経済アングル問題だらけの森林環境税〜すべてがNになる〜


2024年6月26日【経済】

 職場や自治体から届けられた住民税決定通知書をみて、「森林環境税」という見慣れぬ項目に気づいた人もいるかもしれません。北海道・北見市の読者からも「どんな税か教えてほしい」との投書が寄せられています。
 森林環境税は2023年度末で期限切れとなる復興特別住民税の看板を掛け替えたものです。個人住民税均等割の枠組みを用いて、1人年額1000円を徴収し、「森林整備及びその促進に関する費用」として地方自治体に森林環境譲与税として分配します。
 森林環境税を所管する総務省は「森林には、国土の保全、水源の維持、地球温暖化の防止、生物多様性の保全などの様々な機能があり、私たちの生活に恩恵をもたらしています」と個人の税負担を合理化します。しかし本来、温暖化対策は排出源対策と吸収源対策をあわせることが必要です。逆進性のある一律額での個人負担ではなく、汚染者負担原則に基づき、CO2排出企業が負担すべきものです。
 分配額は私有林人工林面積、林業就業者、人口の3要素で決まります。このうち、人口が林業就業者よりも高く設定されているため、私有林人工林がない都市部にも配分されています。
 総務省は創設の経緯として「林業の担い手不足や、所有者や境界の不明な土地により、経営管理や整備に支障をきたしています」と述べています。それならば、森林を有する自治体が、体制整備や森林整備に活用できるように交付基準を見直すべきです。
 森林の公共的・多面的機能を踏まえれば、森林整備のための安定的な財源は、国の一般会計における林業予算の拡充に求めることが本来のあり方です。
 (清水渡)
 (2024・6・26)

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