溜飲がさがらねぇ

溜飲が下がらなかった。
無理やり押し込めるしかない怒りや涙はこの場合、なんと表現するのが正しいのだろう。

喉元までも上がらずに、その下の心臓の近くで、
形になりそこねた感情の投棄場がある。
何度も何度も塗り重ねられたそのしこりを出そうとして、咳き込むように形にしようとして、しかし涙は出なかった。

強い憎しみも、悲しみも、意義も主張も、あの人の前ではひとえに無駄だと知りながら
私は人間である価値があるのだろうか。
ただ、ていのいい泥人形であるだけだとそう思って、
そう思いそうになって

人生はまだ長いのだから、泥人形であるという認識を分解し、現在進行系の感情と状況のみにまで解像度を落として今だけは、自分自身を滑稽に感じながらも生きていこうと思う。

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