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お掃除トクさんのルーツ⑤『清掃会社との突然の別れ』

当初はバンド活動をしながら生活費を稼ぐための手段という安易な目的で始めた清掃業のアルバイト。でも、清掃という仕事は発見や気付きの連続。毎日の仕事が本当に楽しくて、とても刺激的で、いつの間にか、清掃の魅力に取りつかれている自分がいました。そんな中、お掃除トクさんにも転機が訪れます・・・。

■清掃会社に勤めてから3年目・・・

アルバイトとは言え、この清掃会社で働き始めてから3年目。この頃になると技術的にも会社から信頼を置かれるほどになり、木部の灰汁洗いや古いタイルの洗浄等、医薬用外劇物指定の薬品を使うような特殊洗浄以外の小規模な現場だったら概ね単独で任される程に成長していました。

清掃職人としてある程度の自信がついてきた時期です。

そんなタイミングになってから、大型工事の量が一通り落ち着いてきたのか、会社で請け負っている仕事量が減り始め、アルバイトという立場である僕は、少しずつ休日の量が増えてきました。

■「この会社もいよいよヤバイで・・・」

当時、この清掃会社では職人を合計6人抱えていました。そのうち20歳前後のアルバイトは僕含めた2名だけで、それ以外は40歳以上の職人さんばかり。65歳以上のベテラン職員も数名在籍していました。

相対的に現場の数が減ってきているのを肌感覚で感じてきた職人達の間で、「そろそろこの会社もヤバいんと違うか?」という噂が立ち始めていました。心なしか、親方の表情からいつもの笑顔が少なくなっているようにも感じていました。

当時在籍していた職人の中で20歳代は僕ともう一名。まだまだ先の可能性がある年齢です。更に言えば、当時の僕は清掃業を本業にする気持ちは全く無くて、あくまでも音楽活動を軌道に乗せるまでの『繋ぎ仕事』でした。

仕事量が減ってきて「この先どうなる・・・?」という心配の声が職人の口から出てくるようになったこの状況で、僕は決心します。

もしもこの状況で職人の数をひとり減らすとしたら・・・?

■そして親方に胸の内を伝えた結果・・・

仕事量が減っている中でも職人の給料は確保しなければならない。そんな厳しい状況で少しでも負担を少なくするために、職人の数を減らさなければならない・・・。そんな考えがどうしても頭から離れなかった当時の僕は、とうとう一大決心します。

「やはり辞めるとしたら、この仕事を本業として考えていない自分しかいない・・・!」

そして、ある日親方が事務所で一人でいる時に、

「・・・もし今しんどいようでしたら、僕、辞めましょうか・・・?」

と伝えました。

「お前は何も気にせんでええねん・・・!」という言葉が親方から返ってくる事を期待していたというのが本音ではありましたが、そう伝えた結果親方から即答で返って言葉は、

「・・・そうか!辞めてくれるか・・・!」

・・・よほど苦しい状況だったんでしょうね。そういうわけで、退職を伝えた当月いっぱいでこの清掃会社を退職する事になります。

(つづく)



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