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ディズニーランドで借金をした母

5万円では無理だった・・・おこづかい

  息子が4・5歳の頃、ディズニーランドに行った。私は、東京で講演会があったので、先に大地とおばあちゃんが行くことになった。交通費・宿泊費・ディズニーランドの入場料、全て払って5万円のおこづかいをおばあちゃんに渡した。私は、それで安心して遊べると信じていた。ところがである。食べ物や乗り物などに乗っていると、お金が無くなってしまったという。私が、後からディズニーランドに行くはずだったのが、講演会の予定が変わり、行けなくなってしまった。(さぁ困った・・・)
 

冷蔵庫にジュースは戻せない

 朝、目覚めると、大地とおばあちゃんが朝ご飯を食べるお金がないことに気がついた。ホテルにあった、お茶とせんべいで凌ごうとしたらしい。大地は冷蔵庫を開けるとジュースがたくさん入っていることを見て、ジュースを取って飲もうとした。それをおばあちゃんが見て「大地ダメ!お金が無いんだから払えないよ!母さんが来るまで待ちましょう」と言った。しかし、冷蔵庫からとったジュースは元には戻せないことが分かった。「ばあちゃん・・・ジュース入らないよ・・・」と言って目から涙を流して困ったそうだ。困った顔が目に浮かぶ。33・4年前は携帯電話が無かったので、私と連絡を取ることが出来なかった。おばあちゃんは決断した。

親切な人に助けられ楽しんだ

 二人で外に行き歩き回り、親切そうな家族は居ないか?!探したという。そして、家族4人の人を見つけ、おばあちゃんはお金を借りることにしたという。どういう説得の仕方をしたのか、私にはわからないが、とても親切な人に出会ったと思う。それから大地とおばあちゃんは、レストランに安心して入り、乗り物もたくさん乗ったという。その家族の人が全て奢ってくれたという。そして、お金も貸してくれたという。おばあちゃんは、とても口がうまかったので、たぶん娘が本を書いているとか、講演会をしているとか言って信頼をさせたのだと思う。世の中には親切な人がいるものだと思う。

借金を返しゆっくり寝た、おばあちゃん

 家に帰って来てから私は、おばあちゃんに叱られた。「ディズニーランドは、5万円では過ごせないのよ!なぜあなた早く来てくれなかったの!!」と何回も何回も叱られた。
 おばあちゃんがお金を借りた人の家に電話をかけ、お礼の言葉を暫く言っていた。そして、新鮮なイカやカニやタイなどを沢山買って送っていた。借りたお金も返したという。「あーあ!これで安心できた!ゆっくり寝れるよ。」と独り言のように言っていた。

生きるためには愛嬌と度胸

 大地は、おばあちゃんの焦った気持ちも知らないで、私に「お母ちゃん!ぼく良いこと思い付いたんだ!ディズニーランドの隣に引っ越して住もうよ!楽しいと思うなぁ。毎日行ったら入場料はタダだと言っていたよ!」と言った。私は、あまり自分の要求をしない息子が、真剣に言っているので可愛く思った。(そうだな…大地の夢を実現してあげたいけれど、アパートも高いだろうな…今やっている仕事を捨てることは出来ないしなぁ)と思った。「大地もう少しお金持ちになったら、考えようね」と言った。
 それから、大地は働いて、友達とディズニーランドに行っている。去年は家族で行ったらしい。今さらながら、出会った人にすぐお金を借りる、おばあちゃんには頭が下がる。

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