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ファーストピアス

イヤリングは落ちてしまう

 私が25歳になった時、実家を出てアパート生活を始めた。親と一緒に居たらできないことを全てやってみる!と張り切っていた。母はたくさんのイヤリングを買ってくれた。しかしイヤリングは、人にぶつかったり洋服にひっかかったりしてすぐに失くしてしまった。母は「あーあ。またイヤリングおとしたの・・・あれ高かったんだよ~どっか探しておいでよ」と悲しい顔をした。

 今度は絶対落とさないピアスを付けようとたくらんだ。電動車いすに乗り、一人でアパートの近くにある皮膚科に行った。看護師に「ピアスをつけて頂きたいのですが、おいくらですか?」と聞いた。すると看護師はとても不愉快な顔をして「あなたのような人はピアスは付けられません。お帰り下さい」と言われた。不愉快な思いをしたが、まだ障がい者がピアスを付けられる時代ではないのだと、自分にいいきかせ、うなだれて帰って来た。

障がいがあってもオシャレは当たり前 

その夜ボランティアさんが来て、彼女はピアスをしていた。今日のことを彼女に話すと驚いて「そんな病院あるの?失礼ね!障がいを持っていてもオシャレは当たり前でしょ!私つけてあげる!!」と言って下さった。次の日彼女はピアスを付ける器具を買って来て【バチン!バチン!!】と思いっきりよく、耳たぶに穴を開けてくれた。ファーストピアスは1か月間付けておくのがルールだと言う。

あなたのそばには勇気がある人がいて良いね

彼女は心配そうに、耳たぶの裏表を確認していた。彼女を傷つけないためにも私は朝晩の消毒を欠かさなかった。そして1か月がたつとパールのピアスを買って来て付けた。(あーこれで安心して洒落たピアスを買える!)と心はすっきり爽やかだった。母が「よかったね~。あなたのそばには勇気がある人がいて頼もしいね。」と言ってくれた。

ピアスはインテリアになった

それから障がいのある友達にも、ピアスを付ける器具を教えてあげてボランティアさんや友達に頼むといいよと言ってあげた。それから周りの友達たちは、ピアスをお土産に買って来て下さるようになった。私の部屋にはピアスを沢山飾っておく台がある。ピアスの上に番号をつけ「1の右から3番目」と言うとすぐに取って下さる。ピアスには太陽の光が当たり輝いている。

祈りを込めてあげたのになぜ?

ピアスがあまりにも溜まって来たので、可愛いヘルパーさんにプレゼントした。長く働いてくれますようにと祈りを込めてあげた。しかし、なぜかピアスをあげたヘルパーさんはすぐに辞めていく。耳たぶをキラキラさせて顔は輝いているのになぜ辞めていくのか?4・5回経験して私はピアスをあげることはやめた。残念な思い出である。

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