Holesを多読用洋書としてオススメしたい理由
先日『Holes』という、Louis Sacharという作家の、ネイティブの児童向け小説を読了しました。
突然ですが僕は英検一級、TOEICは835点です。で、この本、本当に楽しむことができました。
最初は少し物足りないかな?とは正直思いましたが、しばらく読み進めているうちにハマってしまって、気づいたらスキマ時間を活用して最後まで読み切っていた、というのが正直な読後感です。
洋書を多読する人にとってはバイブルと言われる本書。やはり一度は手にとってみたいものですが、一方でどんなふうに多読用書籍としてオススメなのか、が気になっておられる方も多いはず。
多読についてはこれまで何度も繰り返し、その良さを紹介してきましたが、一冊の本を取り上げて多読の良さを考察してみたことはありませんでした。
そこで今回は、本書がどのように多読向きなのか、という点について考察してみることにしました。ちなみに「ネタバレ」のご心配はありませんので、その点は安心してお読みください。
1.英文が難しくないー大量のインプットが可能ー
「今の自分の英語レベルより少し易しめの文章を大量に読む」というのが多読の最大のコツです。
たまに「難しいのを読まないと勉強にならない」というストイックな方もいらっしゃいますが、どちらかと言うと、それって精読に近くなって、多読とはまた別の種類の勉強法になります。
読んでいて楽しい、平易な文に大量に触れる、というのは自然な英語に触れる機会を数多く確保することで、英語力を向上させよう、とりわけアウトプットの質を向上させよう、という趣旨の学習法です。
インプットの量は、アウトプットの質を向上させます。逆に精読が担保してくれるのは文章の読解力そのものであって、生きた英語、とりわけ英会話などのアウトプットに資する部分は実はそんなに大きくありません。
というのは、日本の教育が実に「精読中心」の英語教育戦略を採用していることからも明らかでしょう。日本人は圧倒的に英文に触れる量が少ないのです。もちろん難解な文章に大量に触れられればそれはそれで良い学習法にはなるでしょうが、やはり負担が大きいと思います。
Holesは、大学受験を控えた高校生にもおすすめされることの多い書籍です。つまり英検で言うと準2級〜2級レベルの方が読むのに丁度いい、ということになります(大学受験を控えた高校生が目指すべき英語レベルがそれくらい、ということになっているからです)。
ちなみに、Holesが少し難解だ、と思われた方、ご安心ください。少し難易度を下げれば、いくらでもネイティブ向けの洋書というのはあります。また追って、ご紹介します。
2.1つの章(chapter)が短いースキマ時間を活用できるー
本書には全部で50のチャプターがあります。一つのチャプターは標準サイズの文字表示でおよそ5ページ程度。10分もあれば読めてしまうと思います。
これは忙しい現代人が「スキマ時間」を活用して読みすすめるのに最適です。毎日電車の中で2章ずつ読む、というふうに自分で設定してもいいですし、空いている時間に応じて「今日は一章だけにしよう」とか、「今は時間があるので三章くらいよめるかな」など、自分の英語力と読書スピードに応じて、柔軟に対応することができます。
これが空いた時間に気軽に取り組むことを可能にするための秘訣です。難しい文章だと、なかなかそうはいきません。
最初のうちに、自分がどれくらいのスピードで一つの章を読めるか、というのを確認しておくと、効果的に生活の中に多読を取り入れることができるようになると思います。
3.会話が多い ーネイティブの自然な英会話に触れるー
僕は学習という点から英語に入っていったので、時事問題に関係するものや、以前の職種であった心理学系のボキャブラリーや表現には比較的強いのですが、ネイティブの小学生レベルのカジュアルな会話、というのは本当に苦手で、それが僕が英語のドラマを見るのが苦手な理由にもなっています。
けれど『Holes』には、子供同士のナチュラルな、それでいて「ハリー・ポッター」シリーズのようなスラング満載ではない会話がたくさん登場しますので、僕のような会話的表現にあまり馴染みがないような英語学習者が取り組むには最適な内容になっています。
僕はKindleでこの本を読みましたので、自分が馴染みがない表現などはカラーリングして、後から一気に見返すというふうにして復習していました。
多読というのは、いちいち読むのを止めて意味を厳密に調べたりするような読み方ではありません。ある程度話の流れがつかめている限りは調べ物はあとに回して、とりあえず読み進めていくのがいいです。
「その読み方だと話の筋がわからなくなる」という場合、その本は今のレベルで多読用の書籍として選ぶべきものではなかった、ということになります。この場合も、レベルを一段下げて、別の書籍に取り組むのが良さそうです。
4.話が面白い
何よりこれが一番重要だと思いますが、一番最初に述べたとおり、この本はお話自体が面白いので、ついつい引き込まれていってしまいます。
英語学習が苦痛を伴うものであったり、何らかの忍耐を要するもの担ってしまうと必ずどこかで挫折してしまったり、英語から少し遠ざかったりしてしまうものです。
そして英語にはこれが一番の致命傷で、とにかく英語に触れることがなくなったその瞬間から、英語力というのは徐々に下降し始めます。
しかしながら、例えば多読用として選んだ本なりコンテンツがおもしろいものであれば、その心配はありません。で、そういう意味でも本書はとってもオススメなんです。
もちろん児童書ですので、複雑なプロットやストーリーテリングを期待することはできませんが、英語学習者として触れるのであれば、かえってこれくらいが丁度いいんじゃないかという気がしています。
5.同じ理由でオススメしたいもう一冊「Wonder」
というわけで、本書を多読用の教材としてオススメしたい4つの理由をまとめてみます。
1.英文が難しくない
2.1つの章が短い
3.会話が多い
4.話が面白い
で、この4つを見事に見対しているもう一つのオススメ書籍が「Wonder」なんです。
こちら、映画化もされていますが、まずは一度ぜひ、英語の原文を読んでみていただきたいと思います。このボリュームと相まって、それなりの達成感を伴う読後感を味わうことができると思います。
というわけで、多読用教材としての「Holes」の魅力をお伝えしてみました。
多読用の本が良いなと思うのは、読み終えてももう一度戻ってこれる、つまり再読もそれなりに楽しい点です。
しばらくしてもう一度読んでみると、チェックしていた「わからなかった単語」がわかるようになっていたり、読むスピードが上がっていたりと、自分の成長を感じることができます。
このレベルの英文を大量に読むという訓練は、TOEICのリーディングセクション対策にも有効です。TOEICも同様に、「そんなに複雑でない文章を大量に読む」という能力が試されているからです。
TOEIC800点台レベルの方も、児童書だからと敬遠されずに、ぜひこの機会にHolesを手にとってみてください。きっと何らかの発見があるはず。もちろんそれに届かないレベルの方も一度読んでみていただいて、ご自身に足りない文法的な知識や語彙力をアセスメントしてみられてはいかがでしょうか?
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