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自称経験豊富なキャンパー

自称経験豊富なキャンパーの場所取り

灰色と水色のマーブル空に湿り気がさほど気にならない過ごしやすい梅雨入り前のGW真っ只中の沖縄。ダラダラと過ごしたかったが、誘われて仕方なくキャンプに参加した。場所は明かせないが綺麗な海だった。

現場につくと三つのテントが張られたのみで、浜にはまだまだ空きがある。私を誘った自称キャンパーは わざわざ浜の南側の遠い場所にテントを張ると言った。理由は、他のキャンパーに取られる前にそこを押さえることでドンチャン騒ぎができるのだそうだ。これがキャンパーなのか、と思った。

「あなたはキャンプなんてしないからわからないでしょう。私は経験豊富だから私の言うことを聞けば間違いない。」

自称キャンパーはそう言って車から荷物をおろし、その最適な場所まで運ぶように指示した。

私はどっちかというとキャンプは嫌いだ。特に砂浜でのものは。
私とて全くキャンプの経験が無いのではない。むしろ、テントなんか無い野営の浜泊(私の造語で浜で数日暮らすこと)は多いほうだと思う。私が若かった数十年前だから出来たことではある。釣りが上手いやつが投げ込みでタマンを上げ、その間に海に入り捕れそうな魚を銛で突いたり、いればサザエを採ったりして食料(酒の肴)にして適当に集めた材木の切れ端や枯れ木の枝をモクマオウの落ち葉を使って火をつけ焼いたりしたものだ。

しかし、今はそうはいかない。浜を汚さぬよう大概は直火禁止だ。また、キャンプがしやすいように実際に綺麗に整備されている。自然の中で日の上り下がりと共に時間を過ごすキャンプになってるのだろう。で、私はそれに否定的ではない。むしろ肯定的だ。が、前述したようにキャンプは好きではない。

自称経験豊富なキャンパーのキャンプ準備

自称キャンパーは荷物を下ろし移動すると直ぐにテントの設置に取り掛かった。まて、まだまだ車の側には移動しきれてない荷物が沢山あるのだから数往復してそれを運ぶのが先だろ、と言いかけたが止めた。様子をみて楽しむことにしたのだ。

しかしこの楽しみには労力が必要で、私は片道100メートルくらいある浜の南側まで五往復して やっとこさ荷物を運んだ。自称キャンパーはテント設置のみ。

そうこうしているうちに、自称キャンパーが誘った他の家族連れがやってきたので、その家族連れの道具移動も手伝い、テント二棟にバーベQセットが設置された。家族連れは「いや、いいですよ」と遠慮してたが、片道100メートルもある浜の南側へ道具を数往復する子持ち家庭を黙って見ている心にはなれないのが普通の精神だとおもう。
そんなこんなで移動も終わったので、浜の上にある駐車場へ車を止めに行き、公衆トイレで用を足しタバコに火を着けた時に自称キャンパーから電話がはいる。

「どこで何をしているんだ。みんなが動いてる時になぜ居なくなるんだ。」

ああ、やっぱりな。いつかそんな事言ってくると思ったぜ。実は、私は だいたいの人達がしらない自称キャンパーの性格を知っていたから予測できたのだ。

自称経験豊富なキャンパーのBBQ

浜におりると大きな音量でミュージックをながしていた。まあ、他のキャンパー達のテントとは離れてるが、この音量はさすがに届きすぎるだろう。一番近い他キャンパーテント置まで推測60メートル。ためしにそこまで歩き聞いてみた。うるさい。しかも、その他キャンパーはミュージックは一切流していない。読者諸君、いかに大きな音量だったかがわかるだろう。我々のテント設置地は浜の南側端なのでそこからさらに南側は荒磯となっていて釣り人も数人いる。さぞかしイライラしたことだろう。

自称キャンパー達はアルコール類を飲み始めた。午後五時頃だった。自称キャンパー(以後、自称省略)はホームセンターで買ってきたという薪に火を放ち、炎が上がると、なんと薪の上に直にヤカンと鍋を置いた。敷石も吊り下げ台もなく、直ににだ。ヤカンと鍋は一瞬で真っ黒毛。それでも私は何も言わない。やがて真っ黒なヤカンを「あちっ!あっ、あちっ!!」と軍手をはめた手でつかみ、コーヒーに注いでいた。そのコーヒーカップはすでに砂が張り付いている。

いよいよ肉を焼きはじめてギブアップした。仕方ないので私が焼いた。そこで気が付いた。食料を持ってきすぎなのだ。肉類、魚介類、缶詰め、レトルト、あわせて10アイテムもある。酒類だけで、ビール、泡盛、ワイン、焼酎ハイボールと4種類&ソフトドリンク。もうキャンプでない。こういうのはペンションですることだ。

まあ、びっくりはいいとして皆で肉を食べながらアルコールを飲んで、うるさいミュージックが鳴っていた訳だか、私がついに愛想つかすこととなる事件はここから。

たくさんの食品を余らせて食事タイムも終わったとき、キャンパーは火の中に空になった段ボールや食料が入っていたトレイやビニールを投げ込み燃やしはじめた。

私はさすがに注意した。いや、しなきゃならないだろう。火はパチパチと高く上り、火の粉はテントや三メートルくらいしか離れていないアダンの木に届いているのだから。
キャンパーは逆ギレ。

みんなキャンパー達はそうしている。持ち帰るゴミをこうして減らす。ビニールも紙も燃えれば同じ灰になるから問題ない。」

そう言いながらアダンの枯れ枝をどんどん放り込んでいき火は二メートルは上がっている。アダンに燃える移ったり、テントに移ったりして火事の危険もあるから止めてくれ、といっても聞かない。

「あなたはなにもわからない。私はキャンプ経験豊富だし、ライセンス持ってるキャンパーもみんなそうしている。」

そう怒鳴っている。
私は諦めた。
真っ暗な浜を歩き坂道をのぼり、すこしあるかなければ行けない駐車場で車中泊をした。

自称経験豊富なキャンパーの朝食と帰り支度

翌朝、浜におりるとキャンパーはまだ寝ていた。見るだけで片付けが大変とわかるキーパーや砂だらけのコップやら皿。可愛そうに黒く汚れた砂。家族連れも疲れているように見えた。すこしずつ片付けしながら夕べのカレーを温めて、子供達に与えようとしたとき、キャンパーが目覚めた。

「卵やいてカップ麺を食べよう」

と言い、私がせっかく火の始末をしやすいように小さな炭火で止めてあったバーベQコンロの中にヤカンを置いてもう少しで温めるカレー鍋を退かそうとする。もうみんな疲れてるのにまたアレコレしようとしてる。さすがに私も疲れた。もう車へ戻り近くのコンビニエンスストアでパンを買ってたべた。

一時間くらいたって浜に戻ると、帰る準備に取り掛かっていたので昨日と同じく砂に足をとられながら何往復もして荷物を運んだ。キャンパーは往復するのが嫌らしく、家族連れの一人に頼んで車を駐車場から持ってこさせていた。残った食料が痛ましい。私は自分の車で帰路についた。

キャンプブーム考察

コロナ渦のなかでキャンプがちょっとしたブームらしい。私が書いたようなキャンパーはごく少数とは思う。キャンプは家とは違う布一枚隔てれば自然、といった中での生活を楽しむものくらいがいいとおもう。

結局、自然に馴染めてないキャンプは長く続かないだろう。このキャンパーはキャンプ経験豊富と言ってるが実はここ2ヶ月くらいのもんだ。
キャンプブームが終わって、似非キャンパーに振り回される人達が減ることを願う。

ちなみにわたしが書いた浜の場所は地域の人が直火禁止と看板を立ててあった。

おわり

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