父は、おしゃべりだ。
先日、実家へ帰った。
私は、実家から800kmほど離れた場所にいる。
この時代、ありがたいことに帰ろうと思えばいつでも帰れる。
いつでも帰れるから、いつも帰省を見送る人もいるが、私は違う。
両親と、あと何度会えるのだろう。生きているうちにできる親孝行はいつでもしたいと思っている。
口ではこんな大層なことを言っているが、私は口下手だ。
行動で示すより他ない。だからこそ、帰るのだ。そして一週間、家事をする。お掃除をする。
時たま、父とランチへいく。
彼は去年までうつ病に苦しんでいた。
ずっと寝込み、薬の副作用でいつでも顔がむくんでいた。
それでいて、私を含む子供たちにはそれを打ち明けずにいた。
しかし、母親から筒抜けだ。
私は父のソレをみているのが辛くて、だけど何も声をかけることはできず
その時もまた、早くよくなれ。と願いながらおそうじをしていた。
発症の原因は一つじゃなく、色々あるのだろうと思うが、特定はできず
そして、治った理由もまた、わからなかった。
今元気であることが、いつまで続くのかは誰にもわからない。
過去に一度、治ったと思っていたら一年後にまたトンネルに入ってしまったことがあった。
その時は、上げて落とされたからか、私自身もとてもショックだった。本人が一番しんどかっただろうと思う。
なので、いまのこの状態が、またいつかいきなり変わることもあるかもしれないと、覚悟をしている。それはいつでも受け入れなければならない。
その上で、今の幸せを噛み締めることにしている。
父は、とても、おしゃべりだ。
家の中でも、出先でも、よく喋る。
特に、出先では、娘である私の自慢をしたがる。
その度に私は「少し静かにして」と遮るのだが、
恥ずかしい顔をしつつ、また話は続く。
失笑しながらも、私は嬉しい。
やっぱり私はお父さんっ子だな。
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