「骨太の方針」を読む(4)原発 PPP・PFI 再稼働へ危険な転換〜すべてがNになる〜

2024年7月11日【2面】


「骨太の方針」は原子力発電について、「原子炉の再稼働を進める」「次世代革新炉の開発・建設」などと明記しています。岸田文雄政権は2023年の通常国会で原子力基本法等を改定しました。
 福島原発事故を契機に「原発依存度を低減する」としてきた従来方針を「原発推進」へ大転換し、原発の運転期間「原則40年」のルールを60年超としたことなどが背景にあります。老朽原発を再稼働して酷使するのは極めて危険です。
 東京電力福島第1原発事故から13年たちますが、原子力緊急事態宣言は解除の見通しが立っておらず、溶け落ちた核燃料(デブリ)の状態は未解明。避難生活を余儀なくされた被害者への賠償や補償は不十分で、未除染の土地も多いなかでの再稼働は、原発ゼロを望む国民多数の思いを踏みにじるものです。
 岸田首相は6月21日の会見で、次世代型原子炉といわれるSMR(小型モジュール炉)の研究開発、実装を検討すると明言しました。しかし、SMRは実用化しておらず、「小型」と装いを新たにしてもコストは高く、事故リスクは避けられず、核廃棄物の処分の見通しさえ全くありません。
 元日に起きた能登半島地震では、北陸電力志賀原発(石川県)で変圧器が壊れて外部電源の一部を失うなど深刻なトラブルが続出し、現行の避難計画が机上の空論であることも浮き彫りになりました。
 世界有数の地震・津波国の日本で、原発の稼働はあまりにも無謀です。原発優先政策を転換し、大きな雇用効果が見込まれ、地域経済の活性化にもつながる再生可能エネルギーの普及こそ最優先すべきです。

民間への移譲

 「骨太の方針」は、官民連携や公的部門の民間移譲、民営化による自治体経営の効率化を進めるPPP/PFIについて「更に推進する」と明記。ウォーターPPPや空港、スタジアム・アリーナを重視して進めるとしています。PPP(Public Private Partnership=官民連携)とは、公共サービスを民間事業者の資金やノウハウで行う手法で、PFI(Private Finance Initiative)は民間資金やノウハウを活用し、公共施設や道路、鉄道・水道などの大規模事業を、企画から建設・運用まで民間委託する手法の一つです。
 新自由主義的な「小さな政府」「企業参入規制の緩和」を進める考え方に基づいており、この制度の活用により、各地で学校、水道、公営住宅などの再編・統廃合や、都市公園の樹木伐採を伴う民営化などが進んでいます。
 「ウォーターPPP」は、上下水道、工業用水道の公共事業に官民一体となって取り組む手法で、政府は今後10年で225件とする目標を示していますが、水道事業の民営化反対の世論を恐れ、説明方法を変えたにすぎません。

公営堅持こそ

 海外では300超の自治体で一度民営化した水道を再公営化しています。フランスのパリ市は、2倍以上に値上がりした水道料金や水質悪化、不透明な経営問題が噴出し再公営化に至りました。
 命の水の安心・安全を守るためには公営を堅持すべきです。
 (おわり。この連載は島田勇登、土屋知紀、森糸信が担当しました)


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