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町田樹のフィギュアスケート解説、心地よすぎる……〜スケートカナダをみた〜

こんにちは。

フィギュアスケートはいまグランプリシリーズまっただ中ですね。
私は仕事とオタクがバタバタでなんとか仕事の合間に息絶え絶えでみているので、フルで見ることはできておらず……
我が家のレコーダーが頑張って録画してくれたテレ朝チャンネルのダイジェストをみて今年のシーズンをスタートさせています。
オリンピックが終わったばかりでも近すぎる訳でもなくて、落ち着いたような、でもやっぱりギラついてるシーズンを感じています。

さて、先日やっとスケートカナダをみることができました。
スケカナには私の推し先週である友野一希も山本草太もチャジュンファンも渡辺倫果も出ていて、本当にめちゃくちゃいい……全部放映して……

そんな中、町田樹の男子解説が本当にとてもとてもよくて最高だったので、全部を観れたわけでもない、なんなら放映された分も観てない部分ありますが、これからも町田樹解説が増えるように感想を綴っていきます。

1、情報が豊富で、ほしいタイミングにくれる

独特の語彙と紡ぎ出されるスケートと競技者への理解が心地よすぎます。
きちんとプログラムを予習して、どんなプログラムだと感じているかを言語化、そしてそれを感じられるポイントをきちんとその前に「ここですが」と言ってくれるのがとてもありがたいです。
正直、録画でもしてる私みたいなオタクにとってはあとで見返すことができるけれど、そうでないお茶の間の人にとっては「いまのところ〜の表現で」と言われてもよく分からんのです。
それを、ちゃんと音にはめて「アップダウン」とか「この後のエッジワークですが」とか言ってくれるの本当にすごくて。
スケートと競技者へのリスペクトときちんと責任をもって解説をする、という意気込みがすごく伝わってくるのがありがたいです。

それから、各選手の昨シーズンや今シーズンのこれまでの試合でのジャンプの成功率などをきちんと分析して、そのジャンプが選手にとってどういう意味を持つのかをきちんと解説してくれるところもよかったです。
得点が高いならそれはもちろん決めたいジャンプ、でも選手もいろいろなことを考えてジャンプを選んでいます。
それをきちんと伝えてくれる解説者ってありがたいです。

それから、必要でない情報をきちんと削ってくれるのもいいです。
正直、いまフィギュアスケートをラジオで聞くことないですし、ジャンプの種類とか曲名とかそういうのって画面に出てるわけで、視聴者としては必要な情報ではなくなっているわけです。
そういう情報をいままで言ってたから流れで言うのではなく、情報の取捨選択をしてくれているのがありがたい。
GOEだって速報で出ていて、「高いGOEが出ている」のは誰でもわかるわけで、それが「いつもの事だから手堅く決めた」のか「いつも以上にいい」のか「ここで勢いに乗れた」なのか、選手目線で解説してくれていて本当にいいなと思いました。

2、スケーターの心をきちんと伝えてくれる

これ、解説なの?ってなるかもしれないんですが、正直視聴者からしたらなんでこんなに転んでるのか、とか、なんでこんな顔してるのか、とか、そういうのって分かりにくい部分なんですよね。
それを「氷が固すぎて滑ってしまった」とか「調整が上手くいっていない」とか、ちゃんと伝えてくれる、それだけではなくて、このジャンプは綺麗に決めたい、とか、このジャンプは挑戦のジャンプです、とか、もう失敗はしたくない、とか、選手だったからこそできる、そこに「いる意味がある」解説をしてくれていてすごくよかったです。
正直技名言ってきちんと降りたのかとか、そんなことアナウンサーでも今どきできることで、それはアナウンサーの技術が上がってきたからというのもあるんですが、それならばもっと「スケーターである」意味のある解説をしてくれたら、って思うことが多々あったので、彼の解説って本当に血が通っているなと思うんです。
時々「もう後がない」とか「もう得点は期待できない」とか、一見厳しく聞こえるようなことを言うこともあるんですが、それは彼が「自分がその立場だったらこう思う」というのをアウトプットしてくれているからで、つまり競技者と同じように頭の中でいろんなことを考えているからで、本当にいいなと思うんですよね。

彼がスケーター目線から外れる時って、だいたいスケーターに寄り添っているときで、彼ならまだフリーで挽回できますとか、最後まで戦う意思をなくさなかった態度に感動したとか、そういう競技者を褒める言葉があるときなんですよね……
そういう「解説としての自分」と「スケーターとしての自分」をうまく使い分けて解説してくれているのがとても心地よいです。

3、音楽の捉え方が美しい

解説内で彼がお話する音の捉え方、表現がとても美しくて、綺麗で、そこがとても好きです。
スケーターが音をどう捉えて、どう表現しているかの情報と、彼がこの曲のこの音楽をどう捉えているかを、シンプルではない、けどしつこすぎない文字数の中で表現するために、彼のどれだけの語彙の中からその言葉を選んできているんだろう……
私が好きな友野選手のフリースケーティングについて、彼は「単調に繰り返されるピアノの主題と音色をスケーティングで可視化していくプログラム」と表現していました。
(記憶で書いているので正確ではないかもしれません。)
この言葉を聞いた競技者本人が、スケオタが、どれだけ嬉しいか。
ただ曲名を説明するだけでなく、どういう意識で滑っているのかを知れることは、スケートを知らない人にとってもスケートがどういう競技かを知るのにとてもいいと思います。
ジャンプやスピン、ステップといった技術面ばかりが注目されがちな競技ですが、フィギュアスケートって、氷の上に図形を描く競技が発展してるんですよね。多分。
これだけたくさんの要素がある中で、フィギュアスケートの芸術の部分を惜しみなく伝えてくれる、そんな解説だと思います。

4、冷静で的確な言葉が出てくる

氷上の哲学者、という肩書きをほしいままに、冷静に丁寧にスケートや競技者と向き合っている人だなと感じています。
きっと彼の頭の中でたくさんの言葉やイメージや情景が浮かんでいる中で、早口にならないように丁寧な口調で、柔らかく優しく語る彼の口調が本当に心地よいです。
彼がそういうスタンスで解説をするからなのか、実況のアナウンサーも極めて冷静に入ってくれており、緊迫したシーンで叫ばれることもなく、集中力が切れることもなく、落ち着いて見ることが出来ます。
確かにそういう実況も盛り上がっていることがわかっていいのかもしれませんが、私は落ち着いて自分の解釈も含めて楽しみたいタイプなので、彼の実況とアナウンサーの落ち着いた話し方がとてもありがたく感じるのです。

今年もまた始まってしまった、この忙しくも楽しいシーズンに、解説という形で彩りを添えてくれる町田樹さんに最大限と感謝と敬意を示してこの文章を締めたいと思います。
彼のスケーティング、表現、解釈、全てが美しく愛しく感じるので、どこかで彼のスケーティングをみられることを期待し、楽しみにしています。

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