見出し画像

「カンザス州マスク義務化の結果、Foegen効果で致死率が1.5倍」は根拠不明

「カンザス州マスク義務化の結果、Foegen効果で致死率が1.5倍」は根拠不明。同じカンザス州データを使った先行研究の論文は感染率減の結論だが、当論文は致死率増を主張。死亡者のマスク装着の有無が不明な上、Foegen効果が要因だとする根拠も無い。数値を弄っただけの論文。

【解説】
Dr.Zacharias Fögenの論文をTown hall等が記事にして拡散したもの。論文は単著で、著者の論文は他に見当たらない。Foegen効果とは、マスクに付着した飛沫が乾燥するとウイルスが残り、それを吸込んでしまうという説。著者が自分の名”Fögen”を付けてFoegen効果と命名したが、そう称するのはこの著者のみ。
 本論文が題材とした2020年のカンザス州マスク義務化のデータには先行研究があり、マスク装着により感染防止効果が上がるとされてきた。本論文はそれを肯定しながら致死率も上がると主張したもの。但し、先行研究とはサンプル抽出が異なり、独自にデータを取捨選択した結果である。
 マスク義務化は、期待するほどマスク装着率を向上しないという研究論文があるように、義務化だけでは死亡者がマスクを装着していたかは不明である。マスク義務化=感染拡大した地域だとすれば、感染拡大地域でのマスク未装着が致死率増の要因である可能性すらある。
 Foegen効果は、本論文では”Hypothesis(仮説)”とするのみで、これを致死率増の要因とする科学的根拠は何も記述されていない。

◾️拡散されたTown hall の記事

◾️Dr.Zacharias Fögenの論文
“The Foegen effect  A mechanism by which facemasks contribute to the COVID-19 case fatality rate”
https://journals.lww.com/md-journal/Fulltext/2022/02180/The_Foegen_effect__A_mechanism_by_which_facemasks.60.aspx

◾️カンザス州マスク義務化データの先行研究
“Trends in County-Level COVID-19 Incidence in Counties With and Without a Mask Mandate - Kansas, June 1-August 23, 2020”
マスク着用義務のある郡とない郡におけるCOVID-19発症率の推移-カンザス州
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33237889/

◾️マスク義務化と装着率に関する論文
“Mask wearing in community settings reduces SARS-CoV-2 transmission”
マスク装着は感染の顕著な減少に関連するが、マスク装着率は義務化以外の要因も寄与している。義務化は粗く不均質で、平均8.6%しか着用率を増加させない。
https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2119266119

Fögen氏は反マスクで有名なドイツの心療内科医師である。

◾️https://zachariasfoegen.wordpress.com/

ネットを検索すればFögen氏の論文を反証する記事は多くある。

◾️Mcgill大の記事“The Fögen Effect Masks a Big Methodological Issue”(2022/7/22)
Fögen氏の論文は彼の唯一の論文で、彼が単独で書いたもので、生態学的誤謬に陥っている。
https://www.mcgill.ca/oss/article/critical-thinking/fogen-effect-masks-big-methodological-issue