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役割による視点・視座の違いを感じた瞬間

人間の悩みの9割は人間関係だとも言われます。異なる経験をしてきた人間が集まれば、軋轢が生まれるのは当然です。ボタンの掛け違い、平行線の議論。人と組織の悩みは、ほぼ全てがこれに集約されるのではないでしょうか。

そんな中で、視点や視座を揃えるために、「経営者目線をもって」「顧客目線を持って」なんてことがよく言われて、これに反対する人はあまりいないでしょう。

でも、目の前の人が何を考えているのか、リアルに想像できるか?と聞かれると、全然自信がありません。

結婚して4年経ち、リモートワークで24時間ほぼ同じ空間にいる旦那でさえ何を考えてるのかわかりませんから、同僚やクライアントの真意はもっとわかりません。

現場と経営は根本的に視点が違う

先日とあるクライアントワークの中で「視点・視座」の違いをまざまざと感じる瞬間がありました。

場面は、美容クリニックの売上構成について考えるワークショップ。ワークショップには、現場メンバー複数人と社長が参加していました。

500万円/月の売上を立てるために、客単価1.5万円の施術をベースに、入客数、マーケティング費、変動費、物販売上の構成を、いくつかの制約条件のもと考えるというもの。

それぞれの考えをシェアしてみると、おどろき!現場と経営で考え方のプロセスが全く逆だったのです。

現場メンバーは「店舗のベッド数」と「営業時間」から、実現可能な最大売上金額を出して、その残りを物販売上で補填するというアイディア。具体的には、ベッドが3つ、営業時間が8時間、一人当たりの施術時間が2時間とすると、一日の最大対応数が12名で、客単価1.5万円とすると、一日の売上が18万円。これを営業日でかけて….とボトムアップで作っていました。

社長は、500万円を客単価1.5万円で割ると、○人と入客数が必要で、その人数に来てもらうためには、3%のコンバージョンで広告費用が◯万円….と、500万円ありきの思考プロセスでした。

驚いたのは、現場メンバーがみんな積み上げ型で考えていて、社長と私(一応経営者)が500万ありきプランで考えていたことです。

人は自分の責任範囲の中で思考する

日頃の現場の責任は「店舗を回すこと」です。限りあるベッドを効率よく回転させ、お客様をお待たせせずに、快適に過ごしてもらう、その中で売上を最大化するための接遇トークを学ぶ。

一方経営は、事業目標を達成するためのリソース確保や、戦略の設計実行に頭を使う日々。目標は達成する前提で、達成のためのhowを考えることが仕事。

この責任の違いが、思考プロセスに違いを生み出し、日頃の視点・視座の違いや、意見の食い違いを生み出すのだ、とリアルに実感したのでした。

歩み寄りと実体験

ではこの視点・視座の違いを乗り越えるためには、どうしたらいいのか?今の私が思いつくのは「お互いの歩み寄り」と「実体験」の二つです。

そもそも見えている世界が違うということを前提に、現場と経営、メンバーとマネージャーが対話を積み重ねていくことが第一に必要だと感じます。

さらに、その歩み寄りを深めるために、経営やマネージャーは現場の仕事を時々体験するのが良いでしょう。freeeのCEO佐々木は会社が5,700人を超えても年末や確定申告時期などカスタマーサクセスが繁忙期を迎える時期に、自分も電話対応をして、実際のお客様の声を聞くということを続けていました。当時は彼の現場感覚を忘れてはいけない!という意識の凄さに気づけませんでしたが、経営者として絶対に忘れてはいけない考え方だと痛感します。

逆に現場やメンバーが経営やマネージャーの立場を擬似体験する機会も接客的に設けたいものです。たとえば、経営会議の議事録を見る、経営数字をオープンにする、鞄持ち体験、トライアルでマネージャーに抜擢するなど。人間、やってみないとわからないことが多すぎるものです。

エンパシー(他人の気持ちに思いを巡らせること、他者の靴を履く)を高めるには、経験してみることが一番だと思います。

Take away

  • 想像以上に見えてる世界は違う、アレ?と思ったらちゃんと対話する

  • 見えてる世界が違う前提で話す、私にはこう見えてますとオープンに共有する

  • 現場に答えはある!経営者はときおり現場を体験して、フレッシュな気持ちを取り戻そう

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