“それ”がいる森、犬鳴村。ホラー映画入門。

「“それ”がいる森」を観てないんよ。森に潜む正体不明の“それ”が人を襲う。その正体とは? 人々の命運は? っていうあの映画。けど、“それ”が何なのかは気になるから、ネタバレ感想なんかで正体自体は知ってるんよ。

んで色々と感想見てみたんやけど、どうもあんまり評価良くないみたいなんよね。

で、おっちゃんコレ思ったんやけど、「“それ”がいる森」ってホラー映画あんまり観たことない、それどころか映画自体あんまり観たことないっちゅうひと向けのB級ホラー入門みたいな作品なんちゃうかな。いや、ホンマにそういう意図があるんかどうか知らんよ? 知らんけども。

有名な俳優さん、リングの監督、たくさんのプロモーション。自分から情報集めてなに観るか決めるホラー映画好きやのうて、なんとなく情報に触れた人が「ホラーあんま観たことないけど行ってみよう」的な流れに向いてる気がするんよね。

感想とか見てる限りやとホラーっちゅうジャンルの中でヒネったことしてるわけでもないし、怖さもそんなに強くないらしいしで、それこそホラーあんま観たことない中高生とかが友達と行ってみる、とかにちょうど良さそうなんよ。

ちなみに今やってる「カラダ探し」も似たような建て付けなんやけど、入門編とかそんなんナシで普通にJホラーとして描かれた漫画を普通にホラー映画として作ってるから、またちょっと違う立ち位置やと思う。

そもそもこういうこと考えるようになったきっかけが「犬鳴村」なんよ。おっちゃんもそれなりにホラー映画観てきたし、同じくホラー映画好きの友人と観に行ったんや。で、終わってから「面白かったけど、まあまあ、あの、ね。悪くないけどまあ。高島礼子と高嶋政伸ってやっぱスゴいね」みたいな、制作関係者が見たら激怒してぶん殴られてもしゃあないような上から目線のしたり顔で感想を言い合ってたんよ。

その日は高校生グループもわりと居たんやけど、そっちからはだいたい「面白かった!」 「怖かった」ちゅうてるのが聞こえてきたんよね。
それが正直な感想かは知らんし、そんなに聞き耳立ててたっちゅうほどでもないんやけど、そこでおっちゃん、ハタと気づいたんよ。「これ、ホラー映画の入門編みたいな作品なんちゃうか」って。

考えてみれば映像的にも内容的にも怖がらせ方的にも、あんまホラー映画に接してない人やったら「ちょうどええ塩梅」なんよ。恐怖除去バージョン、やっけ? あれも話題作りとか突飛なことしようとかやなくて、ホラー無理っちゅう人にも少しでも触れてもろて、ホラーの雰囲気だけでも味わってもらいたい、っちゅうことなんちゃうかな、と。

そうやって間口広げてハードル下げて少しでも多くのホラー初心者に観てもらって、そこからハマる人が出てくればいい。そういうことやったんちゃうかな、と。

そもそもシューティングにしろSFにしろ、ジャンルのコアになる熱心なファンの高齢化って悩みがあるやん? ライト層は一定数おってもなかなか母数が伸びひんし、そこからさらに熱心なファンになる数なんてもう……。ホラー映画も近い状況が見えてきてるんちゃうかと思うんよ。

清水監督も中田監督も長年ホラー映画を撮る中でそういうことは考えてきたやろうし、ベテランになった今、ジャンルに対してできることとして、多少なりともそういう、ホラー映画の間口を広げてジャンルを再拡大する、っちゅう意識があるんちゃうか。その結果が「犬鳴村」や「“それ”がいる森」なんちゃうかな。まあ、完全におっちゃんの想像なんやけど。

けど、そうやったとしたら、なかなか難しい部分があるんよ。

ゲームやったら「初心者でも遊びやすいシステム!」やとか、そもそもeasyモード用意するとかで敷居を下げたり、本も専門書やら実用書なら「はじめての原子炉設計」やとか「誰でもわかる生成文法入門」みたいに、タイトルで初心者向け、入門編てアピールしたりできるやん?

せやけど映画とか、まあ小説やアニメ作品なんかもそうやけど、そういうものってタイトルとかアピール文とかで入門編やで、初心者向けやでってあんま言われへんやん? 言ってもいいんやろうけど、そうすると作品の可能性を狭めてまうし。どっかのインタビューや宣伝の場でそんなようなことチラッと言う機会はあったとしても。

一方で、SNSはともかく、レビューサイトや口コミサイト、あるいはブログなんかで感想書く人ってどちらかというと中級〜上級者が多い気がすんねん。それっておっちゃん個人の感想なんやけど、な?

すると、中級〜上級者が初心者向けを初心者向けと思わず観て評価する形になって、そら好評とはなりづらい。それでも高評価な作品はあるやろうけど、初心者フレンドリーになればなるほど、中級〜上級者に評価されるのは難しいんよ。

すると、初心者からすれば充分に楽しめる作品でも「ネットであんまり評判良くない」みたいな、なんとなしの空気感と評価が定着してしまうんちゃうかな。特にそのジャンル好きな人のほうが公開後早めに観に行って感想書く割合多いやろうし。

これはもうホラー映画、っちゅうか映画そのもの在り方やプロモーションの仕方からしてどうしょうもない、誰が悪いでもない不幸な事態やねんけど、なんかこう、どうにかならんもんかなぁ、と思うんよね。

入門書のレビューで中級〜上級者が「こんな初歩的な内容を今さら書かれても困る」とか「これくらい最初に学ぶレベルでしょ。これで1600円はありえない」とか書いてたら、なんかちゃうやん?
「最初に読むにはちょうどいいのでは?」とか「説明がもう少し事例を多く交えて書いてあると初心者は理解しやすいと思う」とかやったらまだしも。

そもそもこの2作が入門編的な感じなんかよう知らんねんけどね。

……うーん。今回は珍しく真面目な書き方してもうたなぁ。

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