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テレビとネットの横断業界誌 MediaBorder

放送と通信の融合をテーマに、取材した記事や論考記事をメディアコンサルタント境治が書いていきます。テレビ局の方を中心に、広告業界、ネットメディア、調査会社など様々な分野の皆さんにご…
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2021年3月の記事一覧

「シナぷしゅ」は番組というより、育児を支えるツールにしたい〜テレビ東京・飯田佳奈子氏への取材

「シナぷしゅ」は2020年4月からレギュラー放送が始まったテレビ東京の乳児向け番組だ。月〜金の朝の放送で、夕方にも東京ローカルの形で朝の番組が再放送される。子どもがとっくに成人している筆者の生活には無縁だが、このところ気になる存在になっていた。これは一種のバーティカルメディアと言えないか?視聴率の対象にならない乳児向けの番組をあえて始めたことには、テレビ局としての新しい考え方が潜んでいる気がする。 誰が企画したのか調べると、番組クレジットに「コンテンツ統括プロデューサー」と

新しい時代〜山本英治氏寄稿〜

Introduction 山本英治氏からの寄稿。テレビとネットの間で仕事してきたベテランの視点で、「時代の変わり目」を語ってくれたもの。面白いので、じっくり読んでいただきたい。 書き手:毎日放送・山本英治 毎日放送の山本と申します。私は一旦定年退職して、今は再雇用のシニアスタッフとして働いているのですが、最近とみに「あ、自分はもう必要とされていないのだなあ」と感じることが多くなりました。 いや、年寄りのひがみや愚痴じゃないんです。もう我々の、と言うか、自分の役割は終わっ

テレビとネット動画の化学反応〜3月30日ウェビナー「テレビマンがYouTubeをドライブさせる」

3月30日にウェビナー「テレビマンがYouTubeをドライブさせる」を開催する。料金は通常2200円だが、MediaBorder購読者には1500円に割引くコードを発行するので、この記事の最後を読んでもらいたい。 このウェビナーはテレビ局を退社して活躍する2人の制作者に登壇いただく。読売テレビで「ダウンタウンDX」などバラエティ制作でキーマンだった平山勝雄氏と、テレビ朝日で報道畑を歩み「報道ステーション」の現場も経験した鎮目博道氏だ。そんな実力あるテレビの作り手だったお二人

都会のテレビ制作者の苦境と地方の衰退、二つの課題を解く鍵「大山モデル」:後編〜脇浜紀子氏寄稿〜

※トップ画像:大山オフィスを率いる総合プロデューサー貝本正紀さん 書き手:脇浜紀子氏(京都産業大学・現代社会学部教授) <”どうせ田舎のテレビ”ではない大山モデルの秘密>大山チャンネルがこれだけの住民を巻き込み、5年以上事業を継続できている最大のポイントは、番組制作における地上波キー局クオリティの担保だと筆者は捉えている。 あらゆる番組制作の仕事を住民にやってもらっていると前編で紹介したが、実は編集については貝本さんはじめアマゾンラテルナのスタッフが行なっている。さらに

都会のテレビ制作者の苦境と地方の衰退、二つの課題を解く鍵「大山モデル」:前編〜脇浜紀子氏寄稿〜

※トップ画像・大山チャンネルのオフィスの入り口を飾るパネル 書き手:脇浜紀子氏(京都産業大学・現代社会学部教授) 「ローカルテレビ」を研究対象としている筆者にとって、ここ数年目が離せない存在になっているのが貝本正紀さん率いる大山チャンネル。去年夏に大山屈指のオシャレスポットに新オフィスを移転したと聞いて、2月に1年半ぶりに訪問してきた。本稿では、大山チャンネルについてこれまでにリサーチした情報をまとめて、皆さんと共有したい。 ※大山チャンネルの新オフィス <超住民参加

ZipangはコンテンツでJapanを生かす〜毎日放送が生んだ地域創生事業

※トップ画像は株式会社Zipangの企業サイトより 2020年8月、関西キー局の毎日放送が新会社を設立したことが報じられた。株式会社Zipangの名称で地域創生を事業としていくという。リリースにはこうあった。 新会社は、この「地域創生」にMBSグループが培ってきたコンテンツ制作⼒を使い全力で取り組む会社です。地域を舞台にしたアニメや映画、ドラマなど映像コンテンツの制作と、地域情報を伝えるWEBメディアの運営が新会社の事業の柱です。全国の⾃治体や商⼯会議所、地元企業などと連

地域メディアはコミュニケーションの未来を作れるか〜広島実証実験を中国新聞担当者に聞く〜

※トップの画像はニュースリリースより 2月半ば、私のFacebookにScreens(放送業界の最新動向を伝えるメディア・株式会社TVer運営)の記事が流れてきた。 広島県内の民間放送4社と中国新聞社、広島県民向けインターネット配信の実証実験開始 民放による共同での実証実験は珍しくはないが、新聞社も参加する例はあまりないので目に留まった。そして、これはどこかで聞いたことがあるぞ!と考えて思い出した。 筆者が昨年出版した「嫌われモノの<広告>は再生するか」の反響をくれた中