見出し画像

人械#5-2

重い腰を上げ、マスクを着用したうえで玄関へ向かう。

「どちら様ですか・・」

玄関の戸を開けると男友達の結城がいた。

「よっ!元気してるか?」

こいつはいつも通り元気を振りまいている。

「この姿を見て元気だと思うなら、お前は病気だ。」

だんだんと立っていられなくなる。

足元がおぼつかない。

だめだ。倒れる―

倒れることを覚悟しながら抗えない重力に身を任せた。

・・・痛くない。

「ったく。あぶねえ。無理すんじゃねえよ―

って俺のせいか。わりぃ。運ぶから肩につかまってろ。」

どうやらとっさに抱えてくれた結城のおかげで

倒れきるまではいかなかったようだ。

「たすかる・・・」

「よわよわじゃねえか。歩けるか。」

「あ、うん」

肩を借り、ベッドまで運んでもらう。

寝転がりながら結城に訪ねた要件を聞いた。

「ああ。俺ん家さ、マンションの一室でさ

一人になれる空間がねえんだ。

だから一人暮らしのお前ん家に遊びに来たんだよ。

部屋綺麗だし。環境的には最高なんだわ。」

そうだった。こいつん家、兄第多くて部屋がないって前に言ってたっけ。

結城は「はあ。。。」とため息をつくと

立ち上がって言った。

「遊べないことはよくわかった。今日なんも食ってねえだろ。

作ってやるからキッチン借りるぞ。」

どっどっどっと結城は数メートル先のキッチンへ向かい、

冷蔵庫を開けた。

中身を見るや否や彼は再び深い溜息を吐いた。

それもそうだ。僕は自炊をしない方で冷蔵庫なんて

飲み物くらいしか入ってないのである。

「買い物してくるから。安静にしとけよ。」

「お、おう。」

鞄を持ち玄関へ向かう彼を見送ろうと体を起こそうとすると

「安静に!」

怒られてしまった。

「鍵借りてくぞ。」

そういって結城はスペアのカギを持って出て行った。

ガチャン。

鍵が閉まる音が妙に大きく聞こえた。

正直、結城が来てくれて安心した。

あいつは中学のころからの付き合いで

なにかと僕に気を使ってくれている。

申し訳ないなと思いつつも胸が熱くなるのを感じた。

やはり一人は寂しいものだ。

孤独をむさぼる時間は遅く感じる。

時計は動いているのだろうか。

そう感じるほどには。

頭がぐわんぐわんする。

視界がゆがむ。

ぐにゃりとゆがんでいく。

この感覚前にも―


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?