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現場にいくには理由がある

わたしは現場で音楽を聴くに限ると思っている。ほとんどのクラバーはそうだろうと思う。しかし配信イベントで現場に足を運ばなくても視聴できる環境にある今、もし事態が収まったら楽しみ方は変わっていくのだろうか。わたしはコロナ以前、「行けないパーティの配信は見ない」というくらい現場主義であったが、その理由を言語化できればと今回のテーマに。

Jacob Collier / All I Need (with Mahalia & Ty Dolla $ign)

クラブってなんだ。

映画好きが映画館に行くのは「映画を見る」という目的がはっきりと存在する。クラブは遊び方はそれぞれとして、「DJを見に行く」と言っても一般的なひとから見ればイマイチ面白みが伝わらない。なぜならば。一般的に知られていない面白みがクラブにあるからだ。

それは言い換えればクラブにしかないもの。クラバーだけが知っている秘密と言っていいだろう。タネはなんてことない、それは音量と音質の力。たったこれだけのことだが、音量の大小、音質によって同じ音楽が全く違うものに感じる事実があまりにも世間に知られていないのだ。他にも、照明、スクリーン、フロアの造りなど、差こそあれクラブの特徴的な機材は様々。これらはより音楽を内包したクラブという非日常を演出させるための機材であるが、まずは音量の力。これが大前提である。

クラブ以外の例を出してみる。


先日、普通のバーで飲んでいるとおもしろい話を聞いた。自粛期間、マスターの友人のお店は出張バー営業なるものをやっていた、と。これは、注文を受けるとバーテンダーがお客さんの家に行き、シェイクするというものだ。グラスやお酒も持参するのだそうだ。しかしマスターはこれに対して、少し否定的であった。

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変わって、アイドルやバンドなどのライブ好きな友人に現在の配信イベントについて話を聞いてみると「その人がそこに存在しているということ。それを確認しに現場へと足を運ぶ」と。これはとても明確な理由である。会いに行くという表現になると、音楽のそれとは違うような気もするが、現場の楽しみ方はそれぞれ。そこからもう少し深く話を聞いてみるとおもしろい、バーのマスターと似たようなことを言っていた。

マスターはバーでお酒を飲む行為について、こう続けた。「バーというのはお酒とバーテンダー以外にも、照明やBGM、椅子やテーブル、それらの醸し出す雰囲気がバーたらしめている。これに惹きつけられている」と。
アイドルのファンは、「アリーナに入る瞬間や開演前の雰囲気、照明、これらもライブの醍醐味で、配信は現実の部屋でみることになるから同じ時間を過ごしてない感じがする」と。

クラブという場所は、クラブミュージックに全振りした場所である。

これらの話から、現場の魅力というのは五感で感じる情報量の差にあるということが解る。アーティストをサウンドシステムを介して体験することは本当に重要なことなのだ。音以外にも、クラブにはミラーボールをはじめ、照明、映像、フロアの造りなどで音楽を引き立たせている。その演出された音量の力はシンプルに本能に訴え、肉体を伴う。意思とは関係なく身体を動かして気分を良くしてくれる。やはり踊ってナンボなんです。そうした原始的な、本能的な遊びが「クラブする」ということだとわたしは考える。配信のチャットに生まれたミームが、現場でも発生しカルチャーになっていく、そんな刺激的で素敵なことの連続性が現場である。最前線は未だ現場にある。

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sayonarablue / chill

しかし、これをやっていい場所が全然ないのが現実。

テレビ世代のいわゆる一般のひとは「クラブする」ことをわるく言う。その上このコロナ禍である。規制された営業が続き、思い出の場所がひとつ、またひとつと消えていくのを指をくわえてみているのは本当につらい。しかしいのちには代えられない。ひどく肩身が狭い思いをしながら、そんな背景の中、「居場所」を守ってくれているひとがいるということ。アーティストを立てる裏方のひとが、想像もできないような努力をしていることを知っておいてほしい。少なくともわたしには現場が必要だ。明けない夜はない。是が非でも夜が明けるまで、頑張って。心から応援しています。要するに今回はそういうお話。

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配信には、どこにいても視聴できるというメリットがある。よっていつか、あのとき配信で観たのがきっかけで~という若者が必ず目の前に現れるのがわたしには見えている、というか見るまで現場で踊ってるぞという感じだ。こういう感覚が古いと笑われるかもしれないが、未来に楽しみにしているところである。

全然違う話。

最近「jump one」というエクササイズジム(?)というものを全然クラブしらないひとに教えてもらった。いまコロナで休止しているらしいけれども。

BGMが Fall To Light / Laszlo というのもだいぶおもしろいのだが、これが月会費1万ちょいのエクササイズというのだからつい笑ってしまった。インストラクターがいて、大きい音で音楽かけて、トランポリンで跳ねるというもの。こちとらエントランス2500円で6時間フロアで跳ねっぱなしなのにな、と思って話を聞いていた。スポッチャとかラウンドワンにあったらクラブ仲間と朝までやってると思う。たぶんアーメンブレイクとか聴いたらデカい声出る。一回だけ行ってみたいスポットである。

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