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声優ライブオタクが競馬場で泣いた天皇賞(秋)

そもそもどうして競馬にハマったのか

 自分は声優オタクである。結構前から声オタの素質があったが、ラブライブきっかけで二年ぐらい前に声優オタクとして完全に染まった。
ラブライブにはまってからはナンバリングライブにも行き、アーティストとしてデビューしていたキャストの個人ライブやFC限のイベント、さらにはそのキャストさんと一緒にコラボしていた作品外の声優さんの活動も追いかけるようになっていた。
そんなオタクが何故競馬場に行くようになったのかというと、「推し声優の影響」「府中が近かった』という本当になんでもない理由だった。

 自分の推し声優の一人に「相良茉優」という方がいる。ラブライブ三作目「虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」というユニットのメンバーで、毎週配信を行っている方だ。こちらの相良さんが過去配信内で「ウマ娘のガチャをする」「自分が好きな馬 (ソダシ)がでてるレース結果を見る」ということをしており、フェブラリーSで万馬券を当てていたこともある。

一周年の時にファンの方が企画した記念レースもやっていた。(地方はそれぐらい自由なのはなんとなく知っていたがびっくりした)

 そんな相良さんやウマ娘にもラブライブにも出演されている前田さん、鬼頭さん、徳井さんをみて自分もハーフアニバがでたあたりからウマ娘をDLしてチマチマやり始める事に。
ウマ娘のゲームシステムは自分に合っていたのでどんどんのめり込んでしまい、こんどはウマ娘の声優さんも追うようになっていた。
 そんな中、川崎競馬と声優の前田佳織里さんと上田瞳さんがコラボするという情報を目にする。コラボ記念でお二人が実際に競馬を楽しむ配信も行うという事でその手のオタクだった自分は初めて競馬をちゃんとみることになるのであった。

川崎競馬、いいですよね(という寄り道)

川崎競馬さんはなんというか、「オタクに優しい」ところが結構ある。
自分の毎月楽しみにしている配信番組『川崎競馬STL』にはグラスワンダー役の前田玲奈さんやゲストでキタサンブラックの矢野妃菜喜さん、マルゼンスキーのLynnさん等々、様々な女性声優やタレント、スポーツ選手やアナウンサーが出ており、更に相羽あいなさんがメインMCを務めてゲストに内田秀さんや山崎はるかさん、山本希望さん等様々な声優がメインレースで実況をする声馬チャンネルという番組も毎月行っているぐらいオタクの福利厚生が手厚い。

ちなみに十一月のSTLと声馬はひなきちゃんとほーみんとLynnさんがゲスト。初心者から上級者まで楽しめるようになっていてとても面白いので見て欲しい。

そんなこんなで競馬中継を見始めた自分。船橋競馬場ではスーパークリーク役の優木かなさんやLynnさん、インゼルサラブレッドクラブの一口馬主を番組で始めた「あつまれ!ささもり!(カレンチャン役の篠原侑さんがMC)」等声優と競馬のコラボが増えたことで様々なレースを見るようになり、TVで一度も見なかった重賞レースの中継も見始めた。結果的にウマ娘のおかげもあって実況中継や競馬にハマったフォロワーがドバドバ垂れ流す競走馬の名前や専門用語もある程度わかるようになった。

そして初めての競馬場へ

時は進んで日本ダービーの日。初めて競馬場に行くことになる。
何故日本ダービーかというと、この頃推しアニメや推し声優のイベントもなく、開催される東京競馬場は比較的近くてウマ娘や声優のライブ前にWINSとして下見はしていたのでちゃんと開催日に行こう、という流れになったのだ。
近かったのに行くまで全く意識してなかった府中。いつもは新宿に行くまで通り過ぎる駅の一つだったのでこんな近いところで降りて歩いていくとは思わなかった。
降りて歩いてみて気付く。おじさんや大学生ぐらいの若者が同じ方向に歩いていくのを。その光景を自分は「イベント会場に行くオタク」と重ねていた。
自分もスマホを見ながら正門前まで行く。QRコードを読み取り、本日のレープロを手に取る。
メインレースまでに時間はあったのでまずは腹ごしらえ。この時は内馬場にあるゲソ天そばをたべたがとても美味しく、なんだかんだ今でもここに来たらゲソ天そばか鳥千の唐揚げになってしまった。

内馬場のそばばっか食べてる。ここと鳥千の唐揚げ以外においしいところあったら情報提供お待ちしてます(他力本願)

そして途中のレースの馬券を買いつつターフィーショップへ。ライブグッズ物販の金額で頭がマヒしている自分はあまりの安さに色々と買ってしまうことが多い。何より現役馬のアイドルホースは買わないと再生産されない可能性がある事をこの後思い知ったので財布もユルユルになっているのだ。
そんなことをしつつメインレースが近づいてきたのでパドックへ。フォロワーが既に競馬デビューしていて有益な情報を先に聞いていたのもあってパドックについたころには手遅れになったりメインレースの馬券を買おうとして長蛇の列に並ぶということをしなくなったので初見で慌てることはほとんどなかった。
実際に近くでみる競走馬はとてもでかい。重賞を幾度も勝ち抜いた覇者が最初に目にする競走馬だとは思わなかったが、あまりにもでかさに驚いてしまった。そしてジョッキーの方々が実際に見ると対照的に小さく見えて二重に驚く。この一人と一頭が組み合わさって人馬となるのだということはこの後メインレースを見て思い知ったのであった。

早めにパドックを抜けてゴール前に向かう。指定席ではないので程よく見えそうなところを探す。メインレースなのもあって既に混んでおり、メインレース前には歩けないほどには混んでいた。
東京競馬場は日本のイベント会場(と言っていいのかはわからないが)でも最大のキャパを持っており、今回のダービーでは6万を超える人数が来ていたらしい。ライブオタク的には東京ドームや京セラがフルで5.5万人なのでそれを上回る人数規模だ。
 競馬というコンテンツのデカさを思い知った自分は重賞レースの度に大人数の観客を見るとワクワクしてしまう。大体万は超えるのでちょっとしたドームでのライブ規模を手軽に体験できるようなものだ。
そんなことを感じつつレースの時間に。出走前に行われる出走馬のコメント、鳴り響くファンファーレ。万超えの観客が鳴らす拍手や手拍子。これらは瞬時に「ライブ開始前にメイン曲と合わせて出てくるメンバー紹介」「ライブ開始前に流れるメイン曲のインスト」「曲に合わせて手拍子を行うオタク」「会場前に注意事項を話すキャストのMC」に変換され、自分の中で高ぶる気持ちを抑えられなくなってきていた。
ゲートに入るまでの時間はあっという間だったが長かった。そして落ち着いたかと思ったら瞬時に開くゲート。馬が走る、走る。ダービーは左回りの2400m。最初に前を走っていく競走馬の疾走感。あっという間に目の前を通り過ぎていく感覚は初めて「ライブ現地」を感じたときと同じ感覚だった。
そしてレースは終盤。ラストの直線で観客の叫びが響く。自分は馬券を握りしめて見守るだけだったが終わるまでは長く感じていた。
馬がゴールを通り抜け、順位が決まる。賭けが当たった客は喜び、外れた客はそのままパドックに向かったりそのまま帰っていく。
自分の馬券は当たっていた。ただ、当たってお金が戻ってくる喜びよりも自分が少しでも信じた馬が入着したり勝つことがこんなにも嬉しいとは思わなかった。
 そして「競馬」と「ライブ」でこんなにも合致するものが多いという気付きとどうしてウマ娘は「ライブ」があるのかという定番の疑問の答えが自分の中で出たような気がした。
こうして競馬にハマってしまった自分は出張のついでに園田、川崎、笠松といった地方に行ったり中山やまた府中に行くようになるのであった。

更に時は流れて……

そして10/30。天皇賞(秋)の開催日。ダービーの翌週にあった安田記念は行けなかったが行くことができたスプリンターズSでは自分の推し馬だったファストフォースが入着してとても嬉しいものがあった。しかし、今年の天皇賞(秋)は更に気になる馬がいた。
それは パンサラッサ である。

パンサラッサという名前を見たのは去年の福島記念で、その時はこの馬の経緯が云々、というのは全く調べてなかった。たまたま競馬中継を見るようになって色んな競馬を調べてるうちに引っかかったのだ。このときは逃げ馬ってこんなにペースが速いんだなという単純な感想しかなかった。

自分はウマ娘だとカレンチャンとスマートファルコンが好きだ。結果的に史実もかわいいカレンチャンと地方も中央も勝ってきたスマートファルコンも好きになり、ウマ娘も馬も関連グッズを買うぐらいにはハマっている。
そんな二人(二頭)の史実を調べるうちに関連する項目にも興味を持つ。大井競馬、ダートレース、スプリンターズSやJBC、そしてロードカナロア。ウマを知る前も有名馬は名前だけはかるく知っていた(マキバオーや海の大陸NOAを過去に読んでいたのも大きいと思う)ので競走馬を知らなかったわけではないが、ウマ娘を知った後に一番興味を持った非実装の馬はカナロアだった。

という経緯もあり、前述したファストフォースやパンサラッサは応援するようになり、レースでもカナロアの血が入っている競走馬は気にして見るようになった。

10/30、天皇賞(秋)へ

10月末の天皇賞(秋)。また東京競馬場でG1が見れる上にパンサがいる時点で行かない理由がなかった。直前まで予想を考えつつ、仕事を済ませて昼過ぎから入場した。
もう既にダービーで体験していたので規模には慣れている。ただ、昼の時間で既にパドックはぎゅうぎゅうになっていたので入場する時には二度見してしまった。
いつも通りの店でご飯を食べつつメインレース前に障害コースへ向かう。
競馬には「馬場開放」という実際に走っているコースに入ることができるイベントがあり、今回は障害コースが解放されていた。
障害コースの芝はとてもふかふかで深く、座った瞬間に足が沈んでしまう驚きがあった。先日ハイジャンプで見れたオジュウチョウサンはこんな深い芝と障害を乗り越えて十年以上走ってきたんだなと。

ふっかふかで気持ちいいしモニターでかいし最高。これでライビュしたら最高だな~

寄り道をしつつ早めにパドックで待機し、メインレースの時間までレープロを読む。正直に言ってこの時までずっとパンサを信じ切れていなかった。
パンサは中山記念、ドバイターフと勝っていたが、直前の宝塚記念と札幌記念では1着は取れなかった上に今回はイクイノックス、シャフリヤール、ダノンベルーガ、ジオグリフとあまりにも強敵が揃い、札幌記念でパンサを倒したジャックドールもいるという状況で、いくら内枠を取ったパンサでも大きすぎる壁だった。
そんな状況下だったのでパンサの応援馬券と三連複を買ってはいたが正直またダメだろうな、という気持ちでパドックを眺めていた。
パドックからでてくるマリアエレーナ、カラテとそしてパンサラッサがでてくる。続いてポタジェにダノンベルーガ、ジオグリフと注目馬が続いて撮影する方々のシャッター音が鳴り響く。
自分もそれぞれの馬の調子を見つつ、記念に写真を撮る。後ろから「シャフリヤールとダノンベルーガかなぁ」とか「今回こそはイクイノックス」とか「逃げるならジャックドールが安定」と色々と各々の予想が聞こえてくる。皆『勝って欲しい』という願いをぶつけにきてるのだから思い思いの予想をするのは当然だ。
ただ、パンサの名前や番号を聞くことは当然多くはなかった。そんな不安を抱えつつ、パドックを眺めていると急にパンサが首を振る。俺はやるぜと言わんばかりに見せつけるパンサを見て、気付けばそんな不安はどっかに行ってしまった。
『パドック見ても馬券は当たらない』と騎手の方々も言うし自分も正直なんもわからないけど馬が見たいから見ている。ただ、こんなやる気満々の馬をみて信じないというのは嘘だ。ここで貫き通してくれるのが

『推し』

だと別界隈でオタクとして学んできた直感がそう告げていた。

その時のパンサラッサ。気のせいかも知れないけど自分にはやってやるという意思を感じた。

レース本番

気付けば出走馬がいなくなるまで見てしまったので着いた頃にはゴール前はスレスレまで人でいっぱいになってしまっていた。流石にそこから掻き分けて進む気はなかったので少し背伸びしてモニターを見た。落ち着く間もなく出走馬の紹介が始まり、ファンファーレが流れる。六万を超える観客が行う拍手と手拍子。正直リズムはバラバラだけどその規模の大きさで圧倒されるしはじまる前の手拍子というのはやはり気分が高揚する。
全ての馬がゲートにおさまり、ゲートが開く。パンサとジャックドールが前に出る。ここまではまぁ順調かなとおもっていた。
だが、パンサがどんどん前に出る。大逃げのパンサが前に出ること自体はいい。しかしその足は止まらず、ジャックドールさえも突き放してその距離はどんどん開いていく。4コーナーを通る前にはモニターにパンサしか写ってない状態だった。
この異様な光景にはパンサに賭けていない人もざわつき始めていた。そして自分は震えが止まらない身体に対して拳を強く握って堪えながら

「負けるなパンサ!! 逃げ切れパンサ!!」

気付けば叫んでいた。
こんなご時世なので声を出すのは御法度なのはよくわかっていた。ただ、堪えられない気持ちが口にでてしまっていた。
パンサはひたすら逃げる。しかし最後の直線では距離は少しずつ縮まっていた。叫ぶ観客。自分も全てを解き放ったかのように身体を震わせ、溢れる気持ちをパンサをぶつけた。

「夢の続き」、ではなく「『推し』の始まり」


ゴールイン。最後の最後で差し切ったイクイノックスがパンサを倒した。
パンサは2着。1着ではなかったがパンサラッサは全て持てる全力を振り絞ってあのようなレースを見せてくれた。そんなパンサに満足していたのでそういった悔しさや嫉妬はなかった。
しかし、レースが終わったのに身体の震えも溢れる涙も止まらない。声優やアイドルのライブで推しのパフォーマンスを見たときと同じく身体が感動のオーバードーズを起こしているのだ。
結局落ち着くこともなく、未だに狂ったようにあのレースを見て泣きそうになっている。
おそらくこれからも歴史に残るレースになるのだろうがこれは自分の中では『夢の続き』ではなく『推しの始まり』になるのだろうな。


『推し』は『誰か』ではなく『推し』

ちなみに今回のパンサラッサの1000m通過タイムは57.4秒。これはかの大逃げ馬サイレンススズカが同じく天皇賞(秋)で叩き出したスコアらしい。パンサラッサは『令和のツインターボ』と呼ばれることがあり、中山記念でも言われていた。
個人的にはこういった比較をするのは好きではない。確かにスズカみたいな大逃げやターボみたいなアイドル性はパンサにもあるとは思う。ただそれを受け継いでいるかといわれるとそうではないし、何より「パンサラッサはこの後スズカみたいに故障してしまうのではないか」と負の側面までこじつけられてしまう事は良いとは思わない。
サイレンススズカに何があったか、調べればいくらでもわかるしウマ娘でも描かれているので不安になる気持ちはよくわかる。だけど自分はその"瞬間"を見ている世代ではないので見ている世代に比べたら込み上げてくる感情はそこまで大きくはない。
スピリチュアルな話だがそういった世代外の杞憂は言霊として実現してしまうかもしれない。
なによりパンサラッサのことが好きな人は『サイレンススズカのように』『ツインターボのように』大逃げをすることは期待しても『サイレンススズカのように』故障したり『ツインターボのように』大敗してほしいという気持ちは当然ないだろう。アイドルや声優でも結成◯年毎にそれぞれのキャストに不幸が起きるという噂がでてくる時があるがそういうのと同じぐらい不毛だ。
パンサはレース翌日も元気そうな様子で安心してはいるがまだまだレースも控えている。そういった杞憂は心の中にしまっておくべきだろう。

最後に

推しに出会えることができて本当によかった。やっとフォロワーが競馬に通うようになった理由を理解できた。パンサのこれからは見ていきたいし次こそは大逃げをぶちかまして勝って欲しい。競馬からウマ娘に入った人、良ければ11/5、6ではじまるウマ娘4thライブも見て欲しい。
それから、
競馬、やめらんねぇ~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


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