彼にとって、自分自身をえぐるのは刃を研ぐ作業と一緒なのだろう。
生きることは草薮を薙ぐこと。
他人が馴らした道を歩けない者は、鬱蒼とした緑の薮を進むしかない。
切れる得物は持ち手をも傷付ける。
それでも彼は生きるしかない。
自分を傷付けるほどに彼の周りは拓けてゆく。