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【今週のおすすめ本】 働く意味とキャリア形成

3行サマリー

  • 日本のモーレツ社員度は年々下がってきている

  • 中高年は帰属意識、若手は所属意識

  • 質実柔健な会社を求める若者


どんな本か

元実践女子大学の谷内教授の書籍。今年の1月に定年で実践女子を退職されています。本書の他にも「大学生と職業意識」「人事マネジメントハンドブック」など、メタ的な職業意識について研究されている方でした。

その中でも本書は、以下の構成になっており、日本人のキャリア観についてさまざまな視点から考察されています。

第一章 働く目的と職業の意義
第二章 仕事の条件と職業倫理
第三章 企業意識と職業意識
第四章 多様な働き方の光と影
第五章 プロフェッショナル志向の高まりと転職行動
第六章 組織内キャリアとキャリア開発
第七章 ワークキャリアとワイフキャリアの統合に向けて

このnoteでは、特に面白かった第一章に特化してまとめてみることにします。

日本のモーレツ社員度は下がってきている

1987年、新前川レポート(今の伊藤レポート的な立ち位置のやつ)に、欧米との経済摩擦を解消する具体的方法の一つとして、日本人の労働時間を欧米レベルに下げるように経済目標に掲げられた時代がありました。

しかし、そこから30年経った今では、フリーターやニートなど新しい概念が生まれるほど、働き方の概念は変化しています。

「仕事中心化性」という尺度を使うことで、生活の中でどれほど仕事がウェイトを占めているのかを知ることができます。

1982年時点→1991年時点

  • 日本 36% → 33%

  • 米国 25% → 22%

  • ドイツ 28% → 26%

  • ベルギー 30% → 31%

他国に比べ、仕事中心性は依然にして高いものの、欧米と同様に徐々に低下傾向にあり、仕事と余暇の両立志向が強まっていることがわかります。


中高年は帰属意識、若手は所属意識

帰属意識とは、その組織の一員であり、意向に従うという意識の表れ。所属意識とは、その組織に所属しており、意向に従うかは別問題である、という意識の表れです。具体的は違いは以下の通りです。

(出版時期を考慮すると、中高年とは、段階の世代〜しらけ世代、バブル世代。若手とはそれ以降を指します。)

中高年にあるのは、帰属意識で一つの組織に所属し、自分のアイデンティティや生活すべてをそこでまかなおうとする意識です。そこには、自己犠牲や滅私奉公型の帰属意識があり、個人と組織が直接結びつけられるような組織観を持っていると言います。組織という場への忠誠心が高く、就社、マネージャー志向、ジェネラリストというワードで表現されます。

一方の若手が持つ組織観は、所属意識で言い表すことができます。いくつかの組織に所属し、それぞれから得られるものを得る。会社への忠誠心ではなく、仕事への忠誠心。専門性意識が高く、資格やスキルを重要視する傾向にあります。

上司への貢献よりも、自分の損得。会社への貢献よりも、自分の業績。そんな個人主義・自己利益的な考えを持つ人が多いのが、この世代の特徴です。

組織と個人の間に仕事があり、仕事を介して組織に貢献する、パートナーシップ観念という表現がピッタリです。

世代による中心的価値に違いがあれば、世代間で軋轢が生まれるのも当然です。中高年から見た若手は、会社の利益よりも個人の利益を優先する、ガッツがない、何を考えてるのかわからない、飲み会に来ない、そんな宇宙人に見えるでしょう。一方、若手から見た中高年は、組織への以上な忠誠心で考えることを諦め、猛烈に働く、意志のない集団。と見えるかもしれません。

意見の相違があるのは、あたりまえ。普通にしていたら対立するという前提で、お互いの考えの背景や大事にしたいことを丁寧に対話する必要がありそうです。


質実柔健な会社を求める若者

戦後生まれの中高年は、横並び意識が強く、物質的豊かさに価値に重きをおく傾向があります。何もないところから復興させた世代ですので、それもそのはず。そのため、大企業大好き、安定した仕事を得ることが大事。給与の高さや、どんな役職についているのか、それがアイデンティティとなる傾向にあります。

一方の若手は、精神性豊かさが大事な世代。自分の能力や個性が活かせるかどうかが大切です。1991年時点での大学生の就職意識調査では、会社選びの軸は「仕事にやりがいがあるかどうか」でした。これは今も変わらない結果です。

そんな大学生の会社選びは「質実柔健」なんて呼ばれるそうです。
・質の高い仕事ができる
・給与や福利厚生が充実した、実益のある会社
・柔らかい企業風土
・世間のためになる健全な企業経営

そういわれたら、自分の仕事選びもまさにこの軸だったなと思います。


Take away

2007年出版の少し古い本なので、若手の意識といわれても、今の感覚とかなりズレているのでは…と思い読み始めましたが、あら不思議、全然今と変わってない。しかも本書のデータは1991年当時のものが多く、ここ30年の若手の就労意識というのは変わってないということになります。本当かな〜。

30年前といったら、私の母が働き始めた頃です。まだまだ物質的豊かさが価値中心だったように思いますし、横並び意識も強いように見えます。

もしかすれば、今の6,70代が本書の中高年の傾向に当てはまり、その下の50代いわゆるバブル世代と言われる人たちは、育ってきた業界や職種によって職業観に差が出る時期なのかもしれません。たとえば、元リクルートの50代であれば本書の若手傾向に近い人が多いように感じますが、ものづくり業界にいる50代の方は本書の中高年傾向に近く見えます。その下の4,30代になると、本書の若手傾向にかなり当てはまりそうです。

年代でくくることは簡単ですが、あくまでも傾向として捉え、会社ごとや個人ごとにどんな職業観をもっているのかを知った上で会話したいですね。

以上!

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