金木犀
「ねぇねえ、今のはなんの香りなの?」
「ん・・・あぁ、これは金木犀やなぁ・・そうか、もう季節やね」
9月も半ば、せっかくの休日
朝早く起きて、世田谷の裏路地を二人で散歩する。
「金木犀ってこんなにいい香りなんだね。私、一番好きかも」
彼女と出会ったのは、ちょうど僕が上京したての頃、
彼女も青森から職場の転勤で上京したばかりだったかな・・
季節はもう11月だったから、
金木犀の香りには、まだ出会っていなかったわけだ。
「青森では金木犀が咲いてるところ、見たことなかったからね」
「それやったら、これからは毎年、この時期は早起きして散歩しよっか?」
まだ、それほど往来のない澄んだ空気の中を、
二人で手を繋いで歩いているなんて、
夢のような気分やなぁ・・
「そうだね。これからは、ずっと一緒やもんね」
そうやって微笑む顔を、金木犀のあまい香りが包み込んでいく。
「え?なにか変だった?関西弁使ってみたからかな?なんで笑うのよ」
「いやいや、気のせいやって。そんなん笑うわけないやんか。」
そんなの幸せやからに決まってる。なんて言える訳ないやろ・・あほやなぁ
「いつか家買ったら、お庭に金木犀植えよっか?」
「それええなぁ。ほんまええこと言うわ」
謙虚な幸せやなぁ・・
私の為に注いでくださった想いは、より良い創作活動への源泉とさせていただきます。こうご期待!!