波動 解釈変更は放送法の破壊小滝一志〜すべてがNになる〜



                  2023年3月30日【テレビ・ラジオ】

 小西洋之参院議員が公表し総務省が渋々存在を認めた内部文書によって安倍政権のメディアコントロールの生々しい内幕が明らかになった。
 2014年、時の安倍政権の礒崎陽輔総理補佐官が「サンデーモーニングは番組の路線と合わないゲストを呼ばない。あんなのが(番組として)成り立つのはおかしい」などと個別番組を攻撃、「けしからん番組は取り締まるスタンスを示す必要があるだろう」と放送法の「政治的公平」の解釈変更を総務省に執拗(しつよう)に迫る。最後は自分で変更案のペーパーまで作って、ついに総務官僚に呑(の)ませるまでの経過がつぶさに記録されている。
 「言論・表現の自由」を保障する憲法21条、「放送番組は、何人からも干渉され、又は規律されることがない」とする放送法3条などは全く眼中になく、法を踏みにじってはばからない礒崎補佐官の態度は「民主主義国家の政治家か」と驚く。
 礒崎補佐官の説明を聞いた安倍首相が「極端な例をダメだと言うのは良いのではないか」と解釈変更に前向きの反応を示すのも驚きである。
 礒崎補佐官が総務省に初めて問い合わせたのは14年11月26日。直前の11月18日、TBS「NEWS23」にナマ出演した安倍首相は、挿入された街頭インタビューに「(選び方が)おかしいじゃないですか」と強い調子でクレーム。11月20日、自民党筆頭副幹事長と報道局長名による文書「選挙時期における報道の公平中立ならびに公正の確保についてのお願い」が、在京テレビキー局各社に送られ、出演者の発言回数、時間、ゲスト出演者の選定など報道内容について極めて詳細、具体的な要求が書かれていた。
 礒崎補佐官の動きは安倍政権の強権的なメディアコントロールの一環だったことがうかがえる。
 礒崎補佐官の近くにいた山田真貴子総理秘書官は「どこのメディアも萎縮するだろう。言論弾圧ではないか」と危惧した。
 内部文書を公表した小西参院議員は「解釈変更でなく放送法破壊」と指摘した。
 岸田政権は「解釈変更ではなく補充的説明」と言い逃れているが、その論理矛盾には誰も納得しない。高市総務相が答弁した放送法の解釈変更は撤回以外ないのではないか。(こたき・かずし 放送を語る会前事務局長)

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