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ずるいヒト

彼女と別れてから、約1ヶ月が経った。

僕の日常から、彼女だけがすっぽり抜け落ちた。

「おはよう」と「おやすみ」を交わす人は、もういない。

予想はしていたけれど、そんな生活に僕はだんだん慣れてきてしまった。

だけどまだ、ふとした瞬間に彼女のことを思い出す。

綺麗な景色を見ると、つい写真を撮ってしまう。

何枚も何枚も。

共有する人は、もういないのに。

付き合っていた頃、頻繁に更新されていた彼女のSNSが、僕と別れてからぱったりと止んだ。

そして最近、彼女のSNSが久しぶりに稼働し始めた。

ダサくてキモいのを承知で言うが、正直なところ、気になって気になって仕方がない。

だけど僕は、彼女のSNSを見れなかった。

正確に言うと、見たいけど見たくなかった。

色んな感情が交錯して、結局のところ、見ないで終わった。

そもそも、フォローを外さないことが問題である。

逆を言うと、彼女が僕をフォローから外さない理由は明確だ。

彼女は、僕と友達に戻りたいと言っていたから。

彼女の方からフォローを外す理由は、彼女の中には存在しないのだ。

きっと彼女は、僕がいなくても、充実した日々を送っているのだろう。

なんとなくだけど、想像できる。知らんけど。

一方僕は、そんな現実をまだ受け入れたくないのだろう。知らんけど。

便利な時代が、今の僕にとっては不都合だ。

ボタンひとつで割り切れるのなら、いっそ楽なのだけれど。

うじうじモードから、どうも抜け出せない。

別れが「今」なのか「近い未来」なのか。

どちらを選んでもエンディングは同じだったはずなのに、僕に選択肢を与えた、ずるい人だ。

ただ、別れのタイミングが違っただけ。

自分を守るための、彼女の無責任な優しさだったのだ、と冷静になった今では、はっきり分かる。

それでも嫌いになれない僕を、どうか解き放って欲しい。

僕が逆の立場だったら、相手にそんな選択肢は与えないだろう。

「嫌われたくない。」

そう思ってしまうのは、仕方がない。

なんというか、人間らしい感情だ。

だけど、時には嫌われる勇気も必要。

相手のことを思うなら、最後は突き放し、そして突き放された方がいい。

考え方は人それぞれだろうけど、僕はそう思っている。

その人が、1日でも早く前に進めるように。

振り返ってもいい。

でも、立ち止まらず歩けるように。

実際に僕は、今までそうやってきた。

おかげさまで、元カノから呪いのメールをいただいた経験もある。

呪いは恐ろしかったけれど、それでも僕は、悪者に徹した。

「嫌われても仕方ない。」

むしろ、嫌いになられて当たり前だ。

自分から別れを告げる時は、そう覚悟している。

正解はないのかもしれないけれど、できれば彼女にもそうして欲しかった。

別れを告げるのなら、振り返りたくなくなるくらい、とことん嫌いにならせて欲しかった。

ひとつだけ確かなことは、別れとは痛みを伴うということ。

振った側も、振られた側も。

ダメージの大きさは、人それぞれなのだろうけど、愛した分だけ痛い。

「さよなら」ではなく「またね」と言った彼女は、やっぱり、ずるい。

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