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[今週のおすすめ本] パラドックス思考

3行にまとめるには、内容が多岐にわたっていてもったいない本。
特に、人間は矛盾した感情を持ちあわせていて「あいつはダメだ!」という評価は「憧れ」だったりする、というフレーズはガツンときた。すぐに上司部下を否定する人にぜひ読んで欲しい。

3行サマリー

  • 「どうしたいいかわからない」「何が起きているのかわからない」が、「どうせやっても意味がない」を生み出す

  • 人間は矛盾した感情を持つ愛らしい存在である。この矛盾から目を背けないことが変容的学習のきっかけである。

  • 自分の悩みを特殊だと思うと辛くなる。平凡化してツッコミを入れると楽になる。


外的ストレスが「どうせやっても意味がない」を生み出す

現在と未来に対する分からなさが、諦めや自暴自棄を生み出す。
「頑張ってもうまくいく分からない、そもそも何を頑張ったらいいのか分からない。」そんな状況が続くと、人間は次第に無気力になり、「どうせ頑張っても意味がない」と考えるようになってしまう。

様々なクライアントさんに向き合う中で「自主性が低い」「自分からチャレンジをしようとしない」と経営やマネジメントが悩むシーンをよく目にする。メンバーの無気力を作り出しているのは、目標や戦略が曖昧でこの先どうなるか分からない現状だったり、今何が起きているのか分からない透明性が低く情報の非対称性がある環境を作り出している、経営やマネジメントにも問題があるのではないか。

もともと無気力で入社してくる人は少ない。それなりに希望を抱いて入社してくるわけで、どこかのタイミングで「どう頑張ったらいいかわからない」「環境が変わると思えない」だったら波風立てずに、淡々とはたらこう、と諦めの境地に至ってしまうのかもしれない。


人は矛盾した感情を持つ、愛すべき存在である

人間は、自分の中に存在する矛盾した感情に薄々気付いていても、そこから目をそらして、体の良い感情だけを正義とする傾向がある。

  • 夏に向けて痩せたい、けど今は仕事でストレスがかかっているので食べよう!その方が仕事が捗るし

  • あの人ともっと仲良くなりたい!けど緊張するし面倒だから、いつものメンバーで飲みに行ってしまおう

感情の矛盾は決して悪いことではないです。むしろ矛盾した存在であることを受け入れた法が、現実的な解決策がわくものです。

経営学者マリアンヌ・ルイス教授は、現代組織の問題解決に、パラドックスを受容して活用するマインドセットが必要だと言います。
組織リーダーは一貫していることが美徳だと考えられていますが、それことが悪癖で、対立する複数の真実を受けれながら職務にあたる必要があると述べています。

物事の白黒つけないことが、知性だ。という言葉にもあるとおり、それぞれが信じる真実を受け入れながら、それをすり合わせていける胆力とコミュニケーション力が真のリーダーには求められていると感じます。

パラドックス思考の3つのレベル

  1. 感情パラドックスを受容して、悩みを緩和する

  2. 感情パラドックスを編集して、問題の解決策を見つける

  3. 感情パラドックスを利用して、創造性を最大限に高める

この矛盾した思考を受け入れかつすることができる、というのが本書の主張です。まずはこの矛盾した感情・思考を受け入れることが、問題解決のファーストステップになります。受け入れるだけでは何も解決してないじゃないか!と思うかもしれませんが、まずはそこに矛盾がある、と外在化して認識できることは、認識してない状態とは大きな違いがあります。

次に、矛盾があることを認識したうえで、ふたつの矛盾する思考を両立するルトーリーに編集し始めることができれば、それは問題解決の糸口を見つけ始めているということになります。

ちょっと3つ目のレベルは読んでてもわからなかったので、著者の方に聞いてみようと思います笑

目を背けたくなるコンプレックス

幼少期から親に「誰かの役に立つことをしなさい」と言い聞かされて育った人は「誰かの役に立てていない自分には存在価値がない」と信念を無意識に形成する。と言います。これが精神分析学の生みの親であるフロイトが提唱した「無意識」です。

こんな人が職場にでると「自分がいなければ職場が回らない」という使命感を覚え他人を助けることにモチベーションを感じることがあります。これは、他人を助けること自体が目的なのではなく、自分の存在意義を感じるために他人を助けるという構造を作り出すことになります。

もともと善意でやっていたことが、自分の存在意義を示すためだったと気づくことは、本人にとってかなりセンセーショナルな、目を背けたくなる真実のはずです。

抑圧され心の奥底に仕舞い込まれた無意識下の複雑に絡み合った感情のことを「コンプレックス」と言います。

上記の例でいえば、他人の不幸を救済することで幸福感を得るメサイア(救世主)コンプレックスなどがあります。

変容的学習の引き金となるのが、ジレンマとコンプレックス

しかしこのコンプレックスは、変化のエネルギー源にもなるものです。成人発達学のジャックメジローは、大人になってからの重要な学びを「自分のものの見方をかえる、変容的学習」にあると言いました。変容的学習が引き起こされるには、10の学習プロセスが必要だと言います。

  1. 混乱を引き起こすジレンマ

  2. 恐れ、怒り、罪悪感や羞恥心の感情を伴う自己吟味

  3. 想定(パラダイム)の問い直し

  4. 他者も自分と同様の不満感と変容プロセスを共有していることの認識

  5. 新しい役割や関係性のための、別の選択肢の探求

  6. 行動計画の作成

  7. 自分の計画を実行するための、新しい知識や技能の構築

  8. 当たらな役割や関係性による、能力や自信の構築

  9. 新たなパースペクティブ(ものの見方)の自分生活への再統合

特徴的なのは、大人の成長のきっかけが、ジレンマ・カオスにある点です。これは本書のパラドックスにあたります。

抑圧されたリーダーはこうなる

トップダウンマネジメントを手放せないリーダーの多くは、メサイアコンプレックスを抱えている。自分がいなくても現場が回るように権限委譲したいと口ではいっているものの、実は自分がいなで回られると自分の存在意義をうたがってしまうので、心配している。うまくいかないと、やれやれ…とマンを辞して(そんなに待ってないけど)登場するなんてことが起こってしまう。

表面的には「あなたに任せる」といっているが実は「自分なしでうまく解決されては困る」と思っている。この矛盾したメッセージがマネジメントを歪ませている。

悩みを平凡化してツッコミをいれると楽になる

秋山の苦手なフレーズ「ちょっと特殊な経歴なんですけど〜」「うちの会社はちょっと特殊でして」これいう人や会社は大体普通だと思っている。

本書によれば人間は自分の抱える悩みを深刻で特別なものだと思いたがる傾向にあるらしい。こんなパターンで自分が説明されてたまるか!と思うのかもしれない。

その気持ちもわかるけど、あえて自分をパターン化して眺めることで、なんだたいしたことないな!と問題からちょっと距離を置くことができたりするので便利だ。その際のパターンというのが、以下の通り。

  • 素直<>天邪鬼

    • 本心に基づく素直な欲求

    • 本心に反する天邪鬼な欲求

  • 変化<>安定

    • 現状を変化させたい

    • 安定をさせたい

  • 対極的<>近視眼的

    • 俯瞰、対極的

    • 近視眼的

  • もっと<>そこそこ

    • もっとプラスしたい

    • そこそこでいいや

  • 自分本位<>他人本位

    • 自分の視点

    • 他人の視点

とってもとってもよくわかるパラドックスだ。特にわたしは、もっと<>そこそこの間でいつも、仕事するかダラダラするかで悩んでいることが多いし、旦那と喧嘩するときは、素直と天邪鬼の間で揺れ動いていることが多い。

心のそこに潜んでいる感情を掘り起こすための思考軸

  • 反転感情チェック

  • 嫉妬心チェック

  • 承認欲求チェック

  • 優柔不断チェック

  • 制約撤廃チェック

  • 他人視点チェック

なんかうまくいかない、もやもやするなーって時はこのチェックをしてみるのがおすすめ。私は嫉妬心と優柔不断に引っかかってることが多いなって思う。

Take away

自分の中でも、誰かとの間でも、なんか話が食い違ってるなってときは大体どちらかの中に感情・思考パラドックスが起きていることが大半だ。このパラドックスを解きほぐすための方法として、対話があるし、本書で紹介されているようなチェック項目がある。自分の中でセルフトークするときはもちろん使えるし、相手の真意を確認したいときも、本書の内容が頭に入っていると、対話が一段階深まる気がする。

私の場合は、もっと・そこそこのジレンマに陥ってないか、嫉妬心が顔を出してないか?優柔不断になってないか、何を優先したいのか?このあたりを積極的に自分に問いかけていきたいと思う。

以上!

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