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白日

 八月一日、猛暑。

 私と五十嵐さんは二人で歩いていた。住宅街の坂道をゆっくり上がる。気温が高すぎて、アスファルトとその先の景色が蜃気楼の様に歪んでいる。

 「佐々木さん、もうすぐ着きますよ。ほら、あの白い建物。白いアパートが四棟ありますが、あの突き当りの……」
 五十嵐さんはそのアパートを指差しながら、少し歩調を早めた。

 私は隣町に住んでいたが、同棲した彼と別れて、私が引っ越しをする事にした。大学時代から同棲している彼は就職後、一度だけ社内の同僚と関係を持ち、感の強い私は気付いてしまったのだ。それから私達はギクシャクして、元に戻る事は無かった。

 隣町と言えど、距離はそれなりにあるので、別れた彼と偶然会う事も無いだろう。そう思ってこの辺りに決めた。五十嵐さんは、私が訪れた先の不動産会社の担当者である。

 五十嵐さんは指輪をしてないから、独身であろうとは思ったけど、とても素敵な伯父様なので、パートナーはいるだろう。でも物凄く私のタイプなので、五十嵐さんがよそ見をしている間に、私は着ている白いシャツのボタンを、こっそりと一つ外した。

 
 
 小さな二階建てのアパート。築40年と古いが、階段の手摺りも綺麗にペンキが塗り直してあるし、全体的に白を基調としてあるので、清潔感がある。わりと今時な佇まいだからか、五十嵐さんは得意気な表情をしていた。

 一つの棟で八部屋。二階の右からニ番目の部屋が空室だという。このアパートは古いが賃料が安いし、綺麗にリフォームしてあるので、すぐに埋まってしまうそうだ。

 私は五十嵐さんの後をついて階段を上がり、202号室へ招かれた。

 二人共玄関に入った瞬間、五十嵐さんはドアの鍵を締めた。キョトンとしている私に

 「どうか声を出さないで下さい」

 と小声で呟いた後、私の片腕を引っ張り、キッチンへ連れて行った。そうして私を白い壁に押し付けると、私の着ている白いシャツのボタンをひとつずつ外した。五十嵐さんは最後までボタンを外すと、付けたままのブラジャーを下げて、私の胸を無理矢理出した。左の乳首を摘んで小さく動かしながら、私の顔を見た。

 私は耳も胸も左側が弱い。特に、感じるのだ。五十嵐さんの少し皮の厚い指先が、私の乳首を擦る度に、私達は、下半身を擦り合わせる。

 
 五十嵐さんは私の乳首を摘むのを止めた後、今度は掌で同じ乳首を転がした。優しく、紙一枚隔てる様に繊細に、掌を動かした。

 その間、五十嵐さんは私の表情を見ながら、更に腰をくねらせていた。

 そうして五十嵐さんの右手は、私の履いているスカートの、深いスリットに入ってきた。私はスカートにショーツのラインが出ない様にと、Tバックを履いていたので、五十嵐さんはそれを確かめるかの様に、ヒップを持ち上げたり、ショーツの細いラインを指先で追いかけた。

 

 やがて中指がヒップの方からすぐに膣へと到達した。

 エアコンは付けて無い、窓も閉まったままのアパートの一室は、とても蒸していた。ふと見ると、レースのカーテンだけ付けてある。

 私は五十嵐さんの中指が余りにも気持ち良く入ってくるものだから、力が抜けてしまい声が出てしまった。

 

 「ん……ぁ、ぁぁ……」

 五十嵐さんは自分の口で私の唇を塞いだ後    
 「ここは壁が薄いですからね」
  と、息を荒くしながら言った。

 二人で浅い呼吸をしながら、声を出さない様に、私達は立ったまま続けた。五十嵐さんの中指は一度私の膣を離れ、今度は前から、割れ目に沿って入ってきた。

 割れ目に沿って上下する中指。五十嵐さんの中指が、丁度良い加減で当たる。そのまま深く、少しずつ深く、そしてまた、膣へと潜ってゆく。

 二人の浅い呼吸だけがアパートの部屋中に響く。二人共、靴を履いたまま、私はキッチンの壁にもたれ掛かったまま。

 五十嵐さんは私を引き寄せ、自分の右膝で私の脚を開きながらベルトを外していた。私も我慢出来ずに自分でスカートを捲り上げたが、Tバックはわざと履いたままにしておいた。

 
 五十嵐さんはそれを察したのか、Tバックを脱がさずに、自分のモノをグリグリと押し付けてきた。Tバックの隙間から、今にも入ってしまいそうで、なかなか入って来ない。
 

 そして五十嵐さんはとうとう、左手の指先にTバックを引っ掛けて、少し腰を低くしながら右腕で私の太腿を持ち上げて、挿入してきた。

 立ったまま、下から突き上げられる。

 

 炎天下、住宅街の白いアパートの一室で。

 

 遠くからかすかに音楽が聴こえる。隣の部屋からだろう。隣人が在宅している事に更に興奮を覚え、私は五十嵐さんの首にしがみついた。

 五十嵐さんの腰の動きが強くなる。そして優しくなる。早くなる。遅くなる。

 私はそれに合わせて時々膣を締めた。

 五十嵐さんは、何度か持ち堪えて、それから慌てて抜いて私の太腿に射精した。

 私は挿入されている時よりも深い呼吸になり、五十嵐さんは、私のまだ疼いている恥部に果てたモノを押し当てながら、それを感じている様だった。

 太腿を伝って踝まで垂れた五十嵐さんの精子が、キラキラと光っている。

 レースのカーテンの向こうから、ギラギラと輝く真夏の太陽が、じっと私達を覗いていた。

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