来メディアを新興のネットメディアが攻めていたのが、そのネットメディアの側にも困難が押し寄せてきたことだ。もはやネットが革新の側でもなく、メディア全体が一斉に瓦解しかねない状況と言える。 そんな中

説明なく勝手に進んだ「Netflix広告プラン騒動」これまでのあらすじ

スタート直前に判明したNetflixの強引さ11月4日にスタートしたNetflix広告プラン。MediaBorder読者なら大まかな状況はご存知だろう。同プランを強引に推し進めるNetflixと日本のテレビ局で揉めて騒動になった。「これまでのあらすじ」を私の目線でおさらいしておこう。 騒動の噂が聞こえてきたのは10月31日だった。11月4日にスタートする、ほんの数日前に一気に騒動が巻き起こったのだ。 Netflixのサイトには同プランについて「一部のコンテンツはライセンス

広告型Netflixがテレビ広告市場を丸々奪うのはちょっと無理(それよりCTV市場の顕在化に意義がある)

大袈裟な受け止め方が多いNetflix広告プランNetflixが11月から広告型プランを開始すると一部で話題になっている。話題になってもいいし、いろんな人の意見を聞きたくもあるが、あまりにも大袈裟に受け止める呆れた人もいる。この記事は中でも度を超えていると思った。 広告型Netflixは790円の利用料に加えて広告収入も得るサービスなのは確かにそうだ。ただそれをあまりにも巨額に見積もっている。現状の日本で、動画配信市場は5305億円だと情報通信白書に載っているのは確かだ。だ

最新の放送技術を見に行ったら、7年前から進んでなかった件について

放送と通信をシームレスに視聴できるこれからのテレビ先週、NHK放送技術研究所で「技研公開2022」が開催された。今回は感染対策のため完全予約制で人数制限を行なっており、私は5月27日(金)11時に予約したら、この時間に限って大変な土砂降り。ジーンズの膝から下がすっかりずぶ濡れの状態で展示を見て回った。 タイトルを「進んでなかった」と嫌味な感じで書いてしまったが、それは後述するように思いを巡らせた感想で、実際には3年ぶりのリアル展示の数々に感心した。地下一階に並んだVR、AR

Netflixはなぜ立ち止まったのか〜コンテンツの洪水が始まっている

Netflixの会員数減少が話題に4月後半、Netflixの会員数が減ったと話題になった。 原因はNetflix自身で様々に分析し、また各メディアが様々に論じている。これに伴い広告モデルのプランも考えていると報じられた。 2015年の日本進出時にリード・ヘイスティングス氏に直接取材する機会を得たが、その時の印象では、Netflixは企業文化として広告モデルを嫌っている、と感じた。彼らのアイデンティティの一つと言ってもいいのではないか。そんな彼らが広告モデルに手を出すのは、ア

テレビ局はあたらしいドキュメンタリーを作り、世界をめざせ

ドキュメンタリー映画「香川1区」が全国公開され話題になっている。「なぜ君は総理大臣になれないのか」に続いて大島新監督が国会議員・小川淳也氏を追った作品だ。筆者は1月初めに見ていたく感激し、Yahoo!ニュースで記事を書いた。 この作品単体については上記記事を読んでもらうとして、これを見てあらためて考えたことをここでは書きたい。日本のテレビ局はドキュメンタリーにもっと力を入れるべきだ、という趣旨だ。 これまでの日本のドキュメンタリーはつまらない!筆者は映画が大好きで週に1〜

2月16日ウェビナー「ローカルANDグローバルの方法論」開催!

今回はウェビナー開催のお知らせ記事だ。2月16日17時からの「ローカルANDグローバルの方法論」と題したZoomによるウェビナー。このテーマにした理由を解説したい。 長谷川朋子氏は、日本コンテンツの海外展開や欧米の放送業界、新進のVODサービスなどに詳しい放送ジャーナリストだ。この手の情報におそらく日本で一番通じていると言っていいと思う。海外の展示会にも頻繁に足を運び、欧米の記事から伝わる最新情報もいち早く入手している。 そんな長谷川氏が昨年10月に出版したのが「NETFL

2021年、テレビとネットのBorderで起きた10の出来事(前編)

主に放送と通信の”Border”で起こっていることを考えるMediaBorder。その視点で2021年を10の切り口で振り返ってみたい。いわゆる一年の10大ニュースだ。 1:メディアは「+」へ(劇場+配信、放送+配信)2021年は2020年に始まったことが今後定着するとはっきりした年だ。メディアの世界では「+」に集約できる。2位以下に挙げるのもほとんどが「+」の話だとも言える。

ネトフリジャパン批判に乗っかって、5年前の愚痴を書いてしまう

数日前、noteでこんな記事を見かけた。 ほほお、と思った。Netflixは好きだけど日本支社の人たちはプロモーションが良くない、とざっくり言うとそんな内容だ。「ネトフリジャパン」という言い方も一部に定着していて、Netflixのサービスと分けて批判するちょっとした潮流もある様子。おおむね賛同だ。 そして思い出したことがある。私も5年前に”ネトフリジャパン”に感じ悪い仕打ちを受けたのだ。それもやはりプロモーションがうまくいってないんじゃないか、というところが発端。もう時効