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「選択肢の幅」 プレミアリーグ第22節 アストン・ヴィラ vs マンチェスター・シティ マッチレビュー

試合結果

試合結果:AVL 1 vs 6 MCI
得点者:18′ マフレズ(MCI)
    24′ マフレズ(MCI)
    28′ アグエロ(MCI)
    45+1′ ジェズス(MCI)
    57′ アグエロ(MCI)
    81' アグエロ(MCI)
    90+1' エル・ガジ(AVL)
場所:ヴィラ・パーク
主審:ジョナサン・モス
スタメン:下図
紫がアストン・ヴィラ 水色がマンチェスター・シティ

第22節 vs Aston Villa スタメン

<前半> 〜「静」と「動」の両方で〜

 チームの主力が相次いで怪我による離脱をするホームのアストン・ヴィラと、長期離脱中だったラポルトとサネがついにトレーニングに復帰して久々にフルでメンバーが揃いつつあるシティ。そんな両チームによる一戦である。試合展開はシティがボールを握る時間がほとんど。というわけでまずはシティのボール保持をみていこう。

シティ ボール保持 × アストン・ヴィラ ボール非保持

 解説のベンさん曰く、ここ3試合のアストン・ヴィラは5バック(3バック)を敷いているとのこと。ヴィラはこの日も5バックを採用する。フォーメーションは5-3-2。この冬に加入したドリンクウォーターはアンカーに入った。

 これに対して、シティは3-1-6のようなフォーメーションをとる。5バックに対して6トップを置くことで前線での数的優位を得ようという考え方だ。第8節のウルブズ戦でも同じようなフォーメーションを採用したシティだが、その時は右サイドでの旋回が行われていなかったためにウルブズの強固な5バックに対する攻撃が停滞していた。これについては、第8節終了時にもレビューを書いているので、それを見ていただければよくわかるだろう。

https://note.com/oshibe_mancity/n/na5793bb974b9

 そのウルブズ戦と同様に左ではSBのメンディが大外のレーンに陣取って幅を取り、この日左WGに入ったジェズスは内側のレーンへ。そして本来なら左サイドの内側のレーンに入るD・シルバが中央のレーンに入る。ヴィラの中央のCBに対してアグエロとD・シルバを合わせた2人で2vs1を作った。一方の右サイドでは、マフレズとデ・ブライネとカンセロとが立ち位置を変えながら三角形を形成する。3人のうちの1人は、右サイド内側のレーンの低い位置でサイドチェンジ等の時のボールの供給場所となっていて、それが3-1-6の3の右側ということである。3といっても明確な3ではなく、ポジションチェンジをしながらそのうちの一人がそこに入るという仕組みであったため、ウルブズ戦の問題は解消できたと言える。

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 このような立ち位置をシティがとったため、ヴィラの選手らのマークには混乱が生じる。シティの最終ラインには後方の3枚に加えてロドリもいるためヴィラの2トップに対して4vs2。その数的不利故にヴィラの中盤の選手らはプレスをかけていいのかダメなのかわからない状態になっていた。アンカーに入ったドリンクウォーターは後方のD・シルバが気になる一方でロドリも気になってあやふやな立ち位置を取る。左CHのフーリハンも、ボールを持つカンセロを自由にしたくはない!けど背後のデ・ブライネにもボールは渡したくない!となってどっちにつけば良いかわからなくなっていた。

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 6トップを置いて中央での数的優位性を生かす必要がシティにはあるわけだが、後方での配置上の優位性からライン間のスペースは広大なものになる。加えて、流動的にポジションチェンジをするから、ヴィラの選手らにはもはや守備における「基準点」がなくなってしまった。というわけで、前線中央での数的優位は簡単に生かせる。前進時の出口となるフェルナンジーニョやカンセロがライン間にポジションを取るデ・ブライネやD・シルバに楔をさすこともあれば(図中パターン1)、大外で幅を取るメンディ等に一度預けてから再び中央のD・シルバへパスすることで数的優位を生かすというパターン(図中パターン2)もあった。

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 この優位性を生かして、シティは前半だけで4点を取ることに成功。シティが3点目を決めた時点でヴィラサポーターがぞろぞろと帰っていくシーンは、シティに対してなす術なしというこの試合を象徴していた。

アストン・ヴィラ ボール保持 × シティ ボール非保持

 そんなこんなでシティのボール保持の時間が圧倒的だったため、ヴィラがしっかりボールを握れるのはシティがシュートを外してゴールキックになった時ぐらいとなる。

 GKのニーランはヴィラの第3キーパーであるらしく、この日がリーグ戦初出場。ゴールキック時はリスクを下げるべくロングボールを選択する。ロングボールの狙いはエルモハマディとジェズスがマッチアップする部分。セカンドボールが自陣側にこぼれても、CBが回収できるように設計されていた。

 ヴィラのビルドアップ時は中盤3枚のうちの1人が高い位置をとって3-4-1-2となる。それに対してシティはCBがボールを持ったら前プレを開始。後方のCB3枚に対して3トップがつき、WBを切るようにプレスをかける。ビルドアップのサポートをするMF2人にはIHがつくような形を取った。ボールと同サイドのWBにはSBが出て行き、逆サイドのSBは最終ラインに加わって数的優位を担保する仕組みになっていた。

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 ヴィラの前進の手段は基本的にはCBからのロングボールである。ロングボールにおけるターゲットはこの日CFに入ったエル・ガジ。シティの前線のプレス隊をある程度前に出させたところでロングボールを蹴り、シティのIHの背後のスペースに落としてMFが前を向くという方式をとっていた。実際に何度かこのやり方でCBの背後をつくことができていた。

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 しかしながら、そのロングボールを蹴る選手がCBであったこともあって、ヴィラの全体の重心は重め。ゴールまでの距離は遠く、シティのDF陣にカバーされてしまう。チャンスメイクをするにまでは至らなかった。

 明確なチャンスを作りきれなかったヴィラは得点を取れず。配置上の優位性を獲得しつつ、流動的なポジションチェンジを行うシティのボール保持に対しての策を取ることもできないまま、0-4で前半を終えた。

<後半> 〜諦めと修正〜

 4点差がつき、前半でほとんど勝負がついてしまったこの試合。ヴィラの方もすでに諦めムードで、修正を加えることのないまま後半を迎える。

 修正がないため、シティの後方の選手誰みる問題は解決されず。ヴィラの5失点目は、カンセロにフーリハンがアプローチするものの背後のデ・ブライネへのパスで交わされてしまい、間延びしたライン間を使われたことがきっかけ。ヴィラは前半と全く同じ原因で失点を喫する。

 その後のシティは基本形こそ変わらないものの、ボール保持のために重心はやや下がり目に。攻撃こそ最大の守備と言わんばかりのボール回しで相手をいなす。一方のヴィラは、64分頃にフォーメーションを5-4-1に変更。これ以上失点しないようにするために後方の人数を増やそうという魂胆だったのだろうが、守備の基準点が明確になったわけでもないため変化はおとずれない。

 試合はそのまま終盤へ。シティのトドメの6点目はプレッシングから。一度は自陣へ押し込まれたものの、ヴィラがCBへバックパスをしたことにより、シティは前プレを開始。前半と同様、3バックに3トップがつく形でCBハウスのミスを誘発。ボールを回収したマフレズからのパスを受けたアグエロが、プレミアリーグ通算得点記録でアンリを抜いたこの試合を祝うゴールをニア上に沈め、ハットトリックを達成した。

 試合終了直前にシティはPKを取られて失点を喫するも、それと同時に試合は終了。1-6でシティが勝利した。

あとがき

 シェフィールド・U戦で見出した対5バック策の3バックを今節では採用しなかったシティ。復帰直後のD・シルバをフルで使いたいとすれば、狭いスペースでも正確な技術を発揮できるという武器を生かせる、中盤の高い位置での起用が可能な4-3-3の方が正解だろう。

 逆に言えば、選手起用次第で5バック対抗策はいくらでもアレンジできるのである。ここ数試合ではそれぞれの対抗策の強度の高さを披露した。「シティ対策」として5バックを置いたところで、シティ側にとってみればその対抗策はいくつも手中にあるわけで、試合までの一週間で準備するというのはかなり難題だと言える。「シティの選手層が厚い」というのは、あらゆる「シティ対策」の手への対抗策の「選択肢の幅が多い」ということを意味しているのではないだろうか。

 D・シルバやストーンズなどの怪我をしていた選手らはぞくぞくとこの試合で完全復帰するとともに、長期離脱中であったラポルトとサネもトレーニング場に戻ってきている。D・シルバのラストイヤーを飾るタイトル奪取に向けて再びメンバーが揃い始めているシティの行く末は、明るいものになりつつあるだろう。


トップ画像引用元
https://twitter.com/ManCity/status/1216396974938869760?s=20

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