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散歩記録 旧三河島汚水処分場喞筒(ポンプ)場施設


概要

今日紹介するのは東京都荒川区荒川(町名)にある
旧三河島汚水処分場喞筒(ポンプ)場施設」。

最寄駅は京成本線・東京メトロ千代田線町屋駅
東京メトロ日比谷線三ノ輪駅


今は珍しい路面電車の都電荒川線 荒川二丁目駅

写真左側が三河島水再生センター、右が都電荒川線の線路。

三河島水再生センターの敷地内にある、かつて稼働していた施設
国の重要文化財に指定されていて予約をすれば見学ができます。


予約は下部URLに記載してある電話番号からか

個別サイトからのインターネット予約も可能です。


感染症対策のため1度につき2組までの制限がありますが
最小で1名からでも見学が可能

現在は予約がいっぱいで基本的にどの曜日のどの時間でも
2組での見学となるそうです。

自分が訪れた時は、自分含めて2組3名での見学でした


ちなみに、「水再生センター」と言うのは家庭や工場から流れてきた下水を
高度処理をして川や海へと放流する施設

良く知られている「浄水場」川や海からくみ上げた水を
浄化して家庭へと流す施設
のため、大きく役割が異なります。

飲み水の質を決める浄水場はもちろん、環境への影響を考えれば
水再生センターも等しく重要な施設

浄水場の仕組みについてはこちらのサイトがかなりわかりやすいです。
キッズページと書いてありますが侮るなかれ。
基本的なことはこちらで大体わかります。


という事で、今回は三河島水再生センターの中にある
旧三河島汚水処分場喞筒(ポンプ)場施設」を見学していきます。



本編

解説~ビデオ視聴

予約当日、警備員の方に挨拶をし予約時間の10分ほど前に
施設の正門脇から入場。


すると、係の方が旧事務棟の会議室まで案内をしてくれました。

消毒や検温を済ませ用意されていた席に着席すると
パンフレットやポストカード、さらに一部の方には堪らない
マンホールカードも。

写真のものの他にリーフレット2種、100周年記念ブックレット1種で全て。結構ボリューミー。

持ち帰り用のしっかりとした素材のビニール袋も一緒に配られるため
手ぶらで来ても安心です。


着席後、係の方の自己紹介とリーフレットやブックレット
ホワイトボードを活用した三河島水再生センターの解説
今回見学するポンプ場施設等の軽い解説を10分程

解説が終わった後はスクリーンに映し出された13分ほどの動画を視聴し
会議室を出て現地へ見学に行きます

リーフレットURL

リーフレットや動画はホームページから同じものを閲覧・視聴することが
出来るため、家で再確認したり見学会に行かずとも雰囲気を味わえます。

上記URL中部の動画コーナーや、対応した言語のリーフレットを選択して
閲覧してください。

水再生センターの方のリーフレットはこちらの上部
PDF Download から(ページの方のDownlordは綴りミス?)。


30分弱の解説等を終え、いよいよ施設見学です。
まずは旧事務棟の入り口入ってすぐのところにある
マンホールの展示から。(写真は無いです)

四角形の蓋は角度が変わると穴の中に落ちてしまうため
現在は基本的に丸い物が使われている

とか
昔は大雨になるとよく飛んでいたマンホールの蓋も
新型は安全装置が付いているから飛ばないようになった
とか
意匠を凝らしたマンホール蓋のデザインの説明等を
分かりやすく説明してくれました。

こちらのブログで紹介されている物と同じデザインの
マンホールもありました。


リーフレットに描いてあった案内図が看板にもなっていました。

門衛所・正門

その後、旧事務棟を出て最初に見るのは「門衛所・正門」
正門は解説~ビデオ視聴の見出しに掲載したストリートビューのもの。
重要文化財に指定されているこの施設ですが
正門は車道部拡張工事後のために造り直されたもの
例外的に重要文化財には含まれていないとのこと。

そして門衛所は、文字通り門衛が駐在していた小屋。

この旧三河島汚水処分場喞筒場施設の計画を担当した
『米元晋一』氏は、かの日本橋の設計も担当した人物で
事前に欧米に下水処理施設の視察をしていたそう

施設の建物が全体的に洋風なのはそのためで、この門衛所もその一つ。

(ひさし:窓や扉の上部に取り付けられた雨避け)の形等から
何となく洋風を感じ取れます

中には畳の部屋が見え、うっすらと生活感がありました。



入口阻水扉室上屋・記念マンホール

次に見学したのは「入口阻水扉室上屋」

こちらは、ここより先にある設備を点検する時に
一時的に水をせき止めるための扉を操作する部屋。

写真はありませんが、東西に2棟あり一方をせき止めても
もう一方の設備が稼働できるようになっています


そして、入口阻水扉室上屋からやや外れた位置には
2022年3月で100周年を迎えた三河島水再生センター記念マンホールが。

古めかしい出で立ちの夫人の姿と、100年経っても変わらない喞筒場施設の姿、そして今の東京を象徴する東京スカイツリーが一堂に会した
今ならではのデザインとなっています。


100周年記念に関する情報は下記URLよりご覧ください。



喞筒(ポンプ)場施設(沈砂池~量水器室)

そしていよいよ見学はメインの喞筒場施設へ。

記念マンホールのある場所からは喞筒場施設の全景が見えます。

案内板。

喞筒場施設はやや窪んだ位置に建っているため階段を下るのですが
その階段も雰囲気があって良いです。


建物本体も気になりますが、まずは手前の「沈砂池」から。

奥の方に見える暗い部分がゴミをこそげとるフィルター

沈砂池は名前の通り、流れてきた下水に混じった土砂類を沈殿させる場所

この窪みの中をゆっくり時間をかけて下水を流すことで
土砂類を物理的に沈殿させ、残る大きなゴミは先にある濾格室にて
除去された後トロッコで坂の上に引き上げて運搬されていったそうです。

トロッコを坂の上へ引き上げる装置の説明もありました。
また、写真はありませんが当時使われていたレールの一部が看板の左下に


そもそも、何故この喞筒場施設は周辺の土地より低い位置に
作られたのかと言うのは思いの外単純な理由です。

まず、下水を各家庭から処理施設の方に流すためには
下水道管に物理的に傾斜をつける必要があるのです。
そのため、処理施設にたどり着くまでには距離に応じた傾斜が必要となり
末端にある処理施設は自然と周囲の土地より低い位置に建設されるのです。

この喞筒場施設は、大きなごみを取り除いたうえで高低差をカバーして
隣の水再生センターへと水を流す中継所のような役割を持っています。

↑パンフレットに載っていたこちらの図が簡潔でわかりやすいです。


上の図の続き。

こちらの図はリーフレットURLの下にある方からダウンロードができます。


やや話が脱線しましたが、見学はまだ続きます。

続いて見るのは、沈砂池の先にあった小さめの建物。
建物自体の名前は「濾格室上屋」です。

案内板では建物の中にある「濾格機」と先ほど紹介した
メンテナンスのための扉「入口阻水扉室」から「沈砂池」まで下水を運ぶ「流入渠」の説明がされていました。

「流入渠」から「沈砂池」へ接続する部分は切石でアーチが描かれていて
下水処理施設とは思えない優雅さを感じられる造り。

「濾格室上屋」は建物の中に入らずに外から眺める程度だったので
余り印象に残らず。

その後、濾格室上屋の奥にある広場で「量水器室」の説明。

施設内に入ることはできませんが、蓋があるので痕跡は見て取れます。
中には「ベンチュリ管」という下水の水量を測るための管が取り付けられていて
後々出てくるベンチュリレコーダに記録されます。

量水器室の見学が終わると、いよいよ次は地下エリアの見学です。



地下(喞筒井阻水扉室~10号喞筒井)

ヘルメットを着用して階段を下り地下へ。

この辺りからやや駆け足で進行していたため画像がブレていますが
こんな感じの道を頭をぶつけないように進んで行きます。

地面は剥がれないように穴の開いたレンガが
無数に貼り付けられていました。


まず初めに「喞筒井阻水扉室」

東西に分かれていた沈砂池にて土砂などを取り除かれた下水は
この後出てくる喞筒室の手前で合流し、喞筒(ポンプ)で吸い上げられた後
水再生センターの方へ送られていきます。

ここは入口阻水扉室と同じように水を一時的にせき止め
修理するための扉を制御する場所

もっと詳しい説明があったと思うのですが、駆け足での見学だったため
忘れてしまいました。

相変わらずブレていたり、何を撮りたかったのか
分からない写真もありますが一応掲載しておきます。


続いて「10号喞筒井」

文字すら読めないほどブレています。

こちらは下水を吸い上げるための喞筒
ここから喞筒室の方まで吸い上げて、水再生センターまで下水を運びます。

写真だと分かりにくいですが、ポンプの真下には山のように
盛り上がった部分があります

これは水を吸い上げやすくするための工夫だそうで
山の頂点は喞筒の中心からずれているらしいです。


そんなこんなで地下エリアの見学が終了。

こちらは2つに分かれていた沈砂池を通った下水が合流する部分。

「水が合流する部分は摩耗が激しいため頑丈な大理石を使っていた」
という説明を聞いた記憶があるのですが
ここのことかは定かではありません。

稼働停止から何十年も経過しているとはいえ、地下エリアは
実際に下水が通っていた場所なので多少匂いが気になりそうなものですが
ご時世柄マスクを着用しているためか全く気になりませんでした。


地下エリアを出ると、最後に大きい建物「喞筒室」の見学です。



喞筒室~見学終了

ここからは駆け足を極めていてほとんど写真しかありません


が、「喞筒室」に関しては建物の全体写真を撮影していませんでした。

上でも使ったこの写真の奥の方にある建物が「喞筒室」です。


建物内に入ると、まずは「ベンチュリレコーダ」がお出迎え。

地下前に見た「量水器室」にて計測した結果が記されています。


続いて「汚水ポンプ」

ここはポンプがカタカナ表記になっていました。


その後、資料室のような部屋で旧三河島汚水処分場のジオラマを撮影。


他にも、下水道の普及を目的として当時使われたポスターもありました。

古いポスターなので文字の向きが逆。


また、写真はありませんが昔の手動計算機とでもいうのでしょうか
メカメカしい計算機なども飾られていました。


そして、喞筒室を出る前にやや高い位置からクレーンやポンプ類を眺めます

下から見るのと上から見るのとでポンプの印象がだいぶ違います。
また、建物の天井付近の造りも鉄骨が丸く組まれているのが印象的。
堅牢ながらも曲線が美しいです。

クレーンの説明版。
「揚重機」と呼ぶらしいです。


六噸半(6トン半)と書いてありました。
耐荷重?総荷重?でしょうか。


これにて、喞筒室の見学は終了。
建物の外観のインパクトが非常に強いですが、中に入るとポンプの大きさ
外観からは想像できない建物の造りの堅牢さに驚きました。
欲を言えばポンプ周りをもっとまじまじと見たかったですが
時間に限りがあるので仕方なし。

出口から撮った建物の写真。
歴史ある国立大学の体育館みたいな雰囲気。


最後に、実際に使われていた下水道管の一部を展示してあるもの
沈砂池で出た土砂などを運搬するトロッコを動かす装置を軽く見学。

これは、大正11年~平成11年まで77年間使用されていた下水管。
馬の蹄のような形をしているので「馬蹄形」と呼ばれているみたい。
他にも、水が流れやすいように下が窄んだ卵のような形をしているものもあるらしい。


こちらはトロッコを坂の上まで引き上げる機械が置いてあった部屋。
正直あまり書くことが無いです。


これにて見学は終了
ビデオ鑑賞などをした事務室まで戻って、見学についてのアンケートに回答したらあとは帰宅するのみです。




まとめ

重要文化財にも指定されている「旧三河島汚水処分場喞筒場施設
施設自体が特別広いわけではないですが、その見学ツアーは
普段見ることのできない施設の内部をガイド付きで見学できるので
一時間半では足りないほど盛りだくさんな内容でした。
なんなら実際に時間が足りずに最後の方は駆け足での見学に。

しかもそれが無料で参加できるというのだから
予約がいっぱいになるのも頷けます。

下水処理場の一施設とは思えない建物の美しさや
時代を感じさせる洋風な造りから、撮影スポットとしても人気なよう
コスプレイベントが行われたりもしている模様。

Twitterにて  #東京都下水道局 #麗yers 等のタグで検索すると
実際のイベントの様子を確認することもできます。
(メイドインアビスの写真とかシチュエーションがドンピシャで格好いい)


難しい漢字が並んだ名前や汚水の文字など
一見すると小難しく汚さそうな雰囲気で避けてしまいがちかもしれませんが
行ってみると思いもよらない楽しみ方ができるかもしれません。

気になった方は是非予約してみてください




おまけ

水再生センター横に設置してあった重要文化財の説明版。
施設見学前に軽く見ておくとより楽しめるかもしれません。


おわり。

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