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彼の胸に飛び込めなかった悔しさ

秋も深まり、私の家の窓から見える山々は秋色に染まっています。秋の山を見ると、どうしても足の指が疼いて油絵や水彩画を描いた日々のことを思い出します。人に会う機会が少なくなった私は、とても寂しいと思う時があります。しかし、足指で絵を描いたり編み物をしたり彫刻をやったりしていると、悩みなど消えていったのです。

私の足は左利きでした。しかし、今は障がいが重くなり左足が思うように動かなくなってしまいました。しかし、夢の中ではどうしても左足で絵を描いたり、彫刻をしています。脳から命令されたことは、一生忘れないのでしょうか。手足がなくなった人は目が覚めた時、手足があるように思うと聞きました。その感覚は私の夢の中と同じです。また足で絵が描けたら良いのになあと思いますが、美しい山々を見て口に筆を咥えて窓ガラスに山の絵を描いている気分になろうとしています。そうすることにより孤独感が消え去っていくような気がします。

足でカレーライスを作っていました。全部作ると疲れるので、人参やじゃがいもや玉ねぎはある程度ヘルパーさんに切って頂いていました。そして、片思いの彼氏が来ると「がんばったのよ、今度あなた手伝って。玉ねぎから炒めるから鍋に入れてくださる?」というと、彼は目をくりくりにさせて手伝ってくれたのです。これが私の恋のテクニックでした。全部はできないので、やった振りをして一緒に作るのです。カレーが出来るとシチューやグラタンやミートソースなどが作れることを思いついたのです。

今はもう思い出に生きることが私の生きていく上で大切なことです。最近はリモートで学生さんたちに講義をしています。4回やり、あと2回残っています。90分話すことは、大変エネルギーが要ります。最近は言語障がいが強くなったと思うので、お腹から力を出して話さなければいけないと心掛けています。生徒さんたちから感想文がたくさん来ます。私の心に栄養を与えてくださっています。昨日は北海道大学の作業療法学科の人に講義をしました。ひとりの男性の学生さんに、「恋人と長く付き合うテクニックとは何ですか?」と聞かれ、ちょっと言葉が出ませんでした。私は5年間しか結婚していないので、男性と長く付き合うということは経験が少ないと思うのです。

でも、20年間くらい心に秘めた人がいました。とてもステキな人でした。俳優のような顔をして背がものすごく高い人でした。その人は「結婚しよう。」と言ってくれましたが、私は言葉が出なかったです。こんな素敵な人と結婚したなら、すぐにまた誰か美しい人に取られるのではないかという心配があり、断りました。最近はどうしてあの人の胸に飛び込んでいかなかったのかを後悔しています。

私が泣いていたら彼が来て「どうしたの?」と聞かれ、「何ともないのよ」とヤケ酒を飲んでいました。一瞬、その時また私は彼の胸に飛び込んでいたのなら人生は変わっていたのかもしれません。でも、悲しみを消すために男性の胸に飛び込むのはなんだかちょっと卑怯だと思ったのです。でもやっぱり飛び込めばよかったかな・・・と最近そのことばかり考えてます。臆病な自分を捨てきれなかったのだと思います。結婚は1回で良いと口では言いながらも、やはり私は離婚してからがすごくモテたので、2,3回結婚しておけば良かったかなあとなんだか悔やんでいます。何回結婚してもまた浮気されて去っていかれるかなぁという恐怖感が残ります。

何を私は言いたいかというと、男の胸に飛び込めなかったということが今の悩みです。絵を描けないということも悩みです。でもそれだけ好きになってくれた男性がたくさんいたということは幸福なことです。今日もベッドに寝て、足指でぶどうの絵でもシーツの上に描きたいと思います。ぶどうの一粒でもiPadに書き、このノートに載せることが夢です。がんばります。みなさん、素敵な人がいたらすぐに抱き合ってください。それからその先の人生を考えましょう。

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