柔道2段・24歳・157センチ

自己紹介のとおり、柔道や格闘技をやっている女性の抑え込みや絞め技は本当に抜け出せないのか、苦しいのかに昔から興味があり、SNS等で知り合った方によく技をかけていただいてます。

備忘録第1弾は、最も丁寧に柔道のすごさをアピールしてくださった女性(尚さんと名乗ってました)との思い出を。

彼女のスペックですが、24歳の柔道2段で中学から大学まで10年間柔道部。団体戦メンバーとして全国大会出場経験あり。157センチで現役時代は48キロ級、大学卒業と同時に柔道からは離れていらっしゃるとのこと。

会う前にこんな質問をさせていただきました。

Q.尚さんは48kg級とのことで女性の中でも小柄な方だと思うのですが、仮に一般男性(標準的な体型をイメージ)と以下の条件で試合をした場合の勝率はそれぞれどれくらいでしょうか?
1.初めから尚さんが抑え込んだ状態でスタート
2.体育の授業でやるように背中合わせで開始する寝技のみの対決
3.立ち技ありの通常の柔道

A.かなり長くなってしまいましたがお答えします。なお、今はもう体が動かないと思いますので私が現役の時を想定しています。
問1、100%勝ちます。寝技は抑え込みがしっかり決まる前に脱出するのが鉄則です。従って、抑え込んだ状態からのスタートであれば一本取れると思います。

問2、80%勝ちます。体育の授業のような背中合わせスタートの寝技って、実は部活の練習ではあまりやらないんですよね。この場合相手の背中を取りひっくり返すというプロセスが必要になりますが、個人的に寝技が不得意なので勝率が下がります。

問3、100%勝ちます。柔道経験の浅い方は大抵体に力が入っているので重心移動がわかりやすく、少しフェイントを入れると面白いほど引っかかってくれます笑

人によって得意な相手苦手な相手があるので完全に私の場合という回答になってしまいましたが、こんなところでしょうか。
同じ成人男性でも150cm台で60kgのように重心が低い人は投げにくくて苦手ですね。背負い投げのような担ぎ技が得意な自分としてはある程度身長のある相手方が比較的得意ですね。

私とは20センチ近い身長差があるにもかかわらず、100%と断言されたため高まる期待。早速一通りかけていただくことに。なお、いつもそうなのですが、柔道着を持っていないため、襟のついた私服かバスローブ、場所はホテルというのが定番です。

まずは、一番基本ということで袈裟固め。「今のルールだと20秒で一本ですけど、それだとノーチャンスだと思うので昔と同じ30秒でいいですよー」と開始前から自信満々の尚さん。技の形に入り、タイマーのセットも完了し準備オッケー、彼女の声とともに30秒スタートです。

始まった途端に首と胸に先ほどまでとは全く違う圧迫感がのしかかります。50キロない女性なのにこんな風に感じるんだと感心しつつも、脱出開始。右腕が彼女の左脇に固定されている状態だったので、まずはそれを引き抜こうとするものの、抜けない… ならば、と首を固めている彼女の右腕を押し退けようとしても、自由になっている左手だけでは力が足らず… 無理なのか?とやや焦り始めたところで、尚さんから「10秒経ったよー」と涼しい声。

両足が自由であることに気付き、身体の回転を試みたところ、少しだけ浮き上がる彼女の身体。これだ!と思い、両足と左手を使って全力で自分の体を回したところ、思惑通りに彼女がバランスを崩し、慌てて手を離したため、無事に抑え込みがとけました。時間は20秒かからないくらいといったところでしょうか。

素人である私に抑え込みを外され、しばし呆然とする彼女。「今のはまぐれ!」ともう一度袈裟固めをかけてきますが、先程のでコツを掴んだ私は同じ要領で全て脱出。やはり体重差が大きいようです。

「袈裟固めじゃ難しそうだから次の技にしよう」ということで、横四方固めに入ろうとした彼女でしたが、柔道着のズボンに比べて掴みにくかったようで、早々に断念し、私に馬乗りになって縦四方固めの体制に。先ほどの袈裟固めよりも体重が分散されているのか、こちらの方が動きやすく、開始5秒ほどで両足・両腕を使って体制の入れ替えに成功! その反省を活かしてなのか、次は足を絡めた状態でスタートしてくる彼女。両腕だけでひっくり返すのは無理でしたが、足を解いてからは先ほどのリプレイ。相当悔しそうな尚さん。

私「他の抑え込みにする?何かある?」

尚さん「あるけど、原理は今までのと同じだし、多分返されると思うから絞め技でもいい?」

私「抑え込みにも絞め技にも同じくらい興味があったので、大歓迎! 何の技をやるの?」

尚さん「肩固めって知ってる? 抑え込みに分類されるけど、絞めみたいなもんだから。柔道の絞め技は基本的に相手の襟を使うんだけど、バスローブじゃ十分に効果が出るか怪しいからとりあえず肩固めで」

先程の縦四方固めと同じような体勢から、私の右腕を持ち上げて彼女の頭の右側へ持っていき、両手を私の首の後ろに回してガッチリと握ったようです。

尚さん「それじゃあ絞め始めますねー 素人を落としたくないので、無理だと分かったらちゃんと参ったしてくださいね? すぐ外すんで。」

私「これならさっきの縦四方固めと同じような感じで外せそうだから大丈夫です!」

尚さん「どこまでその減らず口たたけますかね? いきますよ!」

彼女が両腕に力を込めて絞めを開始します。途端に結構な圧力が首にかかり、思わず変な声が出ます。華奢な女性にこんなに力があるのかとかなり驚きましたが、驚いたままではいられないので脱出開始です。

まずは先程、抑え込みを外した時と同じように、絡み付いてくる両足を解きます。次にそのままひっくり返そうとしたところで、突然、彼女が馬乗りから私の右半身側に移動してきました。首への圧力が増し、少し焦りますが、まだまだ耐えられるレベル。首より下が自由になったので、こちらから彼女の身体に足を絡めにいきます。

何度目かのトライで足がかかると苦しさが半減したので、あとは彼女の腕を解くだけ。左手しか使えないので苦心しましたが、時間の問題と判断した彼女が自ら解除したので、無事に脱出に成功したと言えるでしょう。

袈裟固めから抜け出された時と同じように悲しげな反応の彼女。自信がある技だったようで何度かかけなおされましたが、全て同じ要領で脱出。

尚さん「柔道着の有無に技の完成度が左右されにくい技だから流石にショックが大きい… 抑え込みが100%としたらこっちは120%勝てる思ってて落とさないかだけが心配だったから…」

私「ブランクが大きかったんじゃない? 現役の頃ならもう少し筋力とかもあっただろうし。」

尚さん「そうだけど、それでも素人にここまで効かないなんて…」

私「相当へこんでるね。何か他の技ある?」

尚さん「じゃあ関節技でもいい? 十字固めとかだったら極まれば体重差や筋力差があっても外せないはずだから。」

私「テレビとかみてても関節技は抜け出すイメージ湧かないから難しそう。痛いのは怖いから、ゆっくりやってね!」

仰向けに寝転ぶと、私の左腕を抱え両足で挟み込む尚さん。この時点で既に結構痛いです。そのまま体を倒していき、彼女の背中が床についたあたりで強烈な痛みが。慌てて彼女の足をタップ!

想像していたとおり、関節技は形に入られたらノーチャンスでした。初めてギブアップを奪え尚さんもご満悦の様子です。

尚さん「参ったさせたら身体の調子が良くなってきた気がするので、もう一回絞め技いいですか? さっきとは別の技で!」

私「全然いいよ! 今度はどんな技?」

尚さん「格闘技観戦好きなら三角絞めって知ってます? あれってもともと柔道の技なんですよー 柔道だと抑え込みへの繋ぎで使うことが多いのと、よっぽどの実力差がないと絞めの形にはならないんですけど、一時期結構練習したんでそれなりに自信あります。」

私「知ってる知ってる! 一番かけられてみたかった技!」

柔道派生とはいえ、柔道でオーソドックスな三角絞めをしている動画を見たことがなかったので、彼女ができることに大興奮! と同時に、脚の力は腕の3倍と聞くので、肩固めであの威力ならもしかしてヤバいかもと少し緊張します。そんな私を尻目に、両足を動かしてイメトレしている尚さんはかなり気合が入ってる様子。

尚さん「覚悟はいいですか? 絶対肩固めより苦しいですからね。今回は参ったはしなくてもいいですから。」

私「参ったしないと落とすまでやるってこと…?」

尚さん「違います! 素人落とすのは嫌ですから。三角なら顔が見えるので、落ちそうになったらこっちから外すってことです。でも個人的には、ちゃんと負けを認めてもらいたいですけどね。」

私「ちなみにこの技で落としたことはあるの?」

尚さん「練習の時だけですけど何度かあります。私の技術じゃ落とすまで結構時間かかるんで、相手の子は相当苦しかったと思いますよ。」

私「相手は男もいるの? そんなに我慢するなんて。」

尚さん「全部、後輩女子です。私もそうでしたけど、先輩の練習に付き合う時は基本、向こうが離してくれるまで我慢するんで、感覚掴むまでは落としちゃうことが多いんです。たまに分かってて落とす最低な人間もいますけど。」

私「結構な修羅場くぐってますね… 今度こそ抜け出せないんじゃないか心配…」

尚さん「無理だと思いますよ? 2段階目まで絞めたらすぐにタップしたくなりますよ。」

私「2段階ってどういうこと?」

尚さん「まあ、受けてみれば分かります。そろそろ絞めますね!」

よほどウズウズしてたのか、絞め「ま」くらいのタイミングで両足に力を込めてくる尚さん。状態としては、彼女の足の間に私の首と左腕が挟まれています。

想像通り、肩固めよりも強烈な力がかかり、絞められ始めた瞬間はクラッときました。とはいえすぐに威力に慣れたので脱出開始です。まずは空いている右手で足をこじ開けようとしますが、尚さんの足が筋肉質な事に今さら気付いた以外の収穫はなし。

ならばとボブサップをイメージして、立ち上がろうとしますが、彼女の両手と体重の掛け方?でバランスを崩されうまくいきません。

尚さん「最初は心配でしたけど、そんなに動けるならもっとちゃんと絞めても大丈夫そうですね! いきますよー」

と声がしたかと思うと、両足で挟み込む力が増し、かけられ始めと同じレベルの苦しさに。流石に少し苦しくなってきました。それでも何とかバランスを取り戻し、立ち上がる試行錯誤を再開します。彼女が妨害してくるということは立ち上がることは脱出ルートで間違いないし、2段階目でこの威力ならまだギブアップするほどではないとの思いからです。

そんな私の考えを見透かしたかのように…

尚さん「もしかして、これで2段階目ならまだまだ耐えられるとか思ってます? そうなら諦めてください。今からのが2段階目ですから。」

と言うや否や、更に足に力を込めてくる彼女。こちらの体感も、少し苦しいから大分苦しいに変わってきました。ただ、声の震え的に彼女は本気で力を入れておりそう長くは持たないんじゃないかとの希望も見えてきたので、立ち上がる努力は続けつつも少し力を蓄えようと意識を切り替えます。

そんな矢先に、これまで私のバランスを崩そうとしてきた尚さんの両手がどこかへいったので、チャンス!とみて立ち上がろうとしたところ、彼女は両手を私の頭の後ろに置き、思い切り自分の腰に引きつけてきました。

その途端、私の首にかかる圧力はさらに増し、視界に涙がにじんできます。これはマジで苦しいので一刻も早く外さないといけない、と思っているところ、尚さんの身体が随分と近くにあることに気付きます。

これはもしや?と思い、こちらからも彼女に足を絡め首を引き抜こうとしたところ、首への圧力が急激に弱まります。絡めている足の力を強め、再度首を引いたところ、とうとう脱出することができました!

久しぶりにちゃんと酸素を吸ったからか、逆に少し頭がボーっとする中で尚さんを見ると、相当力を入れていたようで、寝転がりながら肩で息をすしています。私の方も吸い込む息の量に喉がびっくりしたのかしばし咳き込みます。

私「脱出できたけど、今日1で危なかったよ…」

尚さん「疲れた… 思い切りやったから絶対参ったすると思ったのに… 思ってたより我慢強いですね。 2段階目ですぐ参ったすると思ったのに。泣いてたし。」

私「泣いてはない! ちょっと視界は滲んでたけど。でも本当に苦しかった。頭を引きつけられた後に尚さんの身体に足を引っ掛けれなかったらギブアップしてたかもしれない。」

尚さん「後輩相手だと持ち上げられそうになることなんてなかったから、ビックリしました。立ち上がらせないようにするのはうまくいってたのに… 両手を頭の後ろに回さずに絞め続けたら参ったしてた?」

私「途中から思い切り絞め始めた状態でってこと? 大分苦しかったから、あのまま絞め続けることができるならいつかはギブアップすると思うけど、尚さんの体力が尽きる方が先じゃないかなー それに立ち上がらなくても脚を絡めれば威力が弱まることが分かったから、次からはもっと余裕で外せると思うよ。」

尚さん「なら試してみましょう。」

と再び両足を開いてイメトレする尚さん。先ほどよりも真剣な表情です。同じ要領で技の体勢に入り、「絞めますね」の声が聞こえるや否や、またしても首に強烈な圧力がかかり、顔が紅潮するのが分かります。

余裕と発言した手前、先程よりも軽やかに抜けねばと思い、尚さんの身体を引き寄せ脚を絡めにいきます。両手で抵抗する尚さんでしたが、その間、絞めの力が弱まってます。手と脚では勝敗がみえており、彼女の身体に無事に脚を巻きつけたところで向こうが技を解き、脱出完了。

私「言ったとおりになったでしょ!」

尚さん「悔しい。ムカつく。絶対参ったさせる。着てる服の襟とか破れちゃっても問題ない?」

私「安物だし着替えもあるからいいよ。どんな技やるの?」

尚さん「腰絞め。柔道で一番ポピュラーな絞め技だと思う。柔道着だったら絶対に参ったさせる自信があるけど、私服なのがちょっと微妙かも。とりあえずやってみるから亀の姿勢になって」

指示通りの体制になると、正面から私の襟を掴み、手の位置を微調整する尚さん。

尚さん「破れたらごめんなさいね。我慢強い人なのはよく分かったので、思い切りやります。でも、一番落ちやすい技だし、相手の状態が分かりづらい技で危ないから10秒経ったら外します。それまで耐えたらそっちの勝ちです。」

私「これまでの感じなら10秒くらいなら楽勝だと思ってます」

尚さん「この技は本当にすぐ落ちるんで。道着でちゃんとかけたら絶対10秒もかからないですよ。私もよく落ちたり落としたりしてましたから。まあ受ければ分かります。いきますよ?」

手の微調整が終わったのか絞めを開始する尚さん。私の左側に回り込むように絞めてきます。彼女が絞めを開始した途端に、襟からミシミシと今まで聞いたことがない音がしたかと思うと首に鋭い圧力がかかります。慌てて絞めの威力を和らげようとしましたが、襟と首の間には全く隙間がなく手を入れることができません。ならばと尚さんの手を掴んで外そうとしますが、あちらは体全体の力を使っているので全く歯が立たず。じゃあ体を密着させて力を使えなくすればと思ったものの彼女の体は私から遠い位置に。そのような試行錯誤をしている間にも、ドンドン痛くなる首筋。ただ、意識が遠くなるような感覚はなかったので、痛みに耐えていればいいのかなと思い始めたところで首の痛みが消えました。

どうやら10秒が経過していたようです。苦しい感覚がなかったとはいえ、空気の何割かは遮断されていたようで、息を吸ったらまたしても咳き込んでしまいます。

尚さん「意外と平気そうでしたけど、どうでした?」

私「10秒耐えるんじゃくて外してやろうと思ってたのに、それが出来なくて悔しい」

尚さん「腰絞めはちゃんと入ったら外すとか絶対無理なんでそんなに凹まないで。意識が遠くなる感覚はありました?」

私「苦しいっていうより首筋がただただ痛かった。さっきの三角絞めの方が頭に血が行かない感じがした」

尚さん「やっぱり普通の服じゃ襟を使った技はあんまり効果ないのかもしれませんね…」

その後も尚さんから今まで受けた技を繰り返しかけられましたが、どれも外し方は分かったので全て脱出。やはり三角絞めから脱出するのが一番苦心しました。

尚さん的には、寝技から抜け出せないことを分からせた上で寝技対決をしてくれるつもりだったそうですが、前提条件が崩れたのでそこに至らず。本当に悔しそうでした。とはいえ私も脱出にはかなりのエネルギーを使ったので、終わった時には結構疲れておりました。

別れた後に尚さんにお礼のメールを送ると、

尚さん「私の寝技の技術は下の下がいいところなので、あまりご期待に応えきれなかった感はありますが、今後テレビで柔道を観たりする時に「あの時の!」となってくれれば私は満足です( ^ω^ )私で良ければ、また機会があればお会いしましょう⊂((・x・))⊃」との返信が。素人に抜け出されたのが相当悔しかったようで、近くの道場を探し始めた、とのことでした。次に会う時は抜け出せない気がします…


【感想】

大学まで柔道を続けていてしかも全国大会に出ている、ということで会う前は大きな期待を胸に抱いていました。ただ、結果的には抑え込みから抜け出せない、絞め技で失神する、という待望の2シチュエーションは体験できず。

彼女の言うように寝技の技術が低かったから? 柔道着じゃなかったから? と色々な要因があるかもしれませんが、個人的にはやはり体重差が大きかったのかな、と思いました。私自身60キロ程度と男性平均より痩せてはいますが、彼女も現役時代に最軽量級、今ではもう少し体重が落ちていたでしょうから約15キロの差はかなり大きかったことでしょう。とはいえ以前、同じような体格で中学だけ柔道をやっていたという黒帯の子にかけてもらった時よりは断然抜け出しにくかったです。

今回は、

・全国大会出場経験のある子でも、ブランクがあり、体重が軽いと寝技をきめられた状態からでも脱出可能(関節技除く)

・三角絞めは小柄な子でも威力大

・寝技はかける方よりかけられる方が体力を使う

といったことが分かりました。女性より先に体力がなくなるのが恥ずかしかったので、せめて普段からランニングくらいはしようと心に誓ったのでした…


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