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『Outliers』にチャレンジ

outlier (noun) [ C ]
UK /ˈaʊtˌlaɪ.ər/  
US /ˈaʊtˌlaɪ.ɚ/
a person, thing, or fact that is very different from other people, things, or facts, so that it cannot be used to draw general conclusions
(Cambridge Dictionary)

このご時世、毎日1時間程度、英語を多読をする習慣が身について、読書が好きな僕は不謹慎ですがちょっとだけ嬉しい気持ちになってしまいます。

余りある時間を活用して、今は「ピダハン」という言語学の本と、「Outliers」という洋書を読んでいます。この「Outliers」、これまで手にとった洋書の中で、内容の充実度合いはもちろん、難易度、英語など、多読にうってつけの一冊なので、今回ご紹介しようと思います。

副題は「The Story of Success(成功の物語)」なので、巷にあふれる成功のためのハウツー本かと思うんですが、実はそうでは全くありません(もしそうだとすると僕は途中で読むのをやめてしまっていると思います)。

特に以下に当てはまる方にはぜひ一度手にとっていただきたい一冊です。

・英検一級/TOEIC900点以上レベルの方の多読用に
・英検一級/TOEIC900点オーバーを目指す方に
・社会学・心理学に興味がある方に

英語は難しくない、でも骨がある

アマゾンのレビューなんかを観ていると、特に日本人のレビューに多いのが「英語が易しくて読みやすかった」という評価です。

で、実際に手にとってみてみると、実はそんなにシンプルな話ではないということがよく分かります。

確かに、この本には文学的な修辞や小難しいレトリックはあまりありません。複雑なメタファーもありません。むしろどちらかと言うと実証的で、ジャーナリストである著者の正確性を期する表現は、文学的なそれとは対局にあるものです。

では簡単なのかと言われれば全然そんなことはなく、日本で英語の勉強だけを、とりわけTOEIC等の資格試験の勉強だけをやってきた方にとっては少々骨が折れる内容になっていると思います。

その理由の一つが「自然な英語」、とりわけ会話文の中で頻出の句動詞やイディオムです。とりわけ僕も含めて日本人の英語学習者はとかく難しい単語ばかりにフォーカスを当ててしまって、簡単な英単語を使って抽象的なアウトプットをするのが苦手です。

本書が一筋縄ではいかない理由がここにあります。僕は英検一級に合格していますので、本書にでてくる難単語(と一般的に思われているもの)はわかります。でもそれだけでは本書は楽しめないんです。どういうことか?本書に散りばめられている「ネイティブのナチュラルな表現」に慣れていないからです。

I couldn't get a word in edgewise. ...They were smoking pot. ...So basically I took to hiding in the library. (

こういった表現は直接話法の文、つまり会話文でよく出てきます。本文は読めるけど、僕は何度もこの会話文の部分でつまづきました。おかげさまで本当に良い学習になりました。今度アウトプットする機会があればぜひ使ってみたいです。

「精読」で、目指せTOEIC900オーバーレベル

一方で、本書にでてくる「難しい単語」の意味を一つずつ拾っていきながら読んでいく読み方は、中級レベルからもう一段、つまり上級へのブレイクスルーを狙う方にとってうってつけだと思います。

英検準一級/TOEIC800点クラスだと、わからない単語の多さに若干ストレスを感じるかもしれません。例えば…

・He is a little subversive and libidinous.
 ・...an irascible gentleman who lived next door... and the miscellaneous loafers...
・Classic fleet could land the aircraft if the Captain became totally incapacitated.
・You notice on the weather radar an area of heavy precipitation 25 miles ahead.

こういう調子で次から次へと英検一級レベルの単語が出てきます。これらはすべて「パス単英検一級」(旺文社)に掲載されている単語です。

よく「英検一級ででてくる単語は難しすぎるので覚えなくていい」と言われます。確かに日常のアウトプットではこういう単語は使わないのかもしれません(外国で生活してたら使います)。

実はこの本一冊全部が英検一級リーディングセクションのレベルの英文で構成されていると言ってもいいと思います。文体から単語のレベルから、一級の英文はまさにこのレベルです。

レビュアーの間で「易しい」と言われるレベルの洋書でも、実際は英検一級レベルの単語が次から次へとでてくる。これが現実です。そのことをどう考えるかは人それぞれですが、普通に日本で英語を勉強されている方だとついつい諦めてしまいがちなこのレベルの単語が散りばめられている文章を読むことは、必ず学習者に何らかのブレイクスルーをもたらしてくれるはずです。

それでも明快でわかりやすい英文

これまでの記述と矛盾すると感じられるかも、なのですが、それでも英語それ自体はそんなに難しくありません。難しいのは単語とちょっとした句動詞・イディオムだけです。高校レベルの英文法で十分対処することができます。

単語・句動詞の意味はググればすぐに出てきます。Kindleなら、辞書をダウンロードするだけ。タップ一つですぐに辞書をひくことができます。なので読むことそのものに難しさを感じることはないはずです。

著者であるMalcolm Gladwell 氏はジャーナリストです。僕たち日本人の英語学習者にとっては、凝ったレトリックの英文は読みにくいことこの上ないのですが、ジャーナリストの書く英語は総じて事実を正確に伝えようとする傾向があるせいか、とてもシンプルでストレスなく読みすすめることができます。

多読に必須の要素 「内容が面白い!」

そして何より内容が面白い!本当は内容について書きたいのですが、これはネタバレになってしまいますのでここでは控えておきます。

もし、英語力には自身がないけれど中身が気になる!という方がいらっしゃったら、日本語訳版がありますので、ぜひ一度手にとってみてください。

簡単に言うと本書の主題は「人間は環境の生き物である」ということに尽きるのですが、これはまさに社会学や社会心理学の領域のお話で、そういう系統の話が好きな人には絶対におすすめできる一冊です。

余談ですが、この手のお話を「おもしろい!」と思える方には以下の二つのポッドキャストもおすすめです。

こちらは英検一級/TOEIC900点レベルの「リスニング」に最適だと思っています。是非試してみてください。

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